もう一つのエンディングを目指して 1当初おれが目指していたエンディング、つまり「誰ともそこまで深い仲にならないギリギリの所にあるエンディング」に辿り着くには、最初からやり直さなければいけないことが発覚し、おれは苦渋の決断で、別のエンディングを目指すことにした。
そのエンディングとは、好感度130以上で開放されるエンディングを10以上体験すること。
そして130以上のエンディングというのは……どうやらその……みんなと……そういう展開になるエンディングらしくて。
──やっぱり……早まっちゃったかもしれない……!
「あのさ……ゴメちゃん……やっぱり……」
──最初からやり直す方を……!
そう言いかけたおれの言葉を聞いていないゴメちゃんが、話し出す。
「それにしてもよく決断してくれたよ!いや正直、R18指定のBLゲームでエッチ無しなんてあり得ないもんねー。これでボクも運営側にいい顔が出来るし、みんなも喜んでくれるし、キミも元の世界に帰れるし……一石三鳥だよ!!素晴らしいね!」
「いや……あの……」
「開発側も相当気合い入れてこのエンディングは作っているしね!それにこの間のアップデートも無駄にならずにすむし。これでみんなの努力が報われるよ。本当によかったあ……!」
「う……」
──今更……イヤですなんて言えない……っっ!!!
「それじゃ早速……ってどうしたの、ダイ?何だかすごく困った顔してるけど……」
「ごめん!やっぱりおれ……!」
おれは思い切って本心をゴメちゃんに話そうとした。
「ああ、そうだ……ダイ」
けれどまたゴメちゃんの声に遮られてしまって……。
「もう、運営側にもキミの決断は伝わってるだろうから……後戻りできないんだ。ごめんね。」
おれにそう告げながら、にっこりとゴメちゃんは笑った。
「……はい」
どうやらゴメちゃんは、おれの言いたいことは分かっていたらしい……。
「じゃあキミの決意も新たに決まったところで……と言いたいところだけど、キミも心を落ち着けたいだろうから、分岐点へロードするのは明日の朝にしておこうか」
「う、うん……その方がいいかな」
「いいよ。じゃあ今夜のうちに誰とのエンディングから始めるか、考えておいてね」
じゃあね、と言い残し、ゴメちゃんはぽふん、と消えた。
「はぁーー…………」
大きく長いため息が出た。
──決めちゃった……!選んじゃった……っ!
本当にこの選択肢を選んでしまってよかったのか……。
不安で不安で仕方ないけど、もう後戻りは出来ないらしい。
頑張るしかない……!
でも……頑張るって、具体的にどうすればいいんだろう……?
触り合いっこ……とか?
ううん……?
「…………寝よ」
考えてもどうしようもないから、おれは寝ることにした。
──そういえば、誰とのエンディングから始めるか考えておいてって、ゴメちゃんが言ってたっけ。
「どうしよう……」
うーんうーんと考えている内、おれはいつの間にか眠りについた。
気づくと、おれは誰かと抱き合っていた。
おれよりずっと背の高い、男の人。顔はモヤがかかっていてよく分からない。
おれが上を向いて目を閉じると、温かい何かが口に触れた。
口を少し開いて、それを受け入れる。
ちょっと……息苦しい。
いつの間にか裸になったおれは寝ていて、上に同じように裸になった誰かが覆い被さっていた。
何かが、おれのおしりの穴に触れる。
何故かそこは濡れていて、おれは触れているそれが欲しくてたまらない。
「おねがい……きて……」
おれがそう言うと、その人はおれの額にキスをして。
それでおれのおしりに触れていたものがズブッと──。
「うわあぁぁぁあっっっっっっ!!!!!!」
がばッと身を起こすと、窓からは眩しい陽光が差し込んでいた。
「ゆ、夢……って、おれのおしりっっっ!!!」
夢の内容を思い出し、おれは思わず叫ぶ。
どうやら痛みとかはなさそうで……でも、もしかして今のって……!!!
