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    しらい

    治角名しか勝たん。

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    しらい

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    ずっと放置してた営業の治とSE角名のリーマンパロ(できたとこまで)。治角名、出会ってもないし会話もしてない。

    治角名リーマンパロ【人でなしとのバトル】

     別にこの仕事にどうしても就きたかったわけじゃないけど、プログラムとかをイジるのは好きだったから、なんとなく流れでエンジニアの職に就いてもうすぐ五年。東京で就職し、転勤で関西支社のこの会社に在籍して二年くらい。まあまあ大きな会社だけあって、仕事は忙しいが待遇や給料は悪くないのでなんとか続いてる状態だ。あまり社交的じゃないので最初は関西でやっていけるか心配だったが、幸い部署のみんなは口数は少ないが人当たりはいいし、なにより先輩が優しい。転勤もそう悪いもんじゃないなと、それなりに充実した日々を送っていたのだが。

    「…は?また?」

     主にデスクワークのためモニターに向かってキーボードを叩き続けていた時、後ろから呼ばれたので手を止めて振り向けば、困惑というか苦々しい顔の同僚の姿。どうしたのと訊くと、三日後に納品する予定の案件に変更が出たとのこと。
     納品前に変更が出ることがないとは言わないが、大体は一旦納品して後日追加なり修正なりをする。こっちのスケジュールだってあるのでそれは当然だと思うのだが、ここ最近は納品間際に無茶な仕様追加をしろという案件が多い。しかも納期はずらすなという、無茶を通り越して殺したくなるレベル。いつもはリーダーの大耳さんが対応してくれるが、昨日から出向しているので俺がリーダー代理を任されている。とりあえず変更点が書かれている資料に目を通すが、正直見ない方がよかった。

    (なに、この仕様…。これを今からやれって?)

     追加するだけで済むなら百歩譲ってまだ許そう。しかしこれは追加ではなく、構築したシステムの一部も変えてまた構築し直さなければならない。あとは動作確認やバグのチェックだけの状態だってのに?またイジったらその分チェックにも時間かかるじゃん。普通わかるだろ、そんなこと。「誰だよこの担当?」と同僚に訊けば、ここ最近聞きまくった全然嬉しくない名前。

    「……ちょっと、営業部行ってくる」
    「え、ちょ…」
    「やめとけて角名、あの宮やで?」
    「今まで無茶な要望に一切文句言わなかったんだから、一回くらいいいでしょ」

     フロアが違うため普段なら事前に連絡をとって席にいるか確認するが、今はそんな時間も惜しい。久々のガチ切れかも。てかこの怒りって正当じゃない?こんなのにいつまでも振り回されてたらたまったもんじゃないし。

     エレベーターで目的のフロアに着き、向かう途中に女子社員がいたので本人がいるか訊けば「いましたよ」と笑顔で返ってくる。そうなんですねー、よかったですと社交的に返して連れてってもらい、カードキーでドアを開けてもらえればそこからはもう臨戦態勢だ。日頃から表情が豊かな方ではないが、この時はいつもより表情が消えていた気がする。
     どこからが営業部でそうじゃないのかなんてわかりっこないが、目的の人物は遠目でもすぐにわかる。営業には似つかわしくないあの金髪がこんな時に役立つなんて思いもしなかった。本人は入口には背を向けて楽しそうに談笑中で、理不尽だろうがまた怒り指数が増していく。

    「でな!そん時そいつ…」
    「ねえ、宮侑ってあんたでしょ」
    「あ?…なんやねんお前」

     ご機嫌伺いでも親し気でもない、むしろ蔑むような声色で話しかければ向こうも似た感じで応えてくる。社会人としてどうかと言われたら元も子もないが、そういう一般常識は今はいらない。持ってきた資料をバサッと宮の机に放り投げれば、相手がイラつくのが目に見えてわかる。

