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    momo_kz12

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    すきすきだいすきつきあって!(2)
    入学したら突然求婚された記憶なし夏×記憶あり五の逆行if夏五。前回の続き。下品です。のんびり更新して、あとで支部にまとめる予定です。

    #夏五
    GeGo

    すきすきだいすきつきあって!時間が経つのもあっという間で、入学式ではまだ見られた桜の花も枝からすり落ち、茶色く干からびた花弁が見えなくなったころ。実習という名の実践的な祓いも何度か行われ、補助監督の見守りのもと、五条と二人で任務にあたることが増えた。家入はその間別の授業を受けているらしい。彼女曰く反転術式は簡単だというので、コツを教えてもらったが何一つわからなかった。ひゅーってやってひょい、らしい。誰でもできたらそりゃあみんな最強だよな。夏油の術式はというと、対象の呪霊に意識を向け、自身の拳に集めるように力をこめる感じだ。あとは飲み込むだけ。これもコツがいるのだけれど、チキチキドンドン呪霊玉の飲み込み方講座〜!などやって得するのは私ぐらいなので割愛する。家入風にいうのであれば、ぐるぐるしてぎゅっ。まあこれに関しては血筋がないとダメなのだろうけど。
    相変わらず夏油への求婚をやめない五条ともなんだかんだ仲良くなり、授業が終わった後も互いの部屋を行き来することが増えた。最初の印象は悪かったが、パズルの最後のピースがかっちりハマったように、五条の隣は居心地がよかった。


