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    touko62002

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    touko62002

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    書きたいところだけは書いた。
    残りは後日。

    #ホー炎
    hoFlame

    むかしのはなしあの大戦から数年経ち、ようやく人々は落ち着きを取り戻し復興へと歩み始めていた。ここ4年は開かれていなかったビルボードJPも、諸外国へのヒーローの健在をアピールするためにも必要となり、開催されればそれなりの盛況とともにランキングが決まっていった。ヒーローたちもそれぞれに深手を負って、引退する者や完全回復まではならない者など様々ではあったが、それでも事件解決数や支持率などは最後に開催された頃とあまり変わりなかった。
    ただ大きく違っているのは、エンデヴァーがTop10にも入れず、かわりに前回2位だったホークスが一位になったことくらいだろう。
    ランキングの結果を聞いた時、ホークスは苦虫を潰したような顔をしていた。彼にとってNo1の座はけっして欲しがるようなものではなく、ただ一人のために永遠に空けておきたい場所だったからだ。それを分かっているホークス事務所のS Kたちはけっして「おめでとう」とは言わず、「エンデヴァーはまたNo1になれるたい」と宥めを口にしていた。そして一昨年Skになってくれた常闇は、上司の珍しくの不機嫌をどこか扱いづらそうに数日は黙って見ていたのだった。

    『No1おめでとう。その年でNo1など、本当に最速の男だな』
    パトロールと称して福岡の街の上をフラフラ飛んでいると鳴り出した携帯に、名前を確認して慌てて応答ボタンを押した。
    高い高層ビルの屋上のフェンスに立ち、後ろからついてきた常闇に「ごめん」とジェスチャーを送れば察してくれたのか向こうもパトロールをしてくると答えてくれた。
    「嫌味ですか。・・・オレはNo2がよか」
    不機嫌を隠さず電話口に出れば、含み笑いの滲んだ声で『そうか。欲がないな』と返ってきた。
    「そうじゃなか。オレは強欲たい・・」
    言葉は続かなかった。「あなたがNo1で、オレがNo2が良いんです」と駄々を捏ねても現状は難しいのだと分かってる。事の元凶がエンデヴァーなのだと声高に叫ぶ人はまだいるし、数年経ってもTVの討論会などでは答えのでない話を繰り返している。元々テレビには出ないエンデヴァーはいいサンドバックになっているのが歯痒いが、本人はヒーロー業以外に償う術を知らなのだと黙っているのだからホークスも我慢するしかなかった。
    それにあんなにも渇望していたNO1の座は今のエンデヴァーにとって魅力のあるものではないようで、ときどきホークスが「No1」と軽口を叩くが僅かに目を細めるだけで笑うことすらなかった。たぶんあの大戦の後、残りを人生を家族や遺族へ償って生きると決めたから、ランキングなど気にならなくなったのだろう。
    今だエンデヴァーよりも能力のあるヒーローがいない中、ホークスにはそれが残念に思える事もあったが、本人が決めたことならば側で支えていこうと決めている。だが、その範囲に己のNo1の地位などいれていなかったのだけど。
    『今度のビルボードJP開催、No1が出るのを渋ってるようで、なぜかこちらに説得係が回ってきた』
    「あなたに頼むなんて最悪たい。なして引き受けたと?あなたには言われたくなか」
    『いまこの国にはNo1が必要だからだ。そして今はお前がNO1だ、ホークス』
    耳に押し付けた携帯から、まるで宥めるように柔らかな声で名前を呼ばれる。炎司が名前を呼んでくれるときの穏やかな顔と僅かに浮かぶ口元の笑みが好きで、思い出すだけで先ほどまで腐していた感情が解けていく。
