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    romuro_01

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    #2022夏のK暁ワンライ
    参加させていただきます!

    お題:海
    内容:ほぼオールキャラ+K暁

    #2022夏のK暁ワンライ
    2022SummerKDawnOneRai
    #K暁
    #生存IF
    survivalIf

     バックミラー越しに後部座席を一瞥すると、車の心地よい揺れに勝てずに眠ってしまった若者3人が見えた。すぐ後ろに座る暁人は窓に頭をこすり付けていて、真ん中の麻里とその隣の絵梨佳は二人で肩を寄せ合って眠っている。先ほどから後ろが静かになったと思っていたが、どうやらそろいもそろってお休みモードらしい。
     運転しない奴は気楽でうらやましいと、軽くため息をつく。助手席の凛子はノートPCを開いて何やら作業中だ。走行中の車の中でよくも酔わずにPCをいじり続けられるものだなと少しばかり感心する。

    『KK、もう諦めて皆で行けばいいんじゃないか』
     そう言ったのはエドか、デイルか。
     事の発端は、一通のメールだった。
     数年に一度の頻度で依頼を受けている神社からのメールで、内容としては特に化け物退治でもなんでもない。穢れの浄化と、神域の確認、札の張り直しのみの簡単なものだ。
     問題は依頼先が都内ではないことと、依頼されている敷地が広いため、本来なら車を運転して1日がかりので行く予定だった。ただ、その場所が海の近くというだけで状況は一変した。
     一週間前にアジトでその話をした際に、ちょうど居た麻里が反応し、麻里が行くなら付いていくと過保護気味に暁人が言い、気が付いたら絵梨佳も参加することになっていた。
     客先に連れて行くにしては子供が多すぎる(暁人も勿論その中に含まれて居た。本人は不満そうだったが)ということで、引率として凛子が付き、結局5人で行くことになった。まあ、エドもデイルも日本の夏にはうんざりなので頼まれても出ては来なかっただろう。
     作業は1人よりも数人で手分けをしたほうが効率的だが、女子二人の目的は海だ。散々遊びに行くわけではないと釘をさしたが、二人の海への情熱はそんなことでは収まらない。そして、とどめは暁人の一言だった。
    『最後に海に行ったのっていつだっけ?』
     その一言で、自分は暁人を海に連れて行っても良いと思えたし、恐らくアジトに居た全員がそう思っていただろう。結局客先に向かう前に、朝一で海へ向かうスケジュールになっていた。ただし、行くだけという条件付きでだが。

     遠華根ICで降りて、一般道に入る。時計は7時を少し過ぎたところだ。道路は全くと言っていいほど混んでいない。この時期にしては幸い天気は悪くないので、今日は人が集まるだろう。帰りは混むかもしれないな、とぼんやりと思う。
    「そこを左に、有料道路に入って。後は真っすぐ」
    「おう」
     PCから顔を上げずに、凛子がナビゲートする。それに従い、方向指示器を点滅させ有料道路に入る。
    「お前、来てよかったのか?」
     前を向いたまま、凛子に問いかける。ずっと仕事をしているということは、この一日は、かなりロスになるはずだ。
    「息抜きには良いんじゃない? 海なんて久しぶりだし。一人では行こうと思わないからな」
    「……そうだな」
     確かに自分一人で行ったときには、海に近いからと言って行くことはなかった。
     有料道路を抜けると、海はすぐそこだ。窓を開けると、磯臭い風が頬をなでる。

     浜辺近くの駐車場にはちらほらと車が止まっており、どうやら混む前にと同じ事を考えている人は少なくなさそうだった。
     目の前には砂浜が見えている。ここから海は見えないが、そちらに頭を向けたまま、きっちり白線内に車を停車させて、寝ている若者達に声をかける。
    「おい、着いたぞ」
     目をこすりながら一番最初に起きたのは暁人だ。
    「あれ、僕寝てた?」
    「おう。すごいいびきかいて寝てた」
    「え、嘘」
    「冗談だ。ほら、二人を起こしてやりな」
    「うん」
     じとりと目で訴えた暁人だが、素直に頷くと隣の二人を揺すって起こす。
    「麻里、絵梨佳、着いたよ」
     その言葉に二人はほぼ同時に目を覚ました。途端に車内が騒がしくなる。
    「ねぇ、波の音聞こえる?!」、「駐車場広っ!」、「八十八(やそはち)ヶ浜って来るの初めてなんだよね。広いんでしょ?」
    「もう着いたの?」
    「あんた達が寝たからよ」
     凛子がノートPCを閉じる。
    「できても足を浸ける程度だからね。分かった?」
    「「はーい!」」
     二人とも返事はいい。先程まで眠っていたはずだが、元気なことだ。二人が車を下りて、砂浜へ向かって一直線に駆けていく。駐車場からは海は見えないが、波の音は聞こえていて、それも彼女達の期待値を上げているのだろう。
     今からほぼ1日歩き回るのだから体力は温存しておけよというのは、若者にとっては野暮だ。
     二人のはしゃぐ声が凛子を急かす。「浜辺を走ると危ないから! 二人とも待ちなさい」と凛子も慌てて二人を追いかけて車を下りた。