    「なに、この仕様」
    「…なんや、お前システム課のやつか。なにって、書いてる通りやけど」
    「この仕様を納品日ずらさずにしろとかありえねぇんだけど。普通はまたスケジュール組み直すだろ」
    「納品日まで残り少ないってことはもう大方できてるんやろ?ほんならパッと作ってチャチャッと追加してくれたらええやん」

     出たよ、この抽象的な言い回し。今までの経験上、こっちの仕事をよくわかってないやつに限ってすぐできると思い込んでる。パッと作ってチャチャッと終わるならそもそも文句なんか言いに来ねぇっつーの。

    「ここ最近の仕様の追加や変更、全部あんたの案件でしょ。いい加減にしてくんない?迷惑なんだけど」
    「あ?なんやねんその言い方!別に俺の我儘やのうて、ちゃんと相手側も納得の上やぞ!」
    「だから!相手の了承得る前にこっちに確認とるのが先だって言ってんだよ!そもそもこの仕様にどれだけ工数かかるかわかって言ってんの!?」
    「はぁ!?んなもんすぐにでき」
    「だからできねーって言ってんだろ!?わかってないくせに簡単に作れとか軽々しく言ってんじゃねーよ!!」
    「ちょっ、お前ら少し落ち着けて!」

     ヒートアップしてきた俺たちの間に入ってきたのは、何度か仕事をしたこともある銀と尾白さんだった。尾白さんが宮を後ろから羽交い締めにし、俺と宮の間に銀が入って俺を諌める。周りも急に始まったバトルにざわざわとしていたが、正直それどころじゃない。

    「じゃあ銀!お前この仕様見て三日後の納品ずらすなとか言う!?」

     宮のデスクに投げ捨てたそれを、銀の目の前に掲げて問い質す。銀は「俺にまで突っかかんなや!」と言いつつも、資料を手にとって軽く目を通していく。こういう素直なところが銀の長所だと思う。銀を営業部に選んだ人の目は確かだ。

    「……いや侑、お前…これはないやろ」
    「はぁ!?銀までなに言うてんねん!!」
    「いやお前がなに言うてんねん!こんな無茶な要望しとったら角名がキレんのも無理ないわ!」
    「…なんや銀、そんなにやばいんか?」
    「アランくんまで!!」

     未だに宮を羽交い締めにしてる尾白さんにも読めるように銀が目の前に資料を掲げると、目を通した尾白さんが銀と同じように宮に突っ込みを入れる。ほら見ろ、他の営業の人はわかってんだよ。お前一人で納品までこぎつけられるならワンマンでもいいけど、そうじゃないんだから少しはこっちの都合も考えろっての。

    「今すぐ相手に電話して納品日ずらしてもらえ!」
    「いや無理やって!!」
    「じゃあ追加の仕様はなしや!」
    「それもあかん!!」

     押し問答を繰り返す尾白さんと宮を見てるのもいい加減にうんざりして、宮の椅子をデスクに向かってガンッと蹴りつける。野次馬含めてフロア全体が静かになったので、絶対零度で物申す。

    「…今回までは目ぇ瞑ってやるけど、こんな無茶ぶり今回までだからな。次持ってきても断固突っぱねるから。覚えとけよ、この人でなし」

     踵を返して去る俺に宮がまたなんかギャーギャー言ってたけど、尾白さんと銀が対応してくれてるようなので無視を決め込む。さっき椅子を蹴りつけたからか、少なからず溜まっていた怒りが霧散した気がする。銀や尾白さんだけに留まらず、フロア全員に見せつけたのだから少しは反省くらいするだろう。…いや、するかな?あんなやつの思考回路なんかわかりたくもないけど。

    「あっ、角名…!どうやった…?」
    「ちょっとバトって、今回までだって啖呵きってきた」
    「おお!お前勇者やなー!」
    「これ俺も手伝うから。…それで悪いんだけど、ちょっとみんなミーティングの時間もらえる?」

