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    藤 夜

    成人⬆️基本は夏五!書くのは夏五!!ほのぼのいちゃいちゃを日々妄想中^ ^

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    藤 夜

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    呪専
    もやっと灰原に嫉妬しつつも、自販機の前で後輩たちと楽しい夏のひとコマ。間接キッス!
    GEGO DIG. SUMMERでpixivにて展示した短編集より。

    #夏五
    GeGo

    【橙】 回し飲み いい加減陽が暮れてもいいんじゃないかという時刻になって、ようやく燦々と所構わず照りつけていた太陽が傾き始めた。それでも猛暑日を記録した気温は夕方になっても一向に下がる気配はない。せめて安直に腹の中から涼を取ろうと自販機の前に立ち止まるのが日課になっている。
     無料にしてくんないかな、この自販機。小銭持ち歩くの面倒なんだけど。
     そう思いながら、呪術高専の学生になってから自販機でジュースを買うことを覚えた俺は、からからと小銭を入れて、定番になりつつある『ファンタオレンジ』のボタンを押す。
     後ろから伸びてきた腕が、同じように小銭入れに硬貨を入れると、こちらも定番になりつつある、ブラックコーヒーを押した。
    「苦くねぇ、コーヒーなんて」
    「そんなことないよ。疲れた頭もすっきりするし」
     すっきりしなさそうな髪型で何言ってるんだと思いながら、ハーフアップのお団子に視線を移した。ひとつに縛り上げた方が、絶対涼しいやつじゃん。
    「ふ~ん」
     気のない返事をすると、風鈴の音色のような清々しさで訊かれた。
    「悟もひと口飲んでみるかい」
    「……。 ひと口だけ、傑のなら飲む」
     貰って問題なのは苦い味はなく、むしろ別のトコロにある。それでも、その誘いに抗えないのは。
     
     それって。
     間接キスってことだろう。
     
     今までしたことがなかった回し飲みも、傑と初めてした。人の飲みかけは気持ちが悪いと拒否反応を起こすことなく、存外楽しいものだと感じていたころに戻りたいぐらいだ。
     何気なさを装って、触れる指先すら嬉しくて、どうしちゃったんだろうと我ながら呆れ果てる。
     先ほどまで傑の唇が触れていた缶の口元に、そっと己の唇を押し当てる。腕を伸ばせば届く距離で目を細めて見守るさまは、硝子が揶揄うようにママ味があるのは否めない。
    「マズくはないけど、苦いな」
    「悟がお子様舌なんて、意外だったけど、可愛い所もあっていいんじゃない」
    「べつに、かわいかねーしっ」
    「ふふっ、そういうトコだよ」
    「なんだよ、それ」
     ふざけ半分で手を出そうとしたところで、体力が有り余っていそうな明るい声が聞こえた。
    「夏油先輩、五条先輩、お疲れさまですっ」
    「灰原も、お疲れさま」
    「いいですね、冷たい飲み物。僕も何か飲もうっと。夏油先輩飲んでるコーヒー、おいしいですか」
     きらきらと目を輝かせて、珍しく裏表のない陽キャラの後輩は、いいヤツだけど、傑に懐きすぎだ。
     俺から戻された缶に口を付ける姿をちらちらと見てしまうのは、やっぱり間接キスって言葉が浮かんでしまうからだ。こくりと喉仏が動くさまさえ、目を追ってしまうのだから、ほんと、無駄に色気を兼ね備えているのはどうかと思う。
    「悟は苦いって言うけど、おいしいよ。ひとくち飲む?」
    「えっっ。ダメ」
    「えっっ、いいんですか。おいしかったらコレにします」
     同時に放たれた初めのひと言は、見事にハモった。続く言葉は正反対だったけれど。だって、灰原、傑と間接キスじゃん。そんなのダメに決まってるだろ。咄嗟に浮かんだ悋気は口にする前に、慌てて誤魔化すように口を付けたファンタオレンジと一緒に飲み干した。
    「どうしたの、悟。やっぱりもう少し欲しかったかい。ちゃんと残して貰うよ」
     小首を傾げて怪訝そうに尋ねられ、穴があったら入りたいって、こんな気分の時に使うのか、なんて、知りたくもない思いに駆られる。ぶんぶんと首を横に降ると、傑の顔が横に流れる。
    「いいよ、灰原、貰えよ。苦いから」
    「いいんですか、五条さん、もう少し、貰う予定だったんじゃないんですか」
    「別にいーよ。あっ、でも、後でもうひと口」
     ぶっきら棒なトーンでぷいとそっぽを向いたのは、不貞腐れたのだと思われても構わない。ただ、恥ずかしくて火照りそうな顔を晒したくないだけだ。
    「それでは、遠慮なく」
     灰原が口を付ける瞬間は、やっぱり見たくなくて、心、狭すぎじゃね、俺、と半分情けなくなりつつ、顔を背けていると、後輩とは思えない老け顔の七海までやってきた。
    「ななみー」
     一瞬、面倒くさそうな表情を浮かべたものの、諦め顔でこちらに足を向ける。
    「美味しかったです。ごちそうさまでした。僕もこれにしますね」
     満面の笑みで戻そうとした缶コーヒーを持った腕が止まり、くるりと半回転して俺に視線を合わせ、真正面に顔を向けた。
    「五条さん、飲みますか」
    「傑の後でいい」
     灰原と回し飲みしたいワケじゃない。傑とが、いい。傑と俺だけがいい、けど。
    「先輩たち、いつも仲良しですもんね。七海、僕たちも見習わないと」
    「私は、適度でいいです」
     灰原につられたのか、笑えば年相応になる七海も加わり、自販機の前でくだらない話で盛り上がる。そして、戻った冷たい缶を口元に運び、当たり前のように渡す傑から、あまり飲めもしないコーヒーを受け取る。
     俺だけがいい、けれど、こんな時間も悪くないと、夕日に照らされ始めた三人を瞳に映しながら、苦い筈のコーヒーを口に含むと、微かに甘さを感じて、傑の肩を小突きながら声を上げて笑った。
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    藤 夜