「え……無理。無理だって……!」
──どうしようおれのおしりが大変なことに……
「おはよう!!ダイ!」
おれが冷や汗を垂らして固まっていると、ゴメちゃんが場違いな明るい声と共に現れた。
「あ……ゴメちゃん……」
「どうしたの!?すごい汗……。夢見でも悪かった?」
「悪いもなにも……」
おしりが……おしりが……と呟くおれを、きょとんとした顔でゴメちゃんが見た。
「あっ……!もしかして、昨夜インストールしておいたアレのせいかなぁ……」
「えっ……!?インストール……?」
何故だろう……その響きはあまり良くないような気がするのは。
「そう!キミのエンディング攻略がスムーズにいくように、便利ツールをインストールしておいたんだよ!」
あのね……とゴメちゃんは、何やら紙を見ながら説明を始めた。
「まずは基本用語集。あんまり知りすぎてもダイっぽくなくなっちゃうから、本当に必要最低限の用語だけにしたよ」
「用語?そんな物要るのかい?」
「そりゃモチロン!いい雰囲気の時に、なんて言っていいか分からなくって、えーとえーと……なんてなったらシラケちゃうだろ?」
「そ、そうかな……」
「ちゃんとインストールされているか確認するね……ダイ、射精することはなんて言うの?」
「はっ……?えっ……」
「だから射せ「きっ!きっ!聞こえてるってば!」
ビックリした……!
いきなりゴメちゃんからそんな単語が出てくるんだもん……!
「えっと……あの…………………………………………イく……?」
羞恥心を抱えながら、ぽそりとその単語を呟く。
「ん、オッケー!じゃあ凌辱の意味は?」
「えっ!?凌辱……」
「調教でもいいよ?」
「ちょ、調教……!」
「あっ!じゃあこれは?監禁」
「……っ!…………閉じ込めて自由を奪うこと」
──おれはいったい何を試されてるの……
「よかった!大丈夫そうだね」
打ちひしがれそうなおれとは対照的に、ゴメちゃんはにこにこと満足気だ。
「用語集と一緒に、どんなことをするかっていう映像も予習がてらインストールしておいたんだけど、それは確認できた?」
「!!」
──多分……さっき見た……アレ、だよね?
「あの……もしかして……おれの……その……おしりに……」
「そうそう!突っ込むんだよ!イメージできた?」
「やっぱりそうなの!?ねえ!それ、本当に大丈夫なの、おれ!?」
予想が的中し、おれはゴメちゃんに詰め寄る。
「大丈夫だよー。死にはしないし」
「そ、そういう問題なのかな……」
──とっても不安なんだけど。
「まあ心配なのも分かるよ。だから、感情度プラスツールも入れておいたから」
「……?なにそれ?」
「分かりやすく言うと、その場にあった雰囲気に感情を持っていきやすくなるツールだよ。イイ感じの雰囲気の時は相手にドキドキしちゃうし、逆に追い詰められてる時は相手が怖く見える」
「ドキドキ……は分かるけど、怖く見えるって……?」
「相手の加虐心を煽るんだよ」
「ヒッ……!」
ニヤリと笑うゴメちゃんが怖い……!
「まあ要は、ムードを盛上げる為の物だよ。いきなりエッチな流れに突入されても、心の準備が出来てないでしょ?身体の準備は出来てるにしても……」
「イ、イヤな言い方だな、それ……!」
でも確かに色んな人とエッチするのに、ソノ気になってなかったら辛いし……。
これはあった方がいいのかもしれない……?
「とりあえず……ありがとう?ゴメちゃん」
「どういたしまして……もしかしたらその分盛り上がりすぎちゃうかもしれないけどね」
「…………!!」
──やっぱりない方がよかったのかも……っっ!!
「さて……それじゃ、誰のエンディングにするか決めた?」
「あ……しまった!忘れてた……」
「もう……!それじゃあ、無難にポップにしとく?」
「ポップか……」
まだ抵抗は大分あるけど……それは誰とするにしてもみんな同じだし。
それに気心の知れたあいつなら、なんとかなりそうな気がしなくもない。
「うん……じゃあポップにするよ!」
「了解!ポップとのエンディングなら、休校初日の朝にロードしてね」
「分かった」
「じゃあボクはもう行くけど、いい?」
「大丈夫だよ。まあ親友のあいつなら、そんなに酷いことにはならないと思うし……」
そう言ったおれに、ゴメちゃんはなんだか同情するような目を向ける。
「……………………頑張ってね」
ぽふんと消えるゴメちゃん。
「な……何?今の目……」
なんだかイヤな予感もするけど……こうしていても仕方ないし。
「…………よし!」
気合を入れて、おれの剣にロードを頼んだ。
空間が歪み、気づけばおれはまた机の前に立っていた。
但しさっきと違うのは、机に置かれた宿題が全く手付かずだってこと。
「そうか……おれ、また宿題やらなくちゃいけないのか……」
はあと大きなため息が漏れる。
がっくりと肩を落とすおれの前に、選択肢が出た。
これからどうしようか?
