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    なりひさ

    @Narihisa99

    二次創作の小説倉庫

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    なりひさ

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    ガンマト。マトの体を乗っ取ったガンガ

    #ガンマト
    cyprinid

    乗っ取り「大丈夫ですか、マトリフ!」
     巻き上がる砂塵の向こうで蹲るマトリフに向かって叫んだ。アバンは剣を離さずにあたりを窺う。魔物の群れは不利を悟って引いていったが、まだ油断はできなかった。
     やはりこの森はどこかおかしい。森に入って間も無くロカとレイラとも逸れてしまった。そしてそれを狙ったような魔物の群れの奇襲。魔王の影響を逃れて穏やかになったはずの魔物たちが、あれほど凶暴化するのは何か理由があるはずだ。アバンたちは森の瘴気のせいか身体が思うように動かず、なんとかマトリフの呪文で魔物を追い払った。
    「マトリフ?」
     立ち上がったマトリフは俯いたままだった。その横顔に違和感を覚える。どこか冷徹さを感じる表情のマトリフがこちらを見た。
    「勇者か」
     マトリフの声にアバンは目を険しくした。先ほど感じた違和感がどんどん大きくなっていく。アバンは剣を握り直した。
    「マトリフではないな」
     マトリフは先ほどまで確かにマトリフだったはずだ。だが今ここにいるのは、マトリフの身体を借りた別の人物だ。意識を乗っ取られたのかもしれない。
     するとマトリフは口の端に笑みを浮かべて眉間の間に手をやった。その仕草は眼鏡を押し上げるときの動きに見える。表情とその仕草は、アバンにも見覚えがあった。
    「さすが鋭いね。ハドラー様がご執心になるはずだ」
    「……ガンガディアですね」
    「いかにも。大魔道士の身体は預からせて貰ったよ」
     浮かべる笑みはマトリフのものとは違った。既に死んだはずのガンガディアの意識が、なぜマトリフに乗り移ったのか。
    「マトリフを返しなさい」
    「それはできない」
     マトリフの身体を借りたガンガディアは手を上げると火炎球を作り上げる。その大きさと熱量にアバンは一歩後退った。
    「さすが大魔道士の魔法力は素晴らしい。君もそう思うだろう」
     しかし放たれた火炎球はアバンを越えていった。アバンの背後にいた魔物が断末魔を上げて燃え上がる。討ち損なった魔物がまだ一匹残っていたらしい。
    「君に危害を加えるつもりはない」
     マトリフの意識を乗っ取ったはずのガンガディアは、どこかつまらなさそうに言った。そこに邪気は感じられない。むしろ、子どもが親からの言いつけを渋々に守っているかのような、億劫さが滲んでいた。
    「私を助けてくれたのですか」
    「そうしないと後で大魔道士に怒られるだろうからね。この身体を預かっている以上は、それなりの事をしなくては」
    「……無理矢理にマトリフの意識を乗っ取ったのではないのですか」
    「ふふ、おかしな事を言う。そんな事が出来るのなら、あの戦いで私は大魔道士に負けはしなかった」
     自嘲するガンガディアに、アバンはようやく剣を収めた。
    「マトリフが自分の意思で意識をあなたに譲ったというのですか。そもそも、あなたはなぜ生きている」
    「話せば長くなる。あの戦士や僧侶を探しに行ってくれないか。どうせ説明するなら一度に済ませたい」
    「あなたは一緒に行かないのか」
     するとガンガディアは突然その場に座り込んだ。
    「……疲れてしまった。あの呪文でこれほど疲弊するとは、これほどまで体力に差があったのだな」
     マトリフの身体を借りたガンガディアは深く息を吐いた。デストロールの身体で生きてきたガンガディアにとって、人間の老人の身体はあまりにも勝手が違うのだろう。
    「しかし、今の状態のあなたを残して二人を探しにはいけません」
    「ならばあの二人をここへ呼べばいい」
     ガンガディアはひとつ息をつくと、空に向かって手を伸ばした。爆裂呪文が放たれる。呪文は真っ直ぐ空へと伸びてから、四方八方へと分散して爆発した。激しい音と光は森にいる者の注意を引いただろう。
    「救難信号の代わりですか」
    「他に集まってくる魔物がいたら相手を頼むよ。どうも人間の身体は使いづらくていけない」
     ガンガディアは疲れたように手で顔を覆っている。そして独り言なのか「やはり大魔道士は素晴らしい」「この身体であれほどの戦いができるとは」などと呟いていた。
     程なくしてロカとレイラがやってきた。魔物が集まるかと心配していたが、呪文の威力に怯えたのか近寄っては来なかった。
    「おい、大丈夫なのかマトリフ」
     ロカは座り込んだマトリフを見るなり駆け寄った。
    「待ってくださいロカ」
     アバンの制止より先にロカの手がマトリフの肩に触れた。心配そうに顔を覗き込もうとしたロカに、マトリフの手が伸びて、ロカの手を払った。
    「気安く触れるな」
    「え?」
    「大魔道士に気安く触れるなと言ったのだよ。それとも大声で叫ばなければ君の耳には届かないのかね」
    「え、なんだよマトリフ。どうしちまったんだ」
     ロカは混乱したようにマトリフを見つめるが、そこにいるのはマトリフの身体を借りたガンガディアだ。ガンガディアは不快そうに顔を歪めている。アバンは慌ててロカの手を押さえた。
    「これには訳があるんですよ。これで話してくれるんですよねガンガディア」
    「ガンガディア? なに言ってんだよアバン、マトリフだろ」
    「静かにしたまえ。これから説明をする」
     ロカが眉を顰めてマトリフを見る。そしてその口調に覚えがあったからか、驚きに口を大きく開けた。
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