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    mizus_g

    @mizus_g
    パージクとたまにヴェラン 字書き

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    mizus_g

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    ワンライ「野営」+1hくらい

    #パージク

     音を立てずに起き上がり、気配を殺し、息を潜めて、隣で眠る赤毛の男が瞳を閉じていることを確かめてからそっと野営地を出る。
     十名足らずの隊で二、三人ずつ纏まって休息をとっているが、獣や魔物も暮らす山地である上に最近は賊の目撃情報もあるため、交代で見張りを立てている。野営の方法は白竜騎士団がその前身の黒竜騎士団であった頃からあまり変わっていないようだ。いま見張りをしているのは入団して三年目の槍使いの若者で、真面目で素直な好ましい男だ。この魔物討伐遠征にジークフリートが助っ人として付き合うことになったと聞いてそれはそれは喜び、いたく感激していたのだとランスロットから聞いている。こそばゆいが、悪い気はしないものだ。
     その彼は今、やや眠たそうにしながらも実直に見張りをつとめているようで、ジークフリートが突然無言で起き出したときにはすぐに立ち上がって周囲の変異に対し警戒する様子を見せた。動いているものがジークフリートであるということに気づいて槍を下ろしつつ困惑した顔を見せた若者に、ジークフリートは微笑し、彼に見えるように、そっと人差し指を立てて口元に当てる。内緒にしてくれという意図は正しく伝わったようで、彼はそのままぺこりと頭を下げて再度地面に腰を下ろした。
     野営地を出たら、山頂のほうへ向かって山道を登ってゆく。今回の遠征の目的である魔物の生息地はこの山を越えて更に北へ向かったあたりと聞いているが、どうもこの山にはそれとは別の不穏な気配が息づいているように思えてならないのだ。
     白竜騎士団の遠征部隊は主に若手で構成されており、熟練の騎士は引率役の一名のみ。本来はヴェインが参加する予定だったのだそうだが急用で来られなくなったとのことで、たまたま王都に滞在していたジークフリートとパーシヴァルが戦力として同行を申し出たという流れだ。討伐対象の魔物は数は多いが一体ずつは劣弱な種類だと聞いているため、目的となる討伐は特に難しい任務ではないのだろう――が、この山にはそれよりももっと危険な何かが居る。己の嗅覚を信じるならば比較的知恵の回る魔物か、魔法を使いこなすタイプの魔物だ。おそらく一体のみ。この付近で、山道を行く遠征部隊を注視しているような気配がある。狙われている可能性は否定できないであろう。
     ならば俺がどうにかしようと、ジークフリートはひとりで野営を抜け出すことにしたのだった。知恵が回ろうが魔法を使おうが、ただの魔物であれば倒してしまえば良いだけの話だ。自分ならばそれが出来る。そして、見習いを含む若騎士達が今回の任務を円滑に、かつ無事にやり遂げるためには、横槍の脅威となり得る魔物はあらかじめ排除しておくことが好ましい。
     魔物の気配を探りながら夜の山道をゆく。ランタンの明かりと月光を頼りに、風の音と梟の鳴く声が満ちる暗闇の中をたったひとりで進んでゆく。
    「おい、ジークフリート!」
     研ぎ澄ました聴覚に、よく知る声が揺らぎを添えた。
     振り返る。
     少し離れた背後から、パーシヴァルが駆け寄ってくる。
    「……パーシヴァルか」
    「何処へ行く」
    「なに、少々、危険な魔物を片付けにな」
    「どういうつもりだ」
    「この山には魔物が棲んでいる。若い騎士の手には余るだろうから、夜のうちに始末する」
    「……お前は、またそういう向こう見ずなことを……」
     隣に並んだパーシヴァルは、ジークフリートにもはっきりと聞こえる大きなため息をついた。単独行動をするな、輪を乱すな、といういつもの小言が飛んでくるかと思ったが、続く言葉は闇に吸われたかのように途切れ、そのまま放たれることはなかった。
    「向こう見ずというほどのこともないぞ。相手の程度は、気配で大方知れるからな」
    「それはわかっている。お前がおいそれと負けることはないと言うことも」