▶ちょっと気分転換!街に出よう
いや、初日ぐらいは宿題頑張らないと!このまま家にいよう
おれは思い出す。
先日、上の選択肢を選んだ時は、おれの剣がすごく怒っていたことを。
つまり、これを選ぶとエンディングになるって訳だ……!
そう思ったおれは、気分転換に街に出ることにした。
まさかあんなエンディングだとは知らず……。
ポプダイ バッドエンド ルートB 攻略中
〜しばらくお待ちください〜
/ メドローアッッ!!! \
いきなり暗い空間に放り出され、おれははっとした。
「あ……あれ?ポップは……?」
きょろきょろと辺りを見回すが、おれのことを抱きしめていたポップはいない。
「ダイ!お疲れさま!」
代わりにゴメちゃんが、ぽふんと現れる。
「あ……!ゴメちゃん……っ!こっ……ここは?」
「ここはエンディング後のロード部屋だよ。エンディングが終わると、自動的にここへ飛ばされるんだよ」
「そう……なんだ……」
なんだかいきなり夢から醒めたような、そんな感覚がする。
でもそれが唯の夢じゃないってことが、身体の感覚で分かる。
「どうだった?初めてのエンディングは?」
「どっ……どうだったも何も……っっ!」
そう、おれはポップを相手に選んだはいいものの、初っ端からバッドエンドを選んでしまったのだった。
「何アレなんであんなコトするのさヒドイよ、ポップ!!!」
「落ち着いてよ、ダイ」
「落ち着いてなんかいられないよ!おれ、初めてなんだよなのに……っっ!」
「仕方がないよ……。調教&監禁ルートなんだから……」
「……っっ!!!やっぱりそうなの…………ううう……どうして……」
「まあそれだけポップの愛情が深いってことだよ。いいじゃないか、最後にはキミ、ポップの恋人になれたんだから」
「いやいやいや!おれ、絶対正気じゃなかったよね」
「そうだね。調教済みだったしね」
「ちょ……っ!!!」
──ポップーーーーーーーッッッッッ!!!!!!
改めて衝撃的な言葉をかけられ、おれはがっくりと膝をついた。
そんなおれに、ゴメちゃんは追討ちをかける。
「でもそのルートを選んだのはキミじゃないか……ダイ」
「……!」
「それに、気持ちよかったでしょ?」
「……っ!!」
「遅かれ早かれこのエンディングに進む予定だったんだし、しょうがないよ」
「ううう……っ!!!」
ゴメちゃんに何も言い返せないおれ。
「それより……身体は平気かい……?」
「え……あ……それが……その……」
「どうしたの?痛い?」
「えっと……痛いとかじゃないんだけど……その……」
なかなか言えず、おれは口ごもる。
「……?あっ……!もしかして……!」
ピンときたのか、ゴメちゃんが慌てて何やら攻略本を見る。
「……もしかしたら……コレかもしれない……!」
「?」
「実は……注意書きがあってね……『このエンディングは、プレイヤーの心身に影響を及ぼす場合があります』って」
「え……それ……」
「ダイ……もしかして……身体がうず「た、多分っ!!!」
おれはゴメちゃんの言葉を遮って言った。
「多分、さっきまでポップとエッチしてたから!だからだよ、きっと!!」
「そ、そっか……それなら、いいんだけど……」
そう、多分時間を置けば大丈夫……だよね。
というか、そういうことは早く言って欲しいんだけど……。
まだ、身体に残った熱を、おれは今は深く考えないことにした。
「それじゃ、ダイ。とりあえず1つ目は終わったけど、そのまま次に行く?」
「え……このまま?それは困るっ……!」
──もうちょっと、心を落ち着けさせて欲しいんだけど……!
「そう?まあいいけど。次も……ポップでイく?」
「えっと……」
──なんかおかしな変換されたような気がするんだけど……おれの気のせい?