    「蟲型呪霊、一個体の大きさは約5センチで、大量の同呪霊が集団で襲いかかる。おおよそ二級案件だって」
    任務の詳細がかかれた紙を読み上げる五条を、夏油も大股で歩きながら聞いていた。風が強く、ざわざわと木々が揺れている。五条が先導する道は、明らかに人が入るような場所ではなかったが、方角はこちらで合っているらしい。
    「蟲型呪霊は先に足を潰すのが有効なんだっけ」
    「そー」
    A4一枚の薄い紙が風に煽られ、べこりと歪む。口角を下げてつまらなそうに見ていた五条は、くるくると紙を丸めて適当にズボンのポケットに差し込んだ。現場まではあともう少し歩かなければならない。
    「てか昨日のアツ夜見た?」
    「見た見た」
    「水着の桜木さやか、めちゃくちゃエロくない?」
    『集まれ!夜の男たち』通称、アツ夜はグラビア雑誌を出版している、とある会社が週に一度更新しているホームページのことである。毎週、所属モデルの水着や下着姿、パジャマなど、際どい写真がブログに上げられるため、社会人は勿論、身銭を削って見ている高校生も多い。なお五条に関しては、高校生ながらにしてブラックカードを持つほど実家が太く、夏油も中流階層の中では割と恵まれた方であり、任務で稼ぐ金も含めてお金に困ることはなかった。エロ写メもちょっとエッチなgifも見放題だ。桜木さやかはその会社のスリートップに輝くほど人気なモデルで、五条のいっとうお気に入りのモデルだったことを夏油も記憶していた。
    ほら、と五条が早速保存した昨日の水着の写真を夏油に見せる。ちら、と視線をそちらに向けた夏油は、肩をすくめ、
    「でもその胸の見せ方は下品じゃない?」
    と返答した。途端に五条は顔を顰め、パチリと携帯をたたんでポケットにしまう。ずかずかと距離を詰めた五条は、夏油の肩にどすりと顔を乗せて、耳の近くで文句を垂れる。うるさいな。
    「っハァ~~!?さやのおっぱいのどこが下品なんだよ」
    「いやどちらかというと水着に食い込む太ももの方がよくない?さやは胸よりも太ももの方が魅力的だと思うけど」
    邪魔だよ、と手で顔を押しのけるも、どける気はないようだ。ブツブツと話すたびに整った顎が肩に刺さって痛い。もうちょっとずれたらいい感じに肩揉みマシーンになりそうなんだけど。もう少し右、あと少し右、あ、いや、ちょっとだけ左...そうやっていいポジションを探そうと、変なステップを踏むように歩く夏油に、五条が眉をひそめた。
    「なんだよ」
    「別に」
    ふうーん。大して興味なさそうに五条が返す。喋って顔の位置が少しずれた。あ、そこ。いい感じかも。夏油達に回ってくる呪術師の仕事は基本体力勝負で、高専で行う座学でもずっと下を向いているため、いろんなところが凝りがちなのである。あー、せっかくなら次は左に肩乗せてくれないかな。
    「乳よりも太ももとか男じゃねぇな」
    「別に。胸に食いつく方が女性の体の良さをわかってないと思うけどね」
    むと口を尖らせる五条だが、夏油にだって譲れない一線というものがあるのである。勿論男として、胸に詰まっているロマンも理解できるが、肉付きの良さからするエロさは断然太ももの方だろう。特に長めの靴下に食い込む太ももの肉感や、薄手の黒タイツから透ける肌色はクるものがある。夏油の力説に相手はいまいちピンとこないようだった。これだから五条おこちゃまは...。ぱちり、と肩の上で瞬きをした五条は、何か思いついたような胡散臭い笑顔で夏油の顔を見上げてきた。体感上、この顔をした五条はろくなことを言わないことを、少ない付き合いの夏油でも知っている。
    「...なに」
    「や?やきもち焼いてるんでしょ。傑のおっぱいも好きだよ♡」
    「死ね」
    「ひど!」
    「ていうか私の見たことあるの」
    「あるよ」
    「エッこわ、なんで...」
    「ここに傑秘蔵フォルダが」
    「こわいこわいこわい」
    「てことで結婚してください」
    「お断りします」
    「ちぇー、いけると思ったのになぁ」
    「どこが????」
    「傑のおっぱいに惚れました!けっこんしてください!」
    「帰ってください」
    言ったと同時に夏油の胸に飛び込もうとする五条を、咄嗟の瞬発力で避ける。
    「うわほんとにやめて!」
    それでも抱きしめようと近づく五条の顔を片手で掴み、ギリギリと押し返す。頭突きでもされそうなほどの力の強さだ。夏油は五条の頭を掴みつつ、じ、と一瞬自分の胸に目をやった。 
    「まぁ実際いい胸してる自覚はあるけど」
    「あるんだ!」
    「鍛えてるからね。ていうか君の携帯にある私の胸フォルダ何?」
    「冗談だって」
    「さすがにそうだよね」
    「何回か傑のおっぱいが夢に出てきたことがあるだけ」
    「えっそっちの方が怖いかも......」
    知り合いの男の胸が出てくる夢is何...スペキャ顔をした夏油はうっすら距離を取ろうとしたが、夏油の手が緩んだすきに逃げ出した五条が、しめしめと腕にしがみついてきたので、物理的に諦めることにした。
    「...ちなみに君が夢で見たその胸って女の子のじゃなくて男の?」
    「当たり前だろ」
    「そういう趣味なの?コワ」
    「だからずっと傑が好きだっつってるだろ!」
    「えぇ...?」
    「てかお前の顔で女の乳がついてる方がキモくない?」
    「ふーん、じゃあ私が女性の胸できたら求婚やめるんだ」
    ぱち、それは考えてなかったな、と瞬きをした五条は、顔に指をあてて考え込み、パチリと指をはじいて真剣なまなざしで解を出した。
    「それはそれであり」
    「最悪...」

