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    ことじか

    @kotojika
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    ことじか

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    タイトル通り。幻覚を見せる魔物と対峙したテメノス。思ってたんと違う話になった。またヒカリverも書きたい。

    幻覚を見せる魔物と対峙したテメノスその魔物を見たのは昔のことだった。
    昔々、子供の時分にその魔物が出るという街道を通りがかった時に遠くに遠くに見た。
    それは二本の角を持つ、馬のような魔物で。しかし、馬より遥かに大きい。
    そして、通常種とは違うその特殊な個体が鬣の色が真っ白とされる。伝承にある通りの姿なら天の使いかと思われるほどの美しさだという。
    しかし美しいとされるその魔物は見るものによって姿形を変えるという。
    幻覚を見せるのだ。見る人が大事に思っている者や想い人の姿を見せるという。
    この魔物が出るところでは死者と会えるという噂が流れることもある。
    テメノスは、教皇とロイと巡礼の旅の最中にその魔物を見た。
    魔物だという生き物は遠く遠く離れたところにいてただの白い馬にしか見えなかった。
    教皇はテメノスとロイに魔物の特性とそれに纏わる伝承を教えてくれた。
    「なににも、見えませんね」
    「そういうこともあるだろう」
    ただ、あれはただの幻覚だ。なにか見えたとしても関係はないだろうと。教皇はそう笑った。
    テメノスはぼんやりと自分が見るなら教皇やロイの姿なのだろうかとそう思った。



    魔物退治を頼まれてやってきたところには幻覚を見せる二角獣が数匹いた。
    天の使いだとまことしやかに囁かれるのは死者を見たという者とその魔物の真っ白な穢なき美しい姿を見た者が、神を連想したからだろう。
    実際はただの魔物なのだ。
    それはよくよく理解している。
    遥か昔に見たときはなんの姿にも変化しなかった。
    その魔物はテメノスの前に立ちはだかる。
    (幻覚を見るなら、その姿は教皇かロイかと思ってましたが……)
    もう亡くなってしまった大切な人と、行方知れずの友を想う。
    目の前にその人はいた。
    風に靡く漆黒の髪、紅の服。黒曜石のような瞳にはテメノスが映る。
    テメノスのよく知る姿と寸分の違いもない。
    ヒカリが目の前にいた。
    しかし気配が、違う。テメノスはそれを魔物だとはっきりと頭で認識している。
    「不思議ですね」
    なぜその姿を見せたのだろうと。他人事のように独りごちる。目の前に立つ人は、ヒカリそのものだ。端正な顔立ちも纏う雰囲気も彼そのもの。
    柔らかな笑みを浮かべていつものようにこちらに微笑みかけてくる。
    杖を構えて、詠唱を始める。
    『テメノス』
    霞がかったように頭に響く声。ヒカリ…? いや、彼はこんな声で私を呼ぶだろうか。
    あたりに光が満ち、遍く照らし、最後には大きな音とともになにもかも消し飛んだ。



    「随分と派手にやったね」 
    口笛を拭きながら言ったのはソローネだろう。
    神聖魔法を使って魔物は消し飛ばした。
    荒い息を整えながら、回復のために果物を口にする。
    あぁ、忌々しい。こんなことで自覚させられたことにも、動揺した自分にも。
    神聖魔法を使わなければ到底倒せそうにもなかった。
    そうでなければ踏ん切りがつかなかった、なんて。
    気づきたくなかった。
    「幻とはいえ、あまり気分の良いものではないですね」
    誰にも聞こえないように呟いて、テメノスはひとつため息をついた。
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    孤児時代、来る日も来る日も飢えと戦っていた。その名残か現在まで食は細いまま。汁菜を好み、口をつける。ひとくちは小さく、消化の速度も遅い。仲間内では比較的ゆっくりと食事を摂るほうだった。最年長のオズバルドと並び、互いにぽつりぽつりと本の内容を確認したり、時には無言で終えたりもする。

    旧友を失って、恩人を失った。その事がより一層食欲の減退に拍車をかけていたのだが、キャスティやオーシュットがやれ健康だの干し肉だのと構うものだから、観念してゆっくりながら量を摂ることに専念していた。
    皆、心配してくれているのだ。その心に報いたい。だが困ったことに胃袋はスープ一杯で満腹を訴える。我ながらほんとうに小さくて辟易するが、こうなるともうひとくちも食べたいとは思えない。口に物を運ぶのが億劫になり、喉奥からははっきりとした拒絶が聞こえる。はあぁ、と深いため息をついて器に盛られた薄切りの肉を持ち上げては置くことを繰り返している。行儀もよくないので、今日のところはギブアップを宣言しようとした時だった。
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