確かポップはもう1つエンディングがあったはずだ。
「うん……そうしようかな」
「それじゃあ休校前日のノヴァとの選択肢の前から始めたら?それなら一晩休めるでしょ?」
「そうだね」
実はずっとポップとエッチしてた(はずだ)から、おれはかなり疲れていたりする。
「じゃあ次も頑張ってね!……同じ選択肢、選ばないようにね」
「わ、わかってるよ!」
また、ポップとのバッドエンドを味わうなんてごめんだ。
ゴメちゃんと話した通り、休校前日の時点までロードしたおれは、ノヴァとの選択肢を回避し、家に帰った。
ご飯を食べてお風呂に入った後は、もう何もする気になれなくて、すぐにベッドに横になった。
眠ってしまおうと思ったけれど、背中のシーツの感触で、どうしても数時間前までのことを思い出してしまう。
──おれ……本当にポップと……しちゃったんだ……!
「ううー……ごめんよ……ポップ」
おれが、選択肢を間違わなければ……!
いや、そもそもおれがこっちのエンディングを選ばなければ、こんなことにならなかったのに……!
あんな良いやつがあんな……あんな……!
ポップにされたことを思い出して、否応なしに身体がぞわりとした。
「……やめよっっ!寝よ!!!」
ポップに対しての申し訳無さと罪悪感を抱えながら、おれは毛布を頭から被って眠りについた。
翌日──
バッドエンドの分岐点は、おそらく最初の選択肢だろうと予測したおれは、とりあえず宿題に取り掛かる選択肢を選んだ。
でも昨日体験したこと、そしてこれから再び体験するであろうことを考えると、集中などできるはずもなかった。
──ポップとのもう1つのエンディングはハッピーエンドだったよね……。ハッピーってことは、ポップが喜ぶような選択肢を選べばいいのかな……?
そんなことを考えながら苦手な魔導書の書き取りから手を付けたのだけど、もうすぐ夕方に差し掛かる時間帯になっても結局終わらず、おれはペンを放り出した。
「あーっ!もうダメだぁ……!」
──ちょっと気分転換でもしてこよ。
そう思って家を出た。
おやつの時間を過ぎた、まだ夕暮れ前の時間、特に行く宛もなくブラブラと彷徨っていたおれは、ポップに出くわした。
ポプダイ ハッピーエンド ルートC
〜しばらくお待ちください〜
/ ベホマ……ッ! \
暗い空間で、またおれは我に返った。
「あ……!や……やっと終わった……!」
脱力し、思わずその場に大の字に倒れ込む。
「お疲れさま〜ダイ。無事にハッピーエンドクリアできたみたいだね!」
「うん……なんとかね……」
気心の知れたポップだったから、正直おれは甘く見てたんだと思う……。
改めて思ったんだ……!
──やっぱりポップって……ものすごくスケベだ……っっ!!!
「いやあ、ベホマで回復しちゃうなんてさすがポップだね!」
「さすがっていうか……そこまでするかなぁ……普通」
「えー……だって…………ポップだよ……?」
「そっか…………ポップだもんね……」
当然、という顔をしたゴメちゃんの言葉に、なんとなく納得してしまうおれ。
「でも、バッドエンドの時よりも、気持ちは楽なんじゃない?」
「あー……うん、そうかも」
ゴメちゃんの言葉に、バッドエンドの時を思い返す。
確かにあの時は初めてエッチをしたっていうこともだけど、よりによって親友のあいつに、あんなことをされたことの方がショックだったかも。
それに比べれば、身体のダルさは変わらないにしても、心はどことなく満たされている。
「気持ちよかったでしょ?心を通わせた人とするエッチは」
ゴメちゃんはそんなおれの気持ちを見透かしたように、にこにこと笑った。
「う……うん……」
確かに、ポップがおれのことを大事に思ってくれてるって気持ちが伝わってきてすごくドキドキしたし、あいつと繋がってる時はあいつと1つになってるんだって感じて、嬉しかったし、とっても気持ちよかった。
──おれ……本当にポップのこと、好きになっちゃったのかな
なんだか自分の気持ちがよく分からなくて、おれは黙ってしまった。
「さ、次はどうしようか?」
攻略本を見ながらゴメちゃんが言う。
「日付通りに攻略するなら……次はバランさんだね」
「う……父さん……かぁ」
あっちの世界じゃ父さんとゆっくり話すことなんてほとんどなかったから、こっちで仲良くなれたのはとっても嬉しいんだけど……。
「おれたち、親子なのに……こんな展開あっていいのかなぁ……」
ポツリと呟いたおれに、ゴメちゃんは呆れた顔をする。
「何をいまさら……。BLゲームなんだから、当然あるに決まってるでしょ!」
「え……そうなの……」
「そうだよ!BLゲームで父子、兄弟があるのは当たり前!……それとも、ダイはバランさんのこと好きじゃないの?」
「……!と、父さんのことは好きだけどさ……!!」
だって11年振りに会えた実の父親で、しかもその後あんな別れ方をして……。
好きにならない方がおかしいだろ?
