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    しらい

    治角名しか勝たん。

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    しらい

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    今さらながらの呪術パロ。なんでも許せる人向け。あんまり治角名してない…。
    配役イメージは、双子は双子ちゃん、北さんは夏油、角名は冥冥です。

    #治角名
    nameOfTheCorner

    治角名呪術パロ 最近、どうにも懐かれているような気がしてならない。

     どの組織にも属さない俺はフリーという形で呪術師を続けており、金の額によって受ける仕事を決めている。守銭奴だと揶揄されていることは知っているが、これほどわかりやすくて信用のおけるやつもそういないんじゃないかと思うんだけど。だって金さえ払えばどんな仕事でもするんだよ? 自分たちがしたくない汚れ仕事や面倒な仕事を押しつけたりできるなんて最高じゃない? それなら相応の対価を望んでもおかしくないでしょ。対価も用意できないやつがいくら陰口を叩こうが気にしないから別にいいんだけどさ。
     一回の仕事の額がデカいからそんなマメに働くことなんてしなくていいんだけど、貰えるもんは貰っとく主義だから依頼は余程のことがない限り断らない。が、最近の俺への依頼はもっぱら子守に費やされている。赤ん坊をあやすとかじゃなく、ただ単にガキの面倒を見させられているのだ。

    「なあ角名、聞いとる?」
    「聞いてる聞いてる」

     くりっとした大きな瞳に端正な顔立ちをした治は、今回の依頼主である北さんの懐刀的存在だ。あともう一人侑ってのがいて、双子のそいつらは小さい頃に北さんに助けてもらった恩を忘れずに北さんを崇拝している。北さんの言うことは間違っていない、北さんは絶対だって。言っちゃえば宗教じみたそれは俺には関係ないし、本来なら面倒だから関わりたくもないんだけど、その北さんからの依頼は額がぶっ飛んでいるので断る選択肢は今のところない。ないけど、愚痴くらいは言ってもいいでしょ。
     依頼の内容は簡単で、呪いの巣窟に治と同行するというもの。北さんは呪いを集めてるらしいから本来なら北さん本人が来るべきなんだけど、それは侑と一緒にやってるみたいで、俺は治と一緒に呪いを祓いまくるだけの簡単なお仕事。いや、こんな何気ない内容であの額が貰えんならお安い御用なんだけどさ。それと天秤にかけちゃうくらい、俺はこの治の相手に困っている。

     初めて会ったのも北さんの依頼の時で、あの時はめずらしく北さんと侑も同行して四人での現場だった。北さんの狙いは大物の呪いだけで、あとの雑魚は今回いらないというから俺が呼ばれたらしい。その時は双子に実戦経験があまりなく、その経験を積ませる目的もあったんだとか。北さんを崇拝してる双子なら死んでも北さんを護るだろうけど、下手に死なれたりしたら困るってんで保険として俺も参加することになったのだ。
     大物の呪霊を取り巻くように小物が蠢いているのもめずらしくなかったが、その時の双子には手に余って小さな傷を作りながらも懸命に北さんを護っていた。俺は後方で自分のところに寄ってくるやつらしか相手にしてなかったんだけど、ようやく北さんが大物呪霊を手に入れたらしく「角名」とお呼びがかかる。

    『もうここに用はない。さっさと済まして帰るで』
    『はーい』

     双子の修行も兼ねていたはずだが、まだ祓える範囲が狭く時間もかかるために後方から駆け出して前へ出る。そうして跳躍し、大振りの鎌で一掃してその仕事は終わったはずだった。
     それなのに、なぜかそれ以来北さんの依頼が続くようになる。内容はどれも簡単なものばかりで、正直俺じゃなくても務まるものばかり。依頼料が高い自覚はあるので、これではドブに金を捨てているものではないかとも思ったのだが。

    『なんや、治がえらい気にしとってなあ』

     あの仕事の後から治に興味を持たれ、親バカな一面のある北さんは律儀にそれを叶えてやっているらしく、巻き込まれた俺からしたらいい迷惑だ。
     気になるという割に、治は必要以上に近寄ってこない。まるで刷り込みされたひよこのように傍に引っついて喋りかけてくるだけで、最初は可愛らしいと思ったそれも、毎回だと可愛さよりウザさが増してきてしまう。面倒事は嫌いだからなるべく人と関わらないようにしてるのに、今世紀最大くらいの面倒事に絡まれてしまっているのはどうしたものか。

    (別に、俺の出番なんてないくせにさぁ)

     治は着実に力をつけていっているようで、もう一人で呪霊狩りにも行けるレベルだ。それなのに毎回俺と一緒に赴く意味が本当にわからない。変なところで自信がないのだろうか? そんな繊細かな、こいつ。

    「ねえ、終わっといてなんだけど。俺って別にいなくてよくない?」
    「…は?」
    「もう治一人で対処できるでしょ。心配しなくてもそこらへんの呪術師には負けてないし、一人の方が色々と動きやすいから、今後は…」
    「そんだけ?」

     隣を歩いていた治が急に前にまわり込み、大きな瞳でじっと俺を見上げてくる。なにを期待してるのか知らないし、本当こういうの面倒で嫌なんだけど。

    「なにが言いたいの?」
    「俺のこと、ただ強くなったやつとしか見えてへんの?」
    「…ねえ、この押し問答面倒だから簡潔に言って」
    「カッコいいとは思わへん?」
    「……はあ??」

