ワンドロお題「くちづけ」ラーハルトの母親は、情の深い女性だった、らしい。
周囲の白い目も何のその、魔族の夫と、夫に瓜二つの息子を熱烈に愛したそうだ。
その影響で、ラーハルトは息をするようにくちづけてくる。
頬に、こめかみに、指に、額に。
ちょっと触れ合ったとか目が合ったとかそんなときに本当に自然に。
対して俺はその習慣がない。
嫌ではない。寧ろくすぐったくて幸せな気分になってとても好きなのだが…
一つの苦悩が生まれてしまったのだ。
どうやっても自分から彼にすることができない…!
タイミングがどうしても掴めないのだ。
何故奴はこんな難事をたやすく行えるのか…!
苦悩した末、なるほどこれは武道の修行に通じるのでは!!!と思い立った。
奴の隙を伺うのだ!!!
やられる前にやれというアレだ!(脳内でアバンが違うと言っている気がするが気にしないでおく)
と、気合をこめて早一週間だが、いまだに成功しないでいる。
流石、俺の好敵手だ…
と、ヒュンケルがあさっての努力の末惚れ直している一方で。
「ここの所ヒュンケルから殺気を感じるのだが…俺は何か誤解させることをしてしまったのだろうか…」
ラーハルトは身に覚えのない不祥事を深刻に懸念することになるのだった。