     この職に就いて残業しなかったことなどない。ないが、すすんでしたいものでもない。それでも一人に比重が偏るのはよくないからミーティングの場を設けたいと言えば、みんな快諾してくれて助かった。やっぱりこの部署のみんなは優しい。ああ、大耳さんにも報告しないとなぁ。勝手したって怒られるかな…いや、大耳さんはそんなこと言わないし。


    ーーーーー


    【現状報告会】

     チリンチリンとドアに備えつけられた鈴が鳴り、それに気づいて店員が駆け寄ってくる。予約してる者だと北さんが告げると小さな掘り炬燵式の個室に通され、着いた先ではすでに大耳さんとアランくんが酒を酌み交わしていた。

    「悪い、遅なったわ」
    「おお、お疲れ!先に始めてるで」
    「信介も治も、生でええか?」
    「頼むわ。治はどうする?」
    「あ、お願いします」

     北さんにアランくんに大耳さんの面子はまだわかるが、なんで俺までここにおるんやろ…。いつも通りに仕事を終え、さあ帰ろうとした時に北さんに「この後暇か?」と訊かれたので、予定はないと返して連れてこられたのがこの居酒屋だった。
     北さんは同じ部署の先輩だが、こういう席で一緒になるのは片手で数えられるほどではないだろうか。営業なら酒を酌み交わして当たり前!なイメージがあったしそういう人が大半なのだが、北さんはそういうのは必要最低限に留めている。酒飲まんと仕事できんわけちゃうしな、としれっと言う人だ。俺も親しくもないやつと飲んで楽しい気にもならんから、北さんのそういうとこは有難かった。対して、アランくんとはよく飲みに連れてってもらっている。

     そう考えたところで、この場に片割れがいないのが気になった。荷物もないのでトイレに行ってるわけでもないんやろう。アランくんと飲むってなれば意地でも来そうなもんやのに、なんでやろ。そう疑問符を浮かべた俺に気づいたのか、斜め前に座っている大耳さんが声をかけてきた。

    「治もすまんな、急に来てもろて」
    「え、いや、俺は別にええんですけど…」

     大耳さんとは何度か仕事で一緒になったくらいで特別親しくはないが、北さんやアランくんと同期で仲がいいためよく名前は聞いていた。システム課のリーダーを任されとるくらいできる人で、システムについてわからないとこがあるとよく助けてくれる優しくてええ人や。同期での集まりなら俺ではなく赤木さんがいるはずだが、今日の面子はこれだけらしい。この不思議な面子に俺が呼ばれたってことは…。

    「もしかして、ツム絡みですか?」
    「…さすがにわかるか」

     遅れてきた生ビールを手に改めて乾杯をした後に溢せば、向かいのアランくんが溜息交じりに肯定する。

    「この前、侑と角名がバトったことは知っとるやろ?」
    「あー…なんかツムが無茶な仕様追加したからシステム課のやつがブチ切れたっていう…」

    俺はその時の現場にはいなかったが、戻ってきたら侑の機嫌がすごぶる悪いので銀に訊いて知ったことだ。スナっちゅーやつのことは知らんけど、わざわざフロアの違う営業部に殴り込んで来たんやから相当ブチ切れてたんやろう。

    「俺もその時は出向してておらんくてな、角名に代理を頼んでたんや。んで、戻ってきたら営業部に抗議しに行ってきたって角名から聞いてな。ちょっと今こっちは立て込んでてあんま詳しい事情も訊けんから、信介に相談してこの場を設けてもらったんや」
    「俺も当時はおらんかったから、そこんとこはアランに訊いたけどな」
    「…なんや、あのポンコツが迷惑かけたみたいですんません…」

     別に治が謝ることないやんと大耳さんは笑ってくれて、少しだけ身体の強張りがとれる。侑は好戦的で人のことを考えないポンコツやから、昔からトラブルになることが多い。俺も人より好戦的ではあると思うが、すぐ近くにポンコツの具体例がおったから反面教師にして人に優しくあろうと心がけて生きてきた。
     能力まではポンコツじゃなかったからか、侑は自分のポンコツ具合を気にかけることもなく今日に至っている。陰で文句を言うやつはおっても、面と向かって言ってくるやつは稀。やから俺はこの一件を訊いた時、素直にスナってやつに興味を持った。

