バッドエンドの続きを「なに座り込んでんだよ」
ばくばくと煩い心臓の音の中に清涼感のある鈴の音が響いた。
振り返らなくてもわかる。だってぼくはそのひとのことをよく知っているから。
……不本意ですけど。
ぼくは巽先輩とのライブに備え、ひとりになりたいと言って講堂の舞台袖から離れた。だから今いるところはどこか非常階段の隅である。誰も通らなそうな場所を選んだから。
巽先輩にはちょっと外の空気を吸ってくるだけ、と言い残して。
「なんですか……。見ての通り、ぼくは今忙しいのですよ」
「忙しいんなら座り込んでる場合じゃないだろ。具合でも悪いのか」
「そ、そんなことないのです。ぼくは体調管理も完璧なのです」
首から、水滴がつつーと流れて落ちていく。熱くなっている全身に対して、その汗は冷たい。熱さと冷たさのコントラストが気持ち悪い。
3008