     そろそろヤニ切れは限界だった。2時間も禁煙したのだから、流石に一服するのは許されるだろう。幸い浜辺に向かった若者達には凛子も着いているから心配は無用だ。
     車内禁煙の面倒なルールがあるため、車を下りる。まだ朝とは言え、この時期の日差しは優しくない。風があるからまだ堪えられるが、少しでも日陰に入りたくて車の後ろに移動する。ハッチバックを開けて、できた影に入る。
     胸ポケットからタバコとライターを取り出し、漸く2時間ぶりのタバコを味わう。苦い煙で肺を満たすと、運転に疲れた思考がクリアになっていく。
    「KK」
    「おわっ! お前、あの二人に着いていったんじゃなかったのか」
     突然声をかけられて、驚きに咥えていた煙草を落としそうになる。慌てて指で挟み直して、声のする方に向き直る。
    「そのつもりだったんだけど、KKと居たかったから」
    だって、今日はKKを我慢しなくちゃいけないし。
     ぼそっと呟かれた言葉に、なんだそれは、と思う。
    「皆いないから、今だけ甘えていい?」
     控えめに、けれども期待した声でそう言われたら断るに断れない。
     咥えていた煙草を口の端に咥えなおし、暁人の頭をなでる。
    「うん、KKに頭撫でられるの好きだな。」
    「煙草の臭いが移るぞ」
    「いいよ。今日は歩き回って埃だらけになるんだし。煙草の臭いくらい」
    「そうか」
     煙草を吸っているために、暁人を構えないのがもったいない。先ほどまでは身体が煙草を欲しがっていたのに、今はもう煩わしくなっている。現金なことだ。
     暁人とそういう関係になる前は、煙草は何よりも優先順位が高かったはずなのにどうしたことか。
     吸いかけの煙草を、足元に落として踏みつける。マナーは悪いが、後で携帯灰皿に入れればいい。今は少しでも暁人に触れていたかった。
     暁人がそれを見て、いいのか、と目線だけで聞いてくる。それに応えるように髪をかき混ぜた。煙草を消した理由など分かってるだろうに。

    「KK」
     と強請るように名前を呼ばれて。
     こちらもただ名前を呼ぶ事で応えて、頬に手を添える。
     期待している暁人の顔がいじらしくて、たまらなく可愛いと思う。
     顔を寄せて、唇が触れーー
    「二人とも~! 早く来てよ~!」
     静かな駐車場に、絵梨佳の声が響く。不自然にならないようゆっくりと身体を離した。ハッチバックの影で恵里佳からは見えないはずだが、暁人は肩を揺らして、目に見えて動揺している。
    「煙草吸ってたんだ。今行く!」
     影から出て、絵梨佳に向って叫ぶ。
     顔を出しただけの恵里佳は返事を聞いたらすぐに浜辺に引き返した。
    「ほら、姫達がお待ちだぞ」
    「うん……。ちぇっ、し損ねちゃったな……」
    「帰ったらたっぷり甘やかしてやるから、それで我慢しろ」
     携帯灰皿に先ほど潰した煙草を押し込む。そろそろ中身を捨てないと入らないほど膨らんだそれをさらに無理矢理バックに詰める。
    「はぁ。長男はつらいよ」
    「なんだそれ」
     車のロックをかけて、二人で砂浜に向かう。ごうごうと波の音が聞こえてきて、少し怖いくらいだ。
    「久しぶりの海なんだろ?」
    「うん。KKは?」
    「オレもだよ」
     視界が開けて、目の前に海が広がる。端から端まで一面が海だ。地形に沿って砂浜が続いているために、砂浜に終わりが見えない。
     横にいる暁人が、わぁ、と小さく声を上げた。ちらりとその横顔を盗み見る。暁人の瞳にも視界いっぱいの海が広がっている。
    「これは確かに、走りたくなるかも」
     そう言って暁人も海に駆けだしていく。麻里と絵梨佳は早速脱いだ靴を片手に、波に足を浸して、冷たさを楽しんでいた。少し離れたところに凛子が二人を見守っている。
     波が朝日を受けてきらきらと反射する。まるで海そのものが光っているように感じる。その中に一際眩しい存在が混ざる。それに気づいて、踏み出すのを一瞬躊躇する。
    「「「KKー!」」」
     早く早くと、3人か呼ぶ。それは一瞬の躊躇いを吹き飛ばす程の強さだった。
     革靴が砂だらけだがもう構うものか。その輝きは今は手の届くところにある。それをもっと近くで見るために、呼ばれるままに波際へと歩き出した。
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