    暫く歩いた先に、今回の任務先はあった。生い茂る草木の中、明らかに人が住んでいないであろう薄汚れたコンクリートの建物がひょっこりと建っている。ちょっとした病院ぐらいのサイズ感だ。地図ともう一度見比べ、今回の目的地がここであることを五条と2人で確認した夏油らは、廃墟の中に足を踏み入れた。
    カツン、カツンとコンクリートの床を歩く音が空虚な部屋の中にこだまする。ところどころ天井から雨漏りしているのか、水たまりができていた。
    「ウェ、やーな感じ」
    「なんかいっぱいいるよね」
    「ゴキブリじゃない?」
    「蟲でしょ、それある」
    屋敷の奥の方から、うぞうぞと何かが蠢いているような、微力ながらも数の多い呪力を感じる。ゴキブリじゃなくともあまり見たい類のものではなさそうだ。いや、呪霊なんて大体そんなものか。
    「ここだな」
    「だね」
    渦巻く呪力は、廊下の突き当たりにある扉の向こうにあるようだった。薄汚れた小さなネームプレート部分には、書庫と書いてある。この湿度じゃ本もとうにダメになっているだろう。五条がゆっくりと扉を開ける。キイ、と長らく手入れされていなかったドアがきしむ音がして、その扉は開かれた。
    「うっわ」
    「わあ」
    開けた先には一面虫、虫、虫!ずるずると床を這うように移動する数百体の小さな虫型呪霊は、その身体にうすら光を反射し、縦横無尽に部屋の中を埋め尽くしている。意外とすばしっこく、呪力を当てようにも的が定めにくい。ウワ、飛んだ。本当にゴキブリじゃん。ぞろぞろとこっちに近寄ってきて体に上ろうとするけなげな姿は、生理的に受け付けない感じだった。ためしに足で踏みつぶせば、跡形もなく消え去る。呪霊自体はすごぶる弱いが、とにもかくにも数が多い。いつもであれば広範囲に高出力の術式をぶっ放して任務を終える五条も、部屋の耐久度を考慮してか、ある程度的を絞って祓っているようだった。
    そういや、と首を傾けた五条が、呪霊を祓う片手間に口を開く。
    「これいる?」
    「ウーン...使い道なさそうだからいいかな」
    「おっけ」
    いくらいつも通りとはいえ、あまり積極的に取り込みたいものではない。踏むぐらいで消滅するならあんまり意味ないし。呪霊は見た目通り弱かったが、すばしこく動き回るので、どちらかというとどれだけ的に正確に呪力を当てれるかの訓練のようなものだった。だんだんと流れ作業のようになってきて、前方で五条が祓い、その攻撃を逃れた数体の呪霊を夏油が対応するようになる。一分もたたないうちに飽きたのであろう五条が、もはや前に目をやることなく夏油の方へと話しかけてきた。
    「そういやさ、傑は何で呪術高専に来たの?」
    「なんでって、呪力があるって言われたからだけど」
    夏油がさも当然であるかのように答えると、ピクリ、五条の片眉が動く。
    「そういうことじゃなくてさァ、お前の意思を聞いてんの」
    意思?意思か。あまり考えたことがなかったなと夏油は頭を巡らせる。
    「弱者を守るのは力の持っているものの勤めだろう」
    義務教育で数年かけて習わせられる道徳の教科書だって、結局書いてあることは誰にでも分け隔てなく優しくしましょうということだ。強いものが弱いものを守る、それは使ったティッシュをごみ箱に捨てるぐらい当たり前のことだろう。
    「フーン」
    夏油の答えを聞いた五条は、つまらなそうに鼻で笑った。
    「呪術師向いてないね」
    「なんで」
    「他人のために呪術師やってる奴なんて大抵死ぬよ」
    「別に他人のためっていうわけじゃ、」
    弱者ひじゅつしのために身を削って呪霊を祓うってことだろ?崇高な思想で何より。どうせ呪術師なんて死ぬときは1人なんだから、他人救ったところでお前も俺ももれなく地獄行だよ。それともあれ、弱者ひじゅつし救って人の役に立ってる自分に気持ちよくなってる感じ?」
    「...そんな言い方ないだろ」
    五条は、図星?とでも言いたげな意地悪げな表情で微笑む。言い返そうとしたが、うまく言葉が出てこなくて口をつぐんだ。代わりにじゃあ君はどうなんだと問い返すと、ンー、と数秒の沈黙のちに、
    「道がそれしかなかったからかな。世界のバランサーだったし」
    という不思議な回答が返ってきた。バランサー?なんだそれ。発言の意味はわからなかったが、とりあえず流されるまま呪術師になったのであろうことだけは伝わった。それじゃあ君だって私に文句を言う筋合いはないだろ。
    「悟の方こそ自分の意思なんてないじゃないか」
    「そ」
    短く答えた五条が前を向く。あともう少しで全ての呪霊が祓い終わりそうだった。途端、ずぶりと大きな呪力が集まったかと思うと、次の瞬間には最後の呪霊の集団ごと、壁を貫通して大きな穴が空いていた。薄暗かった部屋に光が差し込み、くらり眩暈がする。
    「な、にしてるの」
    今までセーブしながら祓っていたのを忘れたかのように、本人はけら、とあっけらかんとした顔で笑っていた。
    「でもね、そういうのやめたんだ」
    部屋を支える一部が急にすっぱ抜かれたせいで、崩れかけていた廃墟が不穏な音を立てている。
    「これだけ力があるんだから、ぜーんぶ好きなことだけやる」
    ぱち、と綺麗なウインクをかました五条は、ほら、逃げるよと夏油の手を掴む。半ば引きずられるように夏油はもつれた足を動かして、部屋を後にした。
    「ぁ、思ったより崩れるの早いね」
    「君のせいだろ!」
    「傑の足が遅いせいですー」
    「今すぐ悟が手を離せば追い抜けるんだけど」
    「これぐらい振り解けよ」
    「手ごと切られたい?」
    「ごめんって!ほら崩れるよ!」
    ズモモモ...と明らかにヤバめの音を立てていた廃墟を脱出した瞬間、激しい粉塵と共に屋敷が潰れていく。入り口付近に転がっていた2人は、土埃に巻き込まれ、激しく咳き込む。なんとか脱出が間に合っただけましかもしれない。土の混じった汗を拭って元凶をジと見つめるが、本人は怪我しなくて良かったなどと呑気に言っているので、一発その頭を叩いておいた。