    温かな太陽の光の元、街中の喧騒を遠くに聞きながら大事な地元に視線を移す。ゆっくりと復興は進んでいるし、人々には目に見える希望が必要なのは分かっている。だがそれは、自分ではないと思っていた。人々の期待も一身に背負っても立ち上がり歩める人を、支えて生きていきたいと子供の頃から願っていたのに。
    「オレのNo1は、ずっとあなたですよ、エンデヴァーさん」
    『・・・ありがとう』
    小さい声で答えてくれる。
    エンデヴァーは大戦のあと、気負うものがなくなったように穏やかになった。仕事にいたいする熱意は変わらないが、他者への態度が目に見えて柔らかくなっている。おかげでチームアップで合同捜査になると、昔に比べて他のヒーローが話しかけてくる事も多くなった。それをヤキモキしながら眺めていると、捜査に加わっている塚内や親しいヒーローに揶揄われたりするのだ。
    オレの炎司さんなのに、ヤキモチ妬いてどこが悪いと?とつい思ってしまう。
    『それで、大会には出るんだろうな?』
    「そんな後の話より、週末の話をしません?オレは予定通り明後日にはそちらに行きますけど、どうです?」
    『あぁ・・大丈夫。問題ない。家で待ってる』
    「良かった。・・早く会いたか、炎司さん」
    ホークスは携帯を耳に押し当てて、少しでも炎司の声を聞き漏らすまいとしていた。強い風の吹く高層ビルの屋上で「オレもだ」と小さく聞こえたことに、ようやく表情を崩して笑顔を見せたのだった。


    まるで鳥のように、啄むように軽く何度も口付けた。枕元のライトは温かな光を灯していて、いまだ口付けに慣れない炎司が視線を彷徨わせてる様子を浮かび上がらせる。
    横で締めている腰帯をするりと解けば、ぼんやりとした明かりの中で浮かぶ白い肌に思わずじわりと唾液が溢れ唾を飲み込んだ。毎日の鍛錬を欠かさない炎司の体は年齢から考えられないほど張りがあり、胸は触ると指沈むほどだ。
    服の上からこの胸筋触れられた感動を今でも覚えてる。
    数年前の短い共同生活で覗き見た長年の戦いで傷だらけ肌に欲情し、己のエンデヴァー向けてる感情が思慕だけではないと気づいた。それからかなり時間を思い悩んできたが、不意に見せられる好意に我慢できなくて泣きながら告白したのだ。
    あまりカッコいいものではなかったけれど、炎司はボロボロ涙を落とす後輩に狼狽えて宥めるように抱きしめてくれた。ふわりと顔に押し付けられた胸の柔らかさに涙は引っ込み、思わず顔を埋めて堪能してしまった。体温が高いためか少し汗ばんでいて、その濃い匂いが鼻の奥をくすぐる。額を胸にすりつけて、腕を太い腰に回せばいつもは微動だにしない体がびくりと震えた。だが無理やり引き剥がされることはなく、この距離まで許されているのだと思うとさっきまでボロ泣きしていたのを忘れて嬉しくなってしまった。
    その行動に炎司は言葉をなくしていたが、顔を上げて二ヘラと笑えばつられて苦笑して優しく頭を撫でてくれた。
    告白は受け入れられなかったが、否定はされなかったことに手応えを感じた。すこし悩みはしたものの告白までしたのだからとアタックする事を決め、あとは足繁く静岡へ通った。最初のうちは年齢や離婚歴を理由に拒否されていたが、「お前を恋人など考えられない」という決定的な言葉はなかったために、繰り返し「オレがどれほどエンデヴァーさんが好きか」を繰り返した。
    『あなたが抱きしめてくれた胸の柔らかさを思い出して、よく抜くんですよね』と炎司をオカズにしているのだと言えば青い瞳を大きく見開いて固まった。啓悟の「好き」を性欲込みのものだと思っていなかったのかと、そこでようやく二人のすれ違いに気づいたのだった。
    啓悟は炎司を抱きたいと思ってたが、炎司は啓悟の好きが憧れの延長だと思っていたらしい。まさか自分を想像して自慰をしているとは思っていなかったようで、いつもは人を射抜くように見据える目はこの時だけは居心地の悪さのためか伏せられてしまった。