    「で、そもそもなんで角名がブチ切れたん?あいつ、そんなキレることないんやけど…」
    「あー…、それに関しちゃ圧倒的に侑が悪いわ。なんや、納品間際になって仕様追加の依頼したみたいでな。それがまあまあハードなやつやのに、納品日はずらさんでパパッと作れや!言うて…」
    「アホなん、あいつ。そんなん言われたら俺かてキレるわ」
    「侑の最近の案件、そんなんばっかやったからな…」
    「なんや練、気ぃついとったんか?」
    「リーダーなんやから把握しとかなあかんやろ。…まあ、ちょっと無理すればいけんこともなかったから、俺も侑に言いはせんかったんやけど」
    「いや、そこは言うてええやろ!なに遠慮してんねん!」
    「練、お前らだけが無理することなんかない。お互いの作業が噛み合って初めて仕事が達成できるんや。言う時は言わな、相手が気づかん時もあるんやし」
    「今回のツムがその典型っすね…」

     今までの無茶な仕様追加も大耳さんが肩代わりしてくれていたようだが、それを他のやつが知らないわけがない。きっと侑は、システム課ではブラックリストに入ってる要注意人物だろう。スナはそんな大耳さんを見ていたから、今回のことで怒りが頂点に達したのだと容易に想像できた。

    「それで、そっちは大丈夫やったんか?」
    「なんとか納品日はずらさずに終わったで。まあ、結構無理したみたいやけど…」
    「ほんまに申し訳ない…。侑になんか詫びの品でも届けさせるわ」
    「あ、それならちょっと遠慮しとくわ」
    「なんでや!遠慮なんてせんでええって!」
    「いやなあ……今うち、侑の名前聞いただけでみんなピリピリしよるから…」
    「袋叩きにしてもうて構いませんよ」
    「こら治!」

     唐揚げやら餃子やらと頬張りながらそう言うと、逆に大耳さんが「侑はその後大丈夫か?」と尋ねてきた。ほんま、ええ人すぎん?

    「喧嘩売られたからって凹むことないですから、心配なんかせんとってください」
    「せやけど、仕事に影響出たりせえへんか?」
    「…まあ、角名とのバトルより北の正論パンチ喰らった方が効いてるわ」

     そう。スナとのバトルの後、妙にざわざわとした営業部を不思議に思ってなにがあったか聞いた俺と北さん。俺はアホやなって本人に言うただけやったけど、その後の北さんの正論パンチがもうエグかった。

    「取引先に満足してもらえるように気ぃ配って仕事すんのはええ。けどな、それはお前だけの力やない。システム課の技術借りてええもん作るからお客さんも満足するんやろ。口では上手いこと言っといて、システムがクソやったら詐欺師呼ばわりされてもおかしないんやで?お互いのことを理解して、やりたいことを汲みとってもらわんとええ仕事なんてできひんやろ。それをなんやお前、言いたいことだけ言って振りまわして。ちゃんと納品されんかったら会社もお前の信用もガタ落ちになるってわからんのか。いつまでも我儘が許される子どもやないねんぞ、もっと責任持って仕事せえ」

     完全にお説教モードの北さんは、それはそれは恐ろしくて。口を挟む余裕もなく、言い訳しようにも北さんの言うことがもっともすぎてぐうの音も出ないとはまさにこのことや。結局このことは上司の耳にも入って、思うところもあったのか今後は侑のお目付役として北さんがつくことになった。
     元々、侑のおる第一課と俺らのおる第二課は仕事の関係上お互いの仕事を把握しといた方がええ。普通は案件ごとに担当者も変わるんやけど、今回の件を受けて侑の案件には常に北さんがサポートに入る。侑だけやったらまーた暴走しかねんし、システム課からボイコット喰らったらそれこそ目も当てられん。大耳さんの話を聞くに、ボイコット一歩手前まできてそうやけど。