     そうして治は、俺にカッコいいと思ってもらうために毎回戦闘シーンを見せているのだと話し出す。そのために北さんに稽古をつけてもらって、ぐんぐん成長していってるはずだと。まあ、現に俺も実力はついてきたと言ったから別に自惚れじゃないけどさ。

    「なんで俺にカッコいいとこを見せたいわけ?」
    「角名が好きやからや!」
    「……はあ」
    「あ! なんで溜息つくん!? ほんまやって!!」

     ギャーギャー言う治に頭が痛くなってくる。正直、こういう輩は初めてじゃない。それこそフリーになる前から言われてきたし、それもあってフリーになったのだ。依頼料が高額なら他の術師とブッキングすることもそうないし、一人でさっさと終わらせられていいことづくめだろうと。フリーになってから暫くはこういうことと無縁だったから、なんかこの感覚久しぶりだな。

    「俺が戦ってる姿見せたら、角名にカッコええ思ってもらえるんやないかって…」
    「あー…、ウン。カッコいいカッコいい」
    「そんな心のこもっとらんお世辞いらんねん!」

     これはあれかな、なんか勘違いしちゃってる系かな。刷り込みもあながち間違ってなかったんじゃんと思いつつ、残酷なようだけど真実を伝えようと口を開く。これ絶対北さんもグルだろ。俺がそういうの面倒だって知ってるくせにさぁ。

    「そもそも俺ガキに興味ないし、自分より弱いやつも論外だから」

     そうきっぱりお断りして、お前はそういう対象にすらならないんだと教えてあげた。それ以降、北さんからの依頼の頻度は減ったけどなくなりはしてない。忘れた頃にやってくるって感じ? でもそこに治の姿はなかった。まあ、あんだけ言われたらもう俺のこと好きとかそういうこと言えないだろ。俺の周りも平和が戻ってひと安心。そう思っていたのに。
     ある依頼内容がクソすぎて予想外に強いやつに手こずってた時、タイミングよく助けてもらえたことがあった。他の術師とかいなかったはずなのに。でも危なかったのは事実だからお礼くらいは言おうと振り返ったタイミングでバランスを崩し、疲弊してたのもあってそのまま倒れると思った。けれどなぜか逞しい腕に包み込まれ、見知ったやつにこんな体躯のやつはいなかったから誰だと思って顔を見上げると。

    「角名、大丈夫か?」

     そこには青年に成長した治がいて、驚きで声が出なかった。治と会わなくなってからの期間なんて数えてたわけじゃないけど、たった数年でここまで成長するのかと目を疑い、子どもの成長って早いんだなぁと場違いにもしみじみ思ってしまう。そう呆けていたら、唇にふにっと触れる感触。突然のことに目を瞠っていると、なにを勘違いしたのか笑顔の治がいけしゃあしゃあと宣言する。

    「俺もう一人前になったから、堂々と角名のこと奪いに来たで」
    「…は…?」
    「前は綺麗やな思ってたけど、角名ってこんな可愛かったんやなあ」

     そう言って容赦なく口づけてくる治。誰だよ、子どもの成長が早いなんて暢気なこと考えてたのは。これなら子どもの方が扱いやすくてよかったじゃん!
     息が続かなくてなんとか治を引っ剥がすのに、自分でもわからないくらい顔が熱くなってるから調子に乗らせるだけで、結局治が満足するまで離してもらえなかった。あの時あんな、治の闘争心に火をつけるようなこと言わなきゃよかったと心底後悔したし、心臓バクバクしてるのも意味わかんないし、ガキは対象外じゃなかったのかよと自問自答するけど、なにもかもが遅いんだよなぁ。
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    Replies from the creator

    しらい

    MOURNING軍パロ「Chain」の最後、ボツになった微エロ?を置いときます。
    設定としては治角名二人とも軍人で、角名はトラウマで首を触られるのがダメ。治としては角名を泣かせたいと思ってる。
    その先の未来−another− それでも許してくれたのは、俺に気を許してくれているから。そう思うと気分がいい。

    「なんかされたら嫌なことあるか?」
    「……首、触られるこ」
    「それは却下や」
    「チッ」

     聞く気ねぇじゃんと角名が零し、それ以外でと俺が指定する。不機嫌になりながらも暫し考え、思いついたのか角名はゆっくりと口を開く。

    「……じゃあ、手」
    「手?」
    「治の手、掴んでていい?」

     伏し目がちにそう言われ、思わぬ要求に可愛いと思ってしまった。「ええよ、そんくらい」と承諾すると、掌ではなくがっちりと手首を掴まれる。

    「……なあ角名。手ぇ、握るんやないん?」
    「んなこと言ってねぇだろ。……まだ、殺されない保険かけとかないと、怖い、から」

     ごめんと小さく零す角名の額に触れるだけのキスを送れば、パッと目線を上げるので綺麗な瞳がよく見える。不安そうな顔は俺がさせているのに、そんな表情もええなと思っている俺はやっぱり人でなしかもしれない。俺に嫌われるのが怖いと思ってくれているのだろう、なんて初心で可愛いのか。きっと今俺は、とても締まりのない顔をしているのだろう。好きなやつに特別に想ってもらえるのが、こんなに嬉しいなんて知らなかった。
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