    「皆が寝ている間に魔物を倒し、寝ているうちに戻ってくるならば、輪を乱すことも足並みを違えることもない。危機の芽だけを摘み取り、あとは予定通りだ。危険は排除され、問題は無いと思うぞ。違うか?」
    「……」
     歩きながら語り、その流れで問うと、パーシヴァルは答えずに黙ってしまった。横目で表情を窺うと、なにか言葉に出来ず言いたいことがあるかのような視線をこちらに向けている。
     目が合って、紅い瞳に情念めいたものが宿った。じりじりと燃えている。ジークフリートはその鋭さ、強さにたじろぎ、何も感じなかったようなふりをして視線を前方へと戻した。
    「……お前は、昔からこうして、野営の最中にひとりで抜け出して何処かへ行っていただろう」
    「昔、というのは、俺が団長だった頃の話か?」
    「ああ。いつも気になっていた。ひとりきりで、見張りに目配せをして何処かへ行くお前のことが……」
    「気づいていたのか」
    「おそらく、それがいつものことであると気づいていたのは俺だけだ」
    「と言うことは、いつも見られていたという訳だな」
    「そうだ。いつも見ていた」
     よく気のつく男だ、とジークフリートは感心した。同時に、一度や二度たまたま目撃されたことがあったとしてもそれが常習的な行動であるということは気づかれていないだろうと思っていたので、今更ではあるが驚いた。それを語るパーシヴァルの声音には、どこか震えるような緊張と、まるで大切なことを告白しようとでもするかのような特別な感触がある。この問答は彼にとってたんなる小言ではないし、無邪気な思い出話とも違うのだろう。ジークフリートはパーシヴァルの言葉に耳を傾けた。
    「あの頃の俺は、上官であるお前の行動は絶対的に正しいと信じていた。疑問を抱くことがあっても、きっと俺にはわからぬ正当な理由があるのだろうと……自分が口出しをすることではないと考えていた」
     パーシヴァルが言うと、夜風が震えた。
     月の明かりが淡く鋭く闇の奥底を照らしている。
     遠い昔、野営の最中に、ひとりで抜け出して魔物を討ち果たして戦闘の興奮も冷めぬままに野営地へ戻るときのあの、誰も居ない夜に呑み込まれてゆくような底知れぬ孤独を思い出す。いつも、野営地へ無事に戻ったところで、そのあとはどうしても寝付けなかった。瞳を閉じても落ち着かず、まどろんでは浅い眠りの中で悪夢を見た。むごたらしく魔物に喰われる夢か、野営地へ戻れずに闇を彷徨いながら命果てる幻影、近しく大切な者を喪う妄想。夜が明けるまでの間に幾度も幾度も悪夢や幻覚を見て、隣に眠る者に怪しまれぬよう静かに眠るふりをしながら朝までひとりで夢魔に耐えていた。そういうものだと思っていた。いつもそうであったから。
    「なんだその顔は。何かやましいことでもあるのか」
     パーシヴァルの声に責めるような色味が混じる。
     ジークフリートは足を止めた。彼にきびしく叱責されることに対し、甘く苦く謎めいた期待、あるいは寄り縋るような後ろめたい想いを抱く。
     彼の手が、手甲ごと、ジークフリートの手を掴む。鎧の金属が触れ合う硬質な音が鳴る。怯えたように竦み上がりながらも平気なふりをして、細めた横目を隣に流してパーシヴァルの表情を窺う。
     紅い瞳が濡れ出しそうな何らかの感情を湛えて、ひどく真剣な様子でこちらを見ていた。
     ――貫かれてしまいそうだ。
    「ぱ、……パーシヴァル。俺は、なにか、間違ったことを……」
    「今の俺ならばお前に手が届く」
     射止めるような台詞に喉がひゅっと鳴ってしまう。
     何もかも奪ってゆきそうな強い瞳が爛々と真摯にジークフリートをつかまえていた。昔と変わらない綺麗な色をしていて、今でも少しも衰えず美しく、艶めいて高貴で、あの頃よりもずっと力強い光に満ちている。
    「俺も行く。お前をひとりにはしない。いいな?」
     呆然とこころを捕らわれながら、ジークフリートは目の前の男に付き従うような心持ちで頷いた。
     彼と共に夜を往き、ふたりではぐれずに戻ってくることが出来たならば、もしかしたらあの恐ろしい悪夢に今宵かぎりは出会わずに済むのかもしれない――と、甘く、淡く、救いの影を遠く恋いながら――。
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    mizus_g