でも今の所、この「好き」は息子としての「好き」だと思うんだけど……?
「ならいいじゃないか!じゃあこの調子でバランさんのエンディングも頑張って!1日目の夜までロードして、一晩休むといいよ。あ、ハッピーエンドにするか、バッドエンドにするかはおまかせするよ」
じゃあね、とゴメちゃんは自分の言いたいことだけ一方的におれに告げると、消えていった。
一人残されたおれは、ゴメちゃんの言葉を素直に飲み込めない部分はありつつも、悩んでも仕方のないことだと思い、早速ロードをする。
おれの部屋に戻ると、早々にベッドに潜った。
そして休校2日目──
父さんの屋敷へ出かける選択肢を選んだおれは……
バラダイ バッドエンド
〜しばらくお待ちください〜
/ ギガブレイクッッ! \
「父さん!!なんでーーーーーっっっ!!!」
真っ暗な空間に、おれの悲鳴が響きわたった。
「おれが……おれが、選択肢を間違っちゃったから人間が……!」
「お、落ち着いて、ダイ!!街も人間も無事だから!」
真っ青になって立ちすくむおれの目の前に、慌ててゴメちゃんが出てきた。
「え……無事……?」
「そう!ちゃんとロードすれば大丈夫だよ!安心して!!」
「そうなんだ……!よかった……」
ゴメちゃんの言葉に気が抜けて、おれはぺたりと座り込んだ。
とりあえず街も人間も大丈夫だという事がわかると、今度はそれ以外の事に意識がいく。
「今回も酷い目にあった……!父さん……どうして……」
「ポップの時にも言ったでしょ?それだけバランさんの愛情が深いってことさ」
「こんなの嬉しくないよ……!……っていうか、父さんだけじゃなくて、ラーハルトともエッチしちゃったし……」
「それは……まあ……ストーリーの都合上というか……。でもどうせまた後で体験するんだし、いいじゃない!ねっ?」
「それはそうだけどさ……!」
どうもこの間からゴメちゃんにうまくあしらわれてるように思えるのはおれだけ?
でも正直言って、エッチをした事より、それ以外の方が衝撃的すぎて……。
「さ、じゃあこの調子でどんどん行こー!」
「……はあ」
ノリノリのゴメちゃんと溜息をつくおれ。
「さっ、次はバランさんとのハッピーエンドだね!ラブラブ父子楽しんでおいでよ!」
「ラブラブ……ね。普通の仲のいい父子でいいんだけどな」
「いってらっしゃーい!!」
ゴメちゃんの声援に見送られ、おれは再びロードを行った。
バラダイ ハッピーエンド
〜しばらくお待ちください〜
/ ドルオーラッッッ \
「つ……疲れた……」
──父さん……容赦がなさすぎるよ……!!!
「大丈夫かい?ダイ……それにしても流石竜の騎士だねぇ!」
うんうん、と頷くゴメちゃん。
「ゴメちゃん……それ関係ないと思うんだけど……」
「そうかなあ?2番目ぐらいには容赦ないと思ったんだけど……」
「……!?に、2番目……?」
「そうそう。1番は……」
「いいっ!言わなくっていいから!!」
おれはその先を聞きたくなくて、ゴメちゃんの言葉を遮った。
──あれ以上されたら……おれ……死んじゃう……!!!
父さんのあの容赦のない責め方で2番目だという言葉に、おれは震え上がった。
「ま、その話はとりあえず置いといて……お父さんに沢山愛されて良かったねえダイ」
「え……あ……うん……」
確かに容赦のない責め方ではあったけれど、言葉と態度と、そして紋章から伝わる父さんの想いで、おれはとっても満たされていた、と思う。
この世界で、ずっと父さんと暮らしたいなと思ってしまうぐらいには。
──どうしよう……おれ、ポップだけじゃなくて、父さんのこともそういう意味で好きになっちゃったのかな……!
今しがた体験してきた出来事を思い出すと、ドキドキと胸が高鳴る。
抱き合った時の身体の熱さと、おれを見つめる眼差しと、それからおれを気持ちよくしてくれる父さんの──。
身体が、覚えのある感覚に包まれそうになり、おれは慌てて思考を振り払った。
続く