Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    YUKIMERO_HMR

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 1

    YUKIMERO_HMR

    ☆quiet follow

    ジュン要。昔お兄ちゃんと乗ったメリーゴーランドのことを思い出す要くんとジュンくんの話。かきかけ。

    #ジュン要
    junShaku

    【ジュン要】そういうところもかわいいよ ゲームセンターに行きたいです、なんて世界一ワガママな同級生にお願い(命令)されて学校から電車で十五分程揺られた栄えた場所にやってきた。ワガママな同級生、十条要はあまりこの辺には来たことがなかったのかショッピングセンターに入るとキョロキョロと周りを見渡していて面白かった。

    「さざなみさざなみ、こんなところにメリーゴーランドがあります!すごい!」
    「あ?……ああ、そういや昔乗ったことあったなぁ」

    小さい頃、恐らく幼稚園とかその頃だと思う。夏休みで人が沢山いたけれど乗りたかった馬に乗れて喜んでいたような気もする。懐かしいな、なんて思っていたら隣にいた十条に服をくいくいと引っ張られる。まさか、と思ってゆっくりと後ろを振り返るとはちみつ色の瞳がキラキラと輝いていた。うそだろ、ちょっと待てよ。頼むからやめろ、なんてオレの願いがこのアホに届くわけなかった。

    「ぼくはメリーゴーランドに乗りたいです」
    「はあ!?お前アホか!?」
    「アホではありません!乗りたい、乗りたいのです!」
    「あれはもっと小さい子が乗るもんだって!ほら見ろ、年齢制限書いてるだろ」

    案の定、乗りたい乗りたいとギャアギャア騒ぎ出した。今はフードコート近くでテーブルに座って食事をしている人たちがどうしたんだと言わんばかりにこちらを見つめてくる。見なくていい、恥ずかしさで死にそうだから。
    とはいえ、このまま騒がせておくのも駄目だと十条の手を引っ張りメリーゴーランドの前に置かれている説明書きを指を差す。そこには『15さいまでのおともだちがのれます!』とでかでかとポップな字体で書かれていた。
    オレたちは既に高校一年生、しかも二人して誕生日は迎えていて16歳になっているのだ。そのことに気が付いた十条はなぜだか知らないがオレの服の裾をぎゅっと掴んできた。さっきとは違って全然口を聞かない。

    「……どうしたんだよ、黙りこくって」
    「……めりーごーらんど、のりたかったのです」

    ぐす、と鼻を啜る音がして驚いて俯いた顔を覗き込む。泣いてはいなかったけどギリギリ、という感じで目の縁に涙が溜まっていた。そろそろ溢れそうなレベルで。オレはぎょっとして持っていた学生鞄の中からタオルを取り出して目元を拭ってやる。学校にいる時に普通に使っていたやつだし、普段の十条なら「汚いのです!」なんていって絶対に近付けることすらさせないのに今は大人しくしていた。
    涙が零れることはなかったけど、変わらずぐずぐず鼻を鳴らす十条にオレはどうすっかなと頭を悩ませた。どうしてこうもメリーゴーランドに拘るのかがわからず、いつものうるさい十条がいないことにもモヤモヤしていた。

    「……昔、遊園地に行ってお兄ちゃんとめりーごーらんどに乗ったことがあって楽しかったのです」
    「……おう」
    「でも、乗ったのはそれっきりです。お兄ちゃんは忙しいし、また遊びに行きたいなんてわがままなんて言ったら悪いこだって思われそうで、」

    ゆっくり、けれどハッキリと話し始める十条は少しづつだけど落ち着いたらしい、多分。お兄ちゃん大好きっ子なコイツはお兄ちゃんに嫌われることを何よりも嫌っているのはオレも知っていた。ことある毎にお兄ちゃんが、お兄ちゃんは、とドヤ顔だったり笑顔だったりでオレに話すのだ。多分、コイツのお兄ちゃんも同じぐらい十条のこと愛してるんだなってわかってオレも嬉しい気持ちになった、少しだけな。
    とりあえず理由はわかり納得はしたけれど、この後はどうしよう。このままゲームセンターに向かうべきか、このままなにか甘いものでも食べて帰るべきか。そう悩んでいると十条がゆったりとこちらを向いた。金色の瞳が涙でキラキラとしていて、綺麗だなんて思った。

    「…でも、でもさざなみなら、ぼくのわがままも聞いてくれるでしょう?」
    「……はあ?」
    「ぼくがこうやってわがままを言えるのは、きみだけなのです。それに、叶えてくれるのもきみだけです」

    だから、だから…とまたもや涙を浮かべ始めたことにあたふたしてタオルを押し付けようとしたら「汚いから要りません」とはっきりノーを言う十条にいつもの調子が戻ってきたと思った。それでも目尻に涙は溜まってたし、一度瞬きしたら赤く染まった頬につう、と一筋流れ落ちてしまった。まるでドラマのワンシーンだ。俳優か、アイドルみたいな綺麗な顔をしているから、現実味を帯びなかった。涙をぽろぽろと流してはいるものの、十条は大きく喚くこともなく怒ることもなかった。ただ、オレの服の裾ではなく手を握ってきた。

    「っ、さざなみ、ぼくとめりーごーらんと、のって、くれますか…」
    「……ん、いつ行きてぇの」
    「う、つぎのれんきゅう…?」
    「…ふ、はははっ、なんで、疑問形なんだよ。わかった、じゃあ再来週な」
    「……いいの?」

    たどたどしく紡がれる言葉に胸がぎゅっと締め付けられる。この図体だけが大きくなって、心は小さな子供みたいなアホな子から目が離せない。オカルトめいたことが嫌いで手を繋がないとお化け屋敷も、なんなら宿泊学習のトイレにも行けないのだ。
    わがままで馬鹿で気遣いなんて出来ないけど、めいっぱいの愛をただひとりに注ぎ、余った分は気まぐれにオレにくれる子。
    そのくせ、誰かに何かをもらう時にはすぐには受け取ろうとしない。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💯💖💖💖💖💖💖💖💖💖💖💖☺☺🙏🙏❤❤❤
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    hiehiereitoko

    DONEサンタクロースを知らない要と、そんなことも知らねぇのか……と思いつつ自分にも来たことがないから「いい子にしてるといいらしいっすよ」と曖昧で語気が弱まっていくさざなみのクリスマス話。
     はいはい。あんたはいい子だよ。オレが保証する。
     未来軸。さざなみ、要両方とも19。退院してふたりで過ごしている。Merry Xmas
    過去も想い出も一緒に食っちまおうぜ「さざなみ、この赤いひとよく見るのですけどクリスマスと何か関係あるんですか」

     これを言われたとき、オレは古典的にずっこけそうになった。

     季節はすっかり冬で、気温は一桁台が日常化していき、吐いた息がすっかり白くなった12月。
     リハビリがてら散歩というか。気取った、少しの期待を込めた言い方を許してもらえるのなら、デートしていたときのことだった。
     
     街中はいつのまにか赤や白、または緑に彩られ、あたりには軽快なクリスマスソングのイントロが流れている。夢みたいに平和そのものの世界だった。
     
     そんななか、デフォルメされたサンタクロースを指しながら要は不思議そうな顔をしていた。
     
    「嘘だろ……」
    「今すごく失礼なこと考えましたね。さざなみの考えることくらいぼくにはお見通しなのですよ」
    3464

    recommended works