    REHABILI去年の秋にいただいたリクエストというかシチュエーションで「去年のイベント後、ウェールズに帰るパに、見えない不安を隠して寂しい気持ちを持っているジ、寂しさを嗅ぎ取ってギュンとくるパ」というものだったのですが想定よりジが素直になった気がしないでもない……けど寂しがるジってかわいいなあ。
    だいぶ時間経ってしまいましたがその節はコメントありがとうございました!

    ※イベント後の出来事については捏造です
     アルバノルムの軍勢が国境近くへ侵攻しているという情報が入ってから、数日。フェードラッヘは陣を敷いた軍勢を下手に刺激することのないようにと国境よりやや手前に騎士団の一隊を展開した。迎撃するには規模の足りぬ小隊であったが、背後の駐屯地にはいつでも援軍を出せるようにと騎士達が詰めている。しかし、敵勢と思しき軍は国境の僅か手前でぴたりと進軍を止め、動きの無いまま既に三日が経過していた。こちらの出方を窺っているか、あるいは何らかの事情があるのか――いずれにしろ攻め入ってこない以上はこちらから仕掛けることに大義は無い。動くに動けぬまま、前線や駐屯地では初日の緊張感が薄れ始めているとのことで、明日になって夜が明けても動きが無いようならば騎士団長であるランスロットが国境に赴いて様子を確認するという予定になっている。
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    mizus_g

    DONEワンライお題「一緒に眠る」ふと、控えめなノックの音が響く。
     深夜の騎空艇に聞こえる音と言えば艇の駆動音と風の音ばかりであるのが常だ。空耳を疑い、パーシヴァルは耳を澄ました。しばらく返事をしないでいると、少し間を置いてからもう一度、コンコン、と微かなノック音が聞こえてくる。
    「入れ」
     時間が時間だ。こちらが就寝している可能性を考慮しての遠慮であろう。
     訪ねてきているのは、おそらく――。
    「……すまんな、夜更けに」
     開いた扉からジークフリートが姿を見せた。
     最近、時々こういうことがある。夜も更けてパーシヴァルが就寝しようとする頃、見計らったようにジークフリートが部屋を訪ねてくるのだ。今宵で三度目だ。今日は今までで最も時刻が遅い。
    「どうした。共に酒を飲む相手でも探しているのか」
    「いや……、それもいいんだが」
    「今宵は飲まんぞ。もう遅い。明日に響く」
    「酒はまた今度でいい」
     扉を閉めたジークフリートはその場に立ち尽くしている。パーシヴァルは軽く首を傾げて「どうかしたか」と尋ねてみた。
    「一緒に寝ても良いか」
     思わぬ事を請われる。
     パーシヴァルは顔を上げてジークフリートの目を見た。
    「……構わんが」
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    DONE「昨日の夢と今日の過ち」
    2021年3月21日全空の覇者17で配布した無料ペーパーに載せたものです。
    貰って下さった方ありがとうございました~!
    黒竜騎士団時代の話です。Rはつきませんが若干スケベです。
    夜も更けた薄暗い城内の廊下を、パーシヴァルはひとり、急ぎ足で宿舎の自室へと向かっていた。
     騎士団の皆はもうとうに寝静まっている。パーシヴァルはというと、黒竜騎士団の副団長に叙任されるにあたって必要な書類を揃えていたら思ったよりも時間がかかってしまい、気がついた時には辺りがすっかり暗く、静まりかえっていたのだった。
     複雑な仕事をしていたわけでもないのに無駄に時間が掛かったことには、理由がある。
     昨夜見た夢のせいだ。誰にも言えぬ、ひどく不埒な夢を見た。騎士団長のジークフリートと自分が何故か恋仲になっていて、ふたりでベッドに上がり、裸で抱き合う夢だった。
     奇妙なまでに五感の伴う夢で、自身で服を脱いだ彼が晒した素肌の色や、その艶めきの臨場感は今でも手に取るように思い出せる。夢の中のジークフリートはパーシヴァルの身体をベッドに押し倒し、自ら脚を開いて挑戦的にパーシヴァルを誘った。パーシヴァルは興奮して自制心をなくした状態にあり、晒された内腿の肉感に躊躇うことなく欲情した。その情動は夢のくせにあまりに強烈で、目が覚めて時間が経過した今も感情の内側に居座ったまま残ってしまっている。全裸の彼の 4494