    だがその機微を見逃せるはずもなく、行儀悪く所長室の机の上に飛び乗り上背のある炎司の顔を見下ろした。
    啓悟がこうやって炎司を見下ろせるのは、飛んでいる時だけだ。それは常に外であるはずなのに今は誰もいない室内で、飛ぶために広げられる羽根はバサリと広がり炎司の体を覆った。
    『愛してますよ、エンデヴァーさん。・・・キスしていいですか?』
    『・・まて。・・それは』
    グローブを脱いでいる間にも、否定の言葉は出なかった。だから羽根の間からチラチラと陽の光が差し込み、炎司のアイスブルーの瞳が戸惑いで揺れているのを見つめながら熱い頬に手を添えた。
    『やはりダメだ。・・・ホークス』
    ダメだと言葉ではいうのに、炎を纏うことも触れている手を払われることもなかった。触れるだけの口付けは熱くて、とてもエンデヴァーらしいと笑ってしまった。
    あれから何度もキスする仲になり、炎司も体温の調節を覚えた。急にキスすると気恥ずかしくて炎を上げてしまうこともあったが、根気強く繰り返せば啓悟が触るくらいでは驚かなくなっていった。それくらい自然と隣にいられるようになってようやく、二人は肌を合わせられるようになったのだ。
    キスは数え切れないくらいした。その体に触れたいと言えば、好きにしろと布団に寝転がって噛み跡をつけることも許してくれた。わずかに見せる躊躇いを塗りつぶすようにゆっくりすすめていき、啓悟の努力の甲斐あって「エンデヴァーさんとセックスしたいです」と告げれば向こうからキスされた上で頷かれた。
    あの時はこれ以上幸せなことがあるだろうかと思ってしまったが、深い空色の目を潤ませて見上げてくる炎司の姿に天国はここにあるのだと噛み締めてしまう。
    着流しの袂を捲れば、日に焼けていない白い太ももが覗く。下着はつけてなくて、立派な性器はキスしただけでゆるく立ち上がり、凝視すると恥ずかしげに「おい」と小さく声をかけられた。
    チラリと視線をやれば、まだ股間を見られるのに慣れていないのかその視線は落ち着かない。啓悟は返事をするように立てていた膝にキスをしてから、置いてあったローションを手に垂らしてゆるく立ち上がる性器にぬるりと塗り込んだ。
    一度イかせてしまうか。しかしさすがに年齢のためか、2度ほど射精させるともう続けるのを嫌がる。なら少し我慢してもらって、尻を解して気持ちよくなってもらうか。
    さすがに、今日すぐにセックスできるとは思っていない。ネットで調べると慣らして時間をかけて気持ちよくなってくれてからの方が、セックスを好きになってくれるとあった。啓悟は炎司とこれからずっと何度もセックスしたいので、気持ちよくなって好きになってほしかった。怖がらせて我慢させるなど考えられないので、炎司の様子を見ながら事を進めていこうと思っているのだ。
    そしていつかは、炎司の方から啓悟を誘ってくれるまでになってほしかった。自分だけが愛を押し付けているのではなく、愛されているという手応えも欲しているのだから。
    ぬるぬるとローションを性器に塗り込めるとだんだん硬くなり、炎司が小さく息を吐いたのが聞こえてくる。ふっふっと途切れ途切れに聞こえる呼吸に、自然と啓悟の熱も上がってくる。さきは長いというのに、炎司が興奮していると思うだけでこちらの股間も勃ちそうになり深呼吸を繰り返した。
    「炎司さん、指入れますよ」
    「ん・・・」
    小さく聞こえた唸り声を了承と捉え、羽を操ってローションを継ぎ足す。とろとろになった指をぐぷりと穴に押し込めると、白い内股がびくりと震えた。開いた指先が緊張で丸まる様子に愛しさを感じつつ、ぬっと少しだけ指を動かした。
    前立腺って・・どこだっけ?気持ちいいんだよな?やばい、調べたのに記憶がトンでる。
    今日のために爪も切って丁寧にやすりをかけた。柔らかい炎司の中を傷つけたくなかったから、いつもは付けないクリームなんか塗りこんで少しでも不快感を無くそうと努力した。そのおかげなのか、いつもより少しだけ柔らかくなった指は緊張でキツくなっている尻穴を傷つけることなくぬぷりと動いてくれる。
