I wish your happiness from my heart. 数日前、飛脚が文を持って長屋へ来た。その差出人は情人の福沢で、内容は『十二月二十五日に勝邸へ来てくれ』との事だった。
また後学の為と理由をつけて拝借を手伝わされるのだろうか、と想像しながら、積もる雪を踏みしめて指定された場所へ向かった。
「この有り様は一体……」
勝邸に着き、いつも彼の居る部屋の襖を開けると、そこは地図や巻物、書物にその他諸々が乱雑に散らかった光景が目に飛び込んできた。
あまりにもしっちゃかめっちゃかな様子に、挨拶もせずただ驚いて立ち尽くしていると、複数ある山積みの書物の後ろから隠し刀を呼びつけた張本人が顔を出した。
「も、もう来てしまいましたか」
ここに来いと文を送った人間が言うとは思えない発言に、困惑の色を隠せない。
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