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    DONEワンライお題「二度目のキス」(時間オーバー)「何を舐めている?」
    「レモンキャンディ……だ、そうだ」
     風の無い夜だった。
     騎空艇の甲板で島々の夜景を眺めながら、ジークフリートはパーシヴァルの質問に対してやや舌足らずな発音で答えた。その口元は咥えた飴玉を転がすことに忙しいようで、喋っている最中にもしきりにうごめいている。
    「どうしたんだ、それは」
    「貰った。団員の土産だそうだ。個包装になったものが食堂に大量に積まれていてな、たくさんあったから俺もひとつ頂いてきたんだ」
    「……そうか」
     パーシヴァルは後ろめたさを抱えながら、ジークフリートの唇をちらちらと横目で盗み見ていた。彼の視線は艇の外、眼下の景色に注がれていて気づく様子は無い。
     まるく明るい月に照らされた唇の膨らみは品の良い厚みがあり、肉感を思わせるかたちをしている。ふっくらとしていて実に柔らかそうだ。それから、時折、チロリと覗く舌先が濡れた気配を纏いながら唇の表面を舐め、乾いた膨らみに少しの艶を添えてすぐに引っ込むしぐさをする。それがどうにも見ていて後ろめたい。見え隠れする舌が唇の合間を出たり入ったりするたびにパーシヴァルはなにか好ましくない衝動を持て余し、いったん視 2875

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    mizus_g

    DONEワンライお題「眠れない夜」(2.5h)
     グランサイファーの甲板で夜風を感じながら星空を見上げると、幾らか心が平坦になるような感覚がある。
     ここのところ自分の感情は不安定で揺れがある、と、ジークフリートは感じている。騎空士として仕事を請け負ったり仲間とともに日常を過ごしたりするにあたって不都合は無いにしろ、上の空であるとか、ぼうっとしているだとか、そういう言葉で形容されても否定できない状態がもうここのところ暫く続いているように思う。
     原因は半分ほどわかっていて、中心となるのはパーシヴァルの存在だ。率直に言うと、ジークフリートはパーシヴァルのことが気になって仕方が無い。付き合いの長い相手であるのにどうして急にこのようなことになったのかはよく解らないのだが、パーシヴァルの振る舞いや言動には特に変化は無いと思う――ということは変化したのはジークフリートのほうであろう。関係性は変わっていない。強いて言えば、共に騎空艇に乗るようになってからはそれぞれ別々に行動していた頃に比べると随分と接触は増えた。艇内ですれ違えば言葉を交わすし、食堂で出会えばそのまま食事を共にすることもある。元よりの知己ということもあって団長より同じ依頼や仕事のメンバーに選出されることもしばしばであるし、接触が増えれば当然ながら親しさも増すもので、今では昔のように手合わせをしたり、たまに二人で買い物に出たり酒を酌み交わしたりすることもある。声を聞く機会も増えた。一時期よりもずっと気軽に、他愛のないやりとりをするようになった。よく話をするから、彼の最近の趣味や食べ物の好みも知っている。いま読んでいる本のことだとか、最近知り合って話すようになった団員が誰か、ということだとか。パーシヴァルの服が翻った時に微かに舞う匂いも覚えた。彼の、扉をノックする音が昔よりも落ち着いた上品なリズムに変化していると言うことも。先日降り立った街で買ったワインが気に入って取り寄せることにしたとか、最近は季節の果物を口にする機会が増えた、とかいうことも知っている。そう言えば、ふだん、比較的低く重みのある声音で話す彼が、最近ジークフリートの前では幾らか緊張の緩んだような多少丸みのある声で話すことが増えたように思う。だから、そういう油断をわざと誘いたくて食事の席で酒を飲ませようとすると、すぐにこちらの意図に気づいて俺を酔わせようとするなと怒り出す。いや、怒るというか、文句を言
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