「たくさん出しましたね」(ヒカテメ)「ん」
テメノスが緩慢な動作で身体を起こす。服はすべて脱ぎ捨てられ、生まれたままの姿の彼の白い素肌は外気に晒されている。
「たくさん、出ましたねぇ」
身体を見下ろしながら、テメノスがそうつぶやく。掠れた声で少し語尾が伸びていて、呆れも滲んでいる。
「すまない」
「いいえ。…許す、と言ったのは私ですし……」
テメノスの自分よりも白い肌は、情事の名残を残してほんのり赤らんでいる。そして、その美しい人は今は白濁で汚されている。汚したのは、紛れもない自分である。
『今日は何をしても許します、好きにしてもよいですよ』
テメノスの発した言葉、情事の前の睦言はあまりにも甘美な誘惑であった。事が始まって、茹った頭でふと浮かんだのはテメノスを汚してみたい、という自分の歪んだ欲であった。
好きにしていいと言われた、しかしそれはあまりにも何度か頭の中で浮かんでは消えていく欲望と理性。
「あっ」
思い切り、熱はテメノスの顔や身体へと吐き出された。白濁としたものはテメノスの身体を汚した。その姿に、自分は酷く興奮してしまった。
「それにしても、べとべとです」
着いた白濁を、テメノスは手で拭う。冷静になってみれば、なんてことをしてしまったのだと。明るくなった部屋の中で見る自身の吐き出した熱とテメノス自身の体液に塗れた、汚されたテメノスはあまりにも目に毒であった。
「んっ」
赤い、毒々しさすら思わせる舌が唇から覗く。あえかな声を漏らして、顔に飛び散るヒカリの熱を手で拭っては、テメノスはちろりちろりと舐めていく。
妖艶な瞳をし、蠱惑的に微笑むくせしてその動作は幼子のようにも見えて酷く不釣り合いであった。
「ふふ、見てください」
ぐちゅ、と卑猥な水音が肌と肌と合わさった部分から発せられる。足を動かし、太ももあたりを見ながらテメノスはヒカリを誘導する。テメノスの股の間から、受け止めきれなかった白濁としたヒカリの欲が、テメノスの白い足を伝って零れ落ちていっている。
「たくさん出しましたね」
愉快そうにころころとテメノスは笑う。あちこちべとべとだと呆れながらも、そう彼は笑うのだ。
「ヒカリ、あなたがこんなことを望むなんて、意外過ぎました」
たまに、ならいいですけど。でもやっぱり気持ちはよくはないんのでちゃんと、綺麗にしてほしいです、とそっと耳元で囁かれる。
その声は熱を帯びていた。
「テメノス…」
そなたも興奮しているのか。ぐちゅ、とその最奥に指を指し込んで、そっと掻きだす。
「もっと、ちゃんと、綺麗にしてください。ナカ、まで……」
お願いします、と。切なげに股を摺り寄せ、こちらに枝垂れかかる恋人をさて、風呂にでも入れてやろうかとヒカリはその身体をそっと引き寄せて横抱きにした。
「風呂に共に入ってもよいか?」
「ふふ、この状態で聞きます?」
まぁ、そこがあなたらしくて私は好きですけどと、テメノスは笑った。