    「け・・・・まっ・・」
    小さく聞こえてきた呼ぶ声にすぐ反応し、顔を上げる。炎司は腕で顔を隠していて、まるで苦しさを堪えるように手のひらを握りしめていた。
    尻穴は啓悟の指をぎゅうぎゅうに締め付けきて、さっきよりも動かせない。トイレで準備をしてもらって、布団に寝転がっている時はまだ余裕があったはずなのに、さすがにローションで濡れた手で触るのはまだ想像できていなかったのかもしれない。無理に進めても怖いと思わせるだけだろう。今日はやめておこうかと指を抜いて、置いてあったタオルで手を拭う。
    「炎司さん、今日はやめときますね。・・・顔、見せてくれます?」
    仄かな明かりの中で炎司を見下ろすが、どうも様子がおかしかった。薄く開かれた唇からは、荒い呼吸音が漏れている。そんなにアナルセックスに抵抗があったのだろうかと思うが、炎司のほうも調べたと言っていたので無理解ではなかったはずだ。やはり想像と実践とは差があって驚いたのか。でもそれくらいなら、これから少しづつでも慣れてくれたなら・・・。こちらも精一杯も努力をするから。
    啓悟がしばらくまっても炎司は顔を見せなかった。それどころか薄く開かれていた唇は食いしばるように結ばれて、今度は僅かに震えているように見える。
    「炎司さん?どうしたと?ほなこつ嫌やったんか?」
    焦って地元の言葉が口をつくと、炎司は食いしばっていた唇を開いた。どうやら少し落ち着いたようで、手のひらで目元を擦ると「すまない」と掠れた声でつぶやく。
    「すまない、やはりむりだ」
    きっぱりとした拒絶だった。その言葉が脳へ届くと息が止まった。今は無理でも、慣れればと希望を持ちたかった。啓悟の股間は今でも炎司の肌の熱や、汗の匂い、そしてローションで濡れたアナルの感触で膨らんでいたからだ。ちょっと怖気付いたくらいで諦めたくないし、何より炎司に触ればそれだけで我慢などできそうになかった。これからも炎司に触れるだけで、セックスは許されないなど己の理性では耐えられそうにない。
    「やっぱり、オレとはしたくなかと?」
    責めるような言葉を選んだのは、たぶん甘えだ。いつも啓悟がごねれば炎司は困ったように、返答を変えてくれたから。今回も少し食い下がればどうにかなるのでは?と考えたのだ。
    「違うっ!・・・ちがうんだ」
    ぱっと手が退けられ、隠された顔が顕になる。ようやく顔を見せてくれたが、すぐに拗ねたことを後悔した。その瞳は濡れていて、目尻から涙がこぼれ落ちたからだ。
    「え!?炎司さん!?すいません!そんなに嫌でしたか!ごめんなさい!!あなたが嫌なら2度と」
    「違うと言ってるだろう!」
    その涙を見て慌てて言い募るが、炎司が腕を捕まえて引き寄せてたことに言葉は途切れた。炎司は啓悟の腕を捕まえたまま、しばらく言葉をさがしあぐねているようで口を何度か開いたが、やはり言葉は出ずに黙り込んでもう一度枕に頭を乗せた。
    セックスするの嫌というわけではないらしい。なら怯える理由別にあるのだろうか。自分の行動が嫌がられていないのは良かったがその他の理由など思いつかず、炎司がどう言えば落ち着いてくれるかを考える。
    「炎司さんがオレのことを好きなのは分かってます。だから言いたくないことは、言わなくてもいいんです。ただオレはずっとそばに居る事だけは覚えていてくださいね」
    同じ枕に頭をのせ、炎司の体に手を回した。髪や頬に口付けて、最後に濡れいてる目元にキスをすれば炎司は小さく息をはく。そしてごろりと体を横向けると、啓悟の胸に顔を押し付けた。
    「炎司さんはなんも心配することなか。オレがずっとそばにいるけんね」
    炎司は啓悟が地元の言葉で話すのを好んだ。可愛いと言っていた。可愛いと言われると少し納得いかないけれど、炎司が気に入ってくれるなら良いかと思た。とくに機嫌を損ねた時や、炎司の様子がおかしい時は和んでくれるならばと進んで方言で話をした。