    DONE生徒たちのクリスマス会からの、ふたりだけで、一緒に過ごす、しあわせな時間。
    離反ifのクリスマス短編集、テーマはキスのひとりアンソロです(笑)
    キヨシキョシ 悟視点 
    【雪が融けるまで725秒】にあわせて支部に掲載したお話より再掲
    ◆五◆ 好き クリスマスケーキにシャンメリー、ケンタのチキンをメインにデリバリーのデリカが所狭しと並んでいる。悠仁と恵が飾り付けたのか、壁や天井に星を始めとした色とりどりのポップな装飾がなされ、楽しげな雰囲気満載だ。
    「先生も食べていけばいいのに」
     当然だと言わんばかりに声を掛けてくれるのは優しい悠仁ならではで、当然嬉しくもあるけれど、それはそれで少々困る時もある。
    「こういうのは学生だけの方が盛り上がるよ、ね、憂太」
    「ええっと、でも先生も」
    「気を遣うことないって。どうせこいつはさっさと帰りたいだけだろ」
     同じく優しさの塊と言いたいところではあるけれど言い切れない乙骨が、助けを乞うように視線を向け小首を傾げて微笑むと、隣にいた真希に、冷ややかな視線と共にばっさりと切り捨てられた。それでも目の奥が笑っているので、僕たちふたりの様子を見慣れた彼女たちは、またかと呆れているだけだろう。憂太に頷いて貰う前に角が立つことなく帰れるからいいけれど。
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    藤 夜

    DONE離反ifのクリスマス短編集、テーマはキスのひとりアンソロです(笑)
    教師if 伏黒視点 
    例年別々に過ごすイブを、珍しく伏黒姉弟と一緒にケーキ作りをする夏五のお話
    【雪が融けるまで725秒】にあわせて支部に掲載したお話より再掲
    ◆三◆ スカイブルー「それじゃ、僕と一緒に恵たちとケーキ作ろうぜ」
     故あって保護者の真似事のようなことをしている姉妹が私にはいて、毎年クリスマスには彼女たちと一緒にケーキを作ってささやかなクリスマス会をし、サンタクロースの真似事をしていた。それが今年は、
    「私たちだけで作ったケーキを夏油様に食べて貰いたいから準備ができるまで他所のお家で遊んできて」
     と言われてしまった。成長が喜ばしくもあり、寂しくもあり、ならば非常勤として働いている高専で事務仕事を片付けようと思っていた所に、悟に声を掛けられた。
     彼にも保護者と言うより後見人として面倒を見ている姉弟がいる。こちらはクリスマスに一緒にいても鋭い目つきで邪険にされるそうだが、それは表面上だけで、それなりに楽しんでくれているみたいだから、と毎年ケーキやらプレゼントやらを携えていそいそと出掛けていく。紆余曲折があった上でクリスマスは一緒に過ごしたい間柄になったにも関わらず、優先すべき相手がいることに互いに不満を言うことはない。私はそんな悟だからこそ大切だし、悟だって私のことは承知している。それでも世の浮かれたカップルを見れば羨ましくなるのは当然で、イブじゃなくてクリスマスに一緒に過ごすようになった。
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    藤 夜

    DONE離反ifのクリスマス短編集、テーマはキスのひとりアンソロです(笑)
    教師×教師 虎杖視点 
    クリスマスプレゼントにまつわる惚気のひと幕

    【雪が融けるまで725秒】の開催、おめでとうございます&ありがとうございます♪
    ひと足先にサンプルがわりに第1話を掲載します^^
    ◆一◆ 久遠「しょうがない、伏黒が迎えに来るまではここで寝てなよ」
     そう言って家入は空いているベッドを指差した。申し訳なさに仕事は、と問えば、
    「仕事納めはまだ先だから、私のことは気にしなくてもいいよ」
     積み上がった書類の奥で目元を細めて頷かれた。閉じたカーテンの向こう側にあるベッドに寝転ぶと、冷えたシーツが火照った肌に心地よく、横たわれば楽になった体に、疲れていたのだと実感した。
     クリスマス明け、最後の任務に出掛けたところでやけに暑いと感じたら、伏黒に思いっきりどやされた。どうやら珍しく風邪を引いたらしい。ただ、風邪なのか、呪霊に中てられたのか、イマイチ判断がつきかねるからと、怒鳴った伏黒に連れられてやってきた医務室で様子見と相成った。まあ、伏黒が俺の代わりにまとめて報告書を作成して、提出してくるまでの間、寝て待っていろ。と言うのが正しいのだろう。年末だから年内に提出しとけって言うなら、こんな年の瀬に駆り出さなくてもと思わなくもないけれど、年の瀬だからこそ、刈り取れる危険は摘んでおけと言う理屈も当然理解はできる。猶予があるからとクリスマスに予定を入れられなかっただけで、御の字なのだろう。
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