    「そんで、角名は大丈夫か?侑のせいで無理したんやろ?」

     北さんがそう尋ねると、大耳さんは苦笑しながら教えてくれた。今回の侑の案件は別のやつが担当していて、ぶっちゃけスナは関係ないんやと。スナはリーダーである大耳さんの補佐的な立ち位置らしく、出向して不在だった大耳さんの代わりにリーダー代理を務めていた。そこで侑の仕様追加の無茶ぶりがきて、一人では荷が重いからとスナも手伝ったのだという。自分の案件も持っていたが、そこは事前にみんなで話し合って分担してもらったのだというから卒がない。
     そこからは残業と泊まり込みの日々で、ミーティングルームで数時間仮眠をする他はデスクに齧りつきだったと。さすがに三日後は見てられなかったので最終チェックは引き受け、担当した二人を早退させて翌日は有休をとらせたらしいが。

    「ちゃんと休めたとは思うんやけど、次の日は出向せなあかんかったからな…。直行するから資料とかなんやら持って帰っとったし、あんま休めてへんかもしれんなあ」
    「嬉しい悲鳴なんやろうけど、優秀やと大変やな。今度差し入れでも持っていくわ」
    「あ、それならなんか軽めのゼリーとかにしたってや。あいつ食細いし、脂っこいのとか好きやないねん」
    「いや、女子か!」
    「わかった。治、なんかええとこ知っとるか?」
    「あー…なんか女子に人気のとこがあった気ぃするんで、ちょっと探しときます」
    「すまんな、頼むわ」

     ほんまに侑は!とぷりぷり怒るアランくんをそっちのけに、俺はそのスナっちゅーやつのことを考えていた。今まで仕事で被ったことがないから顔も知らん相手やけど、あの侑相手に正面から文句言うたやつってだけで俺の中では好感度が高い。銀は何度か一緒に仕事したって言うてたし、あとで写真とかないか訊いてみよ。侑を人でなし呼ばわりしたこともいやに的確で、機会があれば話してみたいなと思いながら追加で頼んだチキン南蛮を平らげた。
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    しらい

    MOURNING軍パロ「Chain」の最後、ボツになった微エロ?を置いときます。
    設定としては治角名二人とも軍人で、角名はトラウマで首を触られるのがダメ。治としては角名を泣かせたいと思ってる。
    その先の未来−another− それでも許してくれたのは、俺に気を許してくれているから。そう思うと気分がいい。

    「なんかされたら嫌なことあるか?」
    「……首、触られるこ」
    「それは却下や」
    「チッ」

     聞く気ねぇじゃんと角名が零し、それ以外でと俺が指定する。不機嫌になりながらも暫し考え、思いついたのか角名はゆっくりと口を開く。

    「……じゃあ、手」
    「手?」
    「治の手、掴んでていい?」

     伏し目がちにそう言われ、思わぬ要求に可愛いと思ってしまった。「ええよ、そんくらい」と承諾すると、掌ではなくがっちりと手首を掴まれる。

    「……なあ角名。手ぇ、握るんやないん?」
    「んなこと言ってねぇだろ。……まだ、殺されない保険かけとかないと、怖い、から」

     ごめんと小さく零す角名の額に触れるだけのキスを送れば、パッと目線を上げるので綺麗な瞳がよく見える。不安そうな顔は俺がさせているのに、そんな表情もええなと思っている俺はやっぱり人でなしかもしれない。俺に嫌われるのが怖いと思ってくれているのだろう、なんて初心で可愛いのか。きっと今俺は、とても締まりのない顔をしているのだろう。好きなやつに特別に想ってもらえるのが、こんなに嬉しいなんて知らなかった。
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