    「愛しとーよ、炎司さん」
    啓悟はずっと炎司の髪や体を撫で続け、炎司は啓悟の胸に顔を押し付けたまま背中の羽を触っていた。
    炎司が話したくなければ、無理に聞く気はなかった。さっきまではセックスできないなんてと思っていたのだが、気位の高い炎司が涙を見せたことでごねる気持ちも失せた。炎司がセックスしたくないというなら、それでもいい。自分の性欲よりも炎司の気持ちの方が大事であり、二回りも離れているとはいえ大事にして甘やかしたい気持ちのほうが大きいのだ。
    自分は他人に対してはかなり淡白な方とは思う。ファンサも欠かさないし、必要とあらば愛嬌だって振りまける。しかし親しい人は数える程度で、公安との長年の関わりのためか人間関係においてはかなり希薄だ。それでも炎司だけは子供の頃から胸の内にいたためか、この人のためならば自分の欲求すらも切り捨てられると思った。
    その炎司がこうやって、自分の胸の中で息を潜めて何かに耐えているのだ。どうやって不安を取り除いてやればいいのか、機転のきく頭で一生懸命考えてしまう。
    「炎司さん、今日はもう寝ましょうか。一緒にお風呂に入って、すっきりして寝ましょう」
    「・・まて、今いうから。ちゃんと説明する」
    「大丈夫です。オレは気にしてません。あなたが言いたくないなら・・」
    「今言わないと、きっと言う勇気がなくなる」
    啓悟は落ち着けるようにと、少し硬めの髪を撫で続けた。炎司の呼吸が肌に触れていて、それが少しだけ荒いことにどれほど葛藤しているのかと察する。
    炎司の反応を見て、だいたい想像がつく。誰かが、炎司の尊厳を踏み躙ったのだろう。考えるだけで背中の羽根がザワザワ動く。だが今は自分を押さえないと。あまり怒った顔を見せると、炎司のほうが萎縮するかもしれない。あなたの身に起こったことは、あなたのせいじゃない。後めたく感じる事などないし、あなたを責めたりまして失望などしない。辛い事なら全部話してほしいし、苦しみを分かち合えるなら、その苦悩すら愛おしく思える。だから気に病まなくてもいいのだと、何度もキスをすればようやく炎司は声を上げた。「たいした事じゃない」と前置きをしたのは、自分に言い聞かせるためだろうか。
    「オレも事務所をもったばかりで、スポンサーを探していた。出資をしてくれることになり、何度か食事をしていて・・・それで。・・かなり昔のことで、忘れていたんだが」
    自分とのことで、思い出してしまったのだろう。最近触れ合うことに僅かな躊躇いを感じていたが、ずっと悩んでいたのかと思うと気付かなかった自分が恨めしい。こんなことなら触れなけれはよかっただろうか。
    いや、恋人になったのに炎司に触れないなどできない。いつかは暴いてしまっただろうから、思い悩んでも仕方ない。そんなことよりも。
    「ごめんなさい。オレとのことで思い出してしまったんですね」
    「お前のせいじゃない。オレが」
    「あなたのせいでもないですよ。でも、炎司さんはどうしたいですか?オレはあなたが望むようにします」
    「オレは・・・・お前としたい」
    おずおずと顔をあげて、啓悟を窺ってくる炎司に愛しさが込み上げてくる。応えるように微笑むと、安堵したように表情を和らげた。こんな顔をさせているのは自分だと思うと、啓悟は幸せで胸がいっぱいになってくる。恋人になって一年ほどだが、ようやく「年下の同僚」扱いから抜け出して「恋人」として甘えてくれるのだと感じられるからだ。
    「嬉しいです。でも無理に進めなくていい。時間はたくさんあります。ゆっくりでいいんです」
    何度繰り返しても足りないキスを送りながら、自分よりも大きな肩へ腕を回し、その上からさらにバサリと背中の羽根で体を覆う。炎司は羽根が自分を覆うことに何も言わず、ただ啓悟の胸に額を押し付け背中へ回していた腕に少しだけ力を込めた。