    「で、好きなことって、なに」
    地面に寝転がったまま五条に問うと、
    「強いやつと戦いたい、それだけ」
    という単純な答えが返ってきた。ニコ、といつも通りに見える笑顔には、まだ夏油の知らない五条の顔が滲んでいる。
    「傑もそれぐらいシンプルな目標持ちなよ。世界は呪術高専が全てじゃないからね」
    そう言ってまた空を見上げた五条に倣って、夏油も上を向く。青く澄んだ空はうすら雲がかっていた。初夏の青苦い草の香りが鼻を抜けていく。
    「強くなりたい、じゃだめなのかい」
    「別にいいけど、なんで強くなりたいかの理由ぐらいは決めた方がいい。僕が言ったからは無しね」
    「そういうもの?」
    「そういうもの」

    毎日顔を合わせるうちに、五条のことを少しわかった気になっていたが、またよくわからなくなった。普段の熱烈なまでな愛情表現、いや嫌がらせかもしれないが、それとたまに見せる静かな表情。コロコロ変化する表情の一つ一つに深い意味はないのかもしれないが、”好きなこと”の話をする五条は、いつもと纏う雰囲気が違うことだけはわかった。あァそれにさっきの呪力。夏油は五条が本気で戦っているのを見たことがなかったが、あれで小手先なら本気は相当なモノだろう。いや、もちろん負ける気はないのだけど。ただ、本人が出来ると高専に申請していたよりも、はるかに強いような、そんな気がした。やっぱり当初思った通り、宇宙人なのかもしれない。そういえば五条から家族の話は聞いたことないし。...まぁ、硝子の話を聞く限り、いいとこのおぼっちゃまっぽいけど。箱入り息子ってコト?なんてどうでもいいことに頭を巡らせる。

    『呪術師向いてないね』
    唐突に五条の鋭い言葉がリフレインして口を曲げる。別に、弱者を救うことはいいことじゃないか。高専に入る前だって、そうやって生きてきた。力のあるものが弱いものを助ける、社会保障だってそうだ。これが社会だろう。他人を救うことを目的にして何が悪い?
    それでも五条の言葉にどこかモヤモヤとしたものを抱える自分がいる。うまく言葉にできないまま、補助監督が来るまで一緒に空を見上げていた。
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