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    なりひさ

    @Narihisa99

    二次創作の小説倉庫

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    なりひさ

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    🟥👀事後

    #常貞

    朝が来るまでに「部屋に戻ります」
     囁くように告げられた常興の声に、貞宗は気怠い腕を伸ばした。触ろうとした常興の手は闇夜に溶け込んで見つからない。二度三度と空を切るその手の動きは焦れた子供じみていたが、やがて暖かな感触に包まれた。常興のほうから手を取ってくれたらしい。
    「何か必要ですか?」
     常興の落ち着いた声が耳を撫でる。しかし貞宗は曖昧なことばしか返せなかった。先ほどの出来事の名残がまだ頭に霞をかけていた。このように激しく求め合ったのは久しぶりで、互いに遠慮も加減も忘れ、ただひたすらに相手をむさぼってしまった。
    「貞宗様?」
     いつもの副将の声音に戻ってしまった常興に、貞宗は少しばかり興を削がれた。つい先ほどまで、その声は貞宗を求める切実な響きを帯びていた。忠実で無欲に見える常興の奥底に潜む、抑えがたい欲望が垣間見る瞬間が貞宗にはたまらなく心地よい。それなのに、常興はその仮面をあっさりと戻してしまう。
     闇に馴染まない貞宗の目には常興の輪郭すら朧げにしか映らない。蝋燭の一つも灯さない常興の習慣が、いつも貞宗の心をくすぐった。貞宗は常興の顔をつぶさに見つめながら抱き合いたいと思っているが、常興はその視線に耐えられぬらしい。
     貞宗は再び手を伸ばし、指先で常興の頬に触れた。そのまま指を滑らせれば、わずかにざらついた口髭に触れる。それを頼りに身を起こして唇に触れた。しかし、熱が去った体はそれ以上は求めず、吐息を残して顔を離した。
    「まだ戻るな」
     貞宗は明確な理由もなく常興を引き留める。常興は迷うように沈黙していたが、やがて応えるように体を横たえた。その常興の肩に貞宗は身を寄せる。体は清めたが薄らと汗の匂いがして、貞宗は鼻先を常興の首筋へと埋めた。慣れ親しんだ匂いに自然と瞼が重くなる。遠慮がちな常興の手は貞宗のうなじを撫でた。
    「どうかされたのですか」
     常興の声は外に立つ見張りに聞かせぬように抑えられていた。掠れたその声も悪くはないが、もっと激情に駆られた声のほうが貞宗が好きだった。
    「まだそちと離れとうない」
     常興に触れていない皮膚が冷えてきた。このまま眠りたくて貞宗は目を閉じる。
    「そんな甘え方、よしてください。明日に響きますよ」
    「ふふ、もう一度とは言っておらん。だが、たまにはそちの横で朝を迎えたい」
     貞宗は囁きながら、意地悪げに付け加えた。
    「もっとも、そちが望むのなら、もう一戦やらぬでもないぞ」
     その言葉に常興は息を吐くように笑う。
    「先ほどは、もう無理だと仰っていたではありませんか」
    「あれは勢いで出た言葉ぞ」
     貞宗は深い眠気に囚われつつ言葉を紡いだ。常興の胸に抱かれるこの感覚は、まるで揺籠の中にいるようだった。だが次の瞬間、常興が貞宗の耳元に口を寄せた。耳たぶに柔らかな唇が触れる。
    「あれは随分とお可愛らしいかった」
     その言葉には、ほんのりと欲が混じっていた。貞宗の首筋に添えられた手が、次第に力を増していく。貞宗は、ふと笑いながらつぶやいた。
    「やはり、若いな」
     しかしその言葉も、常興には届かぬようだった。腰を引き寄せられ、眠気が薄れていく。
    「誘ったのはあなたですよ」
     常興の声が静かに響き、貞宗の唇に再びその唇が重ねられた。その口付けの間に、反論の余地は残されていなかった。
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