    こうやって羽根の中に居てくれることが、なにより嬉しい。個性のようにその性格すらも猛々しい人が、黙って腕の中にいてくれることにどれほど稀有なことなのか。そしてどれほどの幸せを、啓悟にもたらしているか本人はわかっているだろうか。
    「愛しとーよ、炎司さん」
    「・・・あぁ、知ってる」
    まだ返してはくれないけれど、受け入れてくれるだけでいい。このまま自分の愛でいっぱいになって、過去など忘れてしまえばいいのだ。
    さっきまで昂ってた熱も、さすがに冷めてしまった。羽根を数枚動かして毛布を被るが、炎司はもう動こうとしない。啓悟はその呼吸が寝息に変わるまで、髪を撫でキスを繰り返しながらずっと炎司をながめていた。

    オレの大事な人をこんな目に合わせた奴を探さなくては。
    清廉な炎司は、自分を売るような真似を受け入れるはずがない。きっと相手が何か卑劣な手段を取ったのだろう。雄英を卒業してばかりということは、未成年だったということか。強個性持ちで雄英でトップであっても、後ろ盾もなければこのヒーロー社会で生きていくのは難しい。だがNO1ヒーローになると意気込んでいた炎司の、足元を掬った奴がいるのだ。
    その相手を探し出したいが、炎司の傷を抉るようなことはできない。時間をかけてもいいから、気付かれないように探さなければ。
    薄明かりの中、規則正しい寝息に寝入っているのがわかる。幸せな夢を、さらに願うなら自分がその夢に出ていて炎司を幸せにできていたらと思う。現実世界では思っていた以上に、炎司を喜ばせることが難しいのだから。
    恋人になって、あと数日で一年経つ。炎司からは、幼い頃から貰うばかりで何かを返せていてだろうかといつも悩んでしまうのだ。そんな自分がたった一つでも、苦悩を取り除けてやれたらと。
    「あなたのためなら、オレはなんでもできる」
    広げた羽根はまだ炎司を包んでいる。そんな事で思い出させた傷が癒えることはないだろうが、せめて朝までこの中で穏やかに眠ってほしい。
    縋るように胸に押し付けられた体を抱きしめて、啓悟は絶対にこの手を離さないと誓った。


    啓悟の剣幕で絶対に相手を知られたくない炎司と、炎司を悲しませるやつは絶対許さないマンな啓悟の水面下でのいざこざと(啓悟が表立って聞いてこないし、素知らぬふりをするので止められない)、お清め(?)セが入るはずなのだけど、支部で近いネタ見ちゃってあぁ〜思ったのでしばらく寝かせます
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    touko62002

    MAIKING書きたいところだけは書いた。
    残りは後日。
    むかしのはなしあの大戦から数年経ち、ようやく人々は落ち着きを取り戻し復興へと歩み始めていた。ここ4年は開かれていなかったビルボードJPも、諸外国へのヒーローの健在をアピールするためにも必要となり、開催されればそれなりの盛況とともにランキングが決まっていった。ヒーローたちもそれぞれに深手を負って、引退する者や完全回復まではならない者など様々ではあったが、それでも事件解決数や支持率などは最後に開催された頃とあまり変わりなかった。
    ただ大きく違っているのは、エンデヴァーがTop10にも入れず、かわりに前回2位だったホークスが一位になったことくらいだろう。
    ランキングの結果を聞いた時、ホークスは苦虫を潰したような顔をしていた。彼にとってNo1の座はけっして欲しがるようなものではなく、ただ一人のために永遠に空けておきたい場所だったからだ。それを分かっているホークス事務所のS Kたちはけっして「おめでとう」とは言わず、「エンデヴァーはまたNo1になれるたい」と宥めを口にしていた。そして一昨年Skになってくれた常闇は、上司の珍しくの不機嫌をどこか扱いづらそうに数日は黙って見ていたのだった。
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