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    かも@ねふぁ

    @ne_fa_hoya
    ネとファの間にある親愛にやられた新人賢者。だんだん箱推しになりつつある。

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    かも@ねふぁ

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    *いていな展示*
    「隣にいてもいなくても」、開催おめでとうございます。
    あまりに素敵なイベント名に触発されて、ネロとファウストが「隣にいない」話を書きました。ネロが死ぬ描写があります。また、原作よりかなり疎遠なので注意です(ゲーム内の彼らが私の想定を上回る速度で仲良くなってしまった)。

    #まほやく
    mahayanaMahaparinirvanaSutra
    #東の魔法使い
    wizardOfTheEast

     なにか、忘れている。
    「ネロ、ネロ!」
     ああ、そんなに呼ばなくても聞こえているよ。リケの声だ。出会った頃より、一段低まった声で、俺を呼んでいる。泣いているのか?誰がおまえを泣かせたんだ。おまえを泣かせる奴には、たとえおっかねえ北の魔法使いだろうと誰だろうと、一言言ってやらなければ気が済まない。
     頬に水が落ちてきて、閉じていた目を薄く開いた。やっぱりリケが泣いている。隣にはミチルの姿があった。リケを見守るようにしながら、こちらを気遣わしげに伺っている。
    「ああ、ネロっ……」
     よかった、よかったとリケが繰り返す。リケの両手に包まれた左手があたたかい。そんなリケに、ミチルはやさしく、しかしはっきりと告げる。
    「リケ、時間はあまり残されてません」
     思いを残すことが、ないように。その言い方じゃ、まるで誰か死ぬみたいじゃないか。リケは自らを落ち着かせるように深呼吸を繰り返し、覚悟を決めたようにこちらを見つめた。
    「ネロ、聞いてください」
     改まってどうしたんだ。もしかして、そうなのか。
    「これまで本当に、ありがとうございました」
     そうだ、死ぬのは俺だ。まどろみから目覚め、なにもかも思い出す。俺の魔力は尽きかけ、数日前からほとんど寝たきりになっていた。長い長い生が、終わろうとしている。
    「ネロはぼくに、数えきれないほど美味しいご飯を食べさせてくれました」
     そうだな、店に一番よく来てくれたのはリケだった。こちらこそ、ありがとう。
     魔法舎を出た後も、俺は相変わらず東の国で料理屋を営んでいた。少しだけ変わったのは、魔法使いだとバレてからも店を続けるようになったことだ。自分のことを少しだけ隠さずに生きるようになって、戸惑ったり居心地の悪さを感じたりもしたが、悪いことばかりでもなかった。魔法使いの面々が、ボトルキープしたり、祝いの席に店を選ぶようになった。ヒースクリフが当主を継いだときには、シノと二人でささやかなお祝いの食事をしに来てくれた。クロエが自分の店を開いたときには、西の魔法使いの面々が主催で、一夜貸切の宴が開かれた。そうだ、あのときは奇跡的に、賢者の魔法使いが全員揃ったのだ。何人かはもう、いない奴もいるけれど。そういうしがらみも、今のネロには案外悪くないものだと思えた。
     そういうことをしやすくなったのは、中央の国の改革の余波でもあった。リケもその中心となって動いている魔法使いの一人だ。
    「僕はネロに、ずっとずっともらってばかりで、まだ何も返せていないのに」
     俺の左手を包むリケの手に、ひときわ力が籠る。少しでも安心させたくて、その手を握り返した。
    「何言ってるんだ、そんなのいいよ。それに、リケはちゃんと俺の役に立ってる」 
     店にこだわりの竈を置けるようになったのも、集めた食器を手放さなくて済むようになったのも、リケが頑張ってくれたおかげだよ。
    「僕の力じゃありません。アーサー様や、×××××様のお力のおかげで、僕は……」
     ところどころ、だんだん聞き取れなくなってきた。やっぱり、何かがひっかかる。俺は何か、忘れている気がする。それはしかし、ささいな違和感でしかない。
    「ブラッドリーさんも呼ぼうとしたんですけど、すみません」
     それまで二人のやりとりを見守っていたミチルも、口を開いた。ブラッドは連絡がつかないそうだ。あいつらしい。
    「……そうだな、あいつはさびしがるだろうよ」
     ブラッドは何度死にかけてもしぶとく生き残り、しつこく店を訪れてはネロを勧誘していた。そのたびに俺は、どれだけ本気かももはやわからないそれを断り、ただうまい飯を食わせてやった。……あいつの最期を看取って、あとを託されるなんざ、まっぴら御免だからな。まんまと俺は、飯屋のまま終われる。だから、俺の勝ち逃げだ。ざまあみろ。
    「せいぜい長生きしろ。野菜も食え。そう、言ってやってくれ」
    「わかりました。ブラッドリーさん、泣くかもしれません、ね……」
     途中から、ミチルは泣き笑いの表情をした。ミチルとあいつは案外相性が良かったらしく、俺の知らない付き合いがあるようだ。ミチルが立派な青年になって体の成長を止めた頃から、心配するのはやめた。まぎれもなく大魔女チレッタの子であるミチルは、今やブラッドとも丁々発止と渡り合えているようだ。
    「ネロさん!」
     ふ、と急に気が遠くなる。ミチルが叫ぶ声もどこか遠くに聞こえる。
     石になったあとのことは、特に指示することもなかったが、この2人はブラッドに託すような気がした。あいつはきっと躊躇なく食うだろう。それでかまわない。この世に何も残さないのも、飯屋らしくて性に合っている。リケはひどく泣いているだろう、見なくてもわかる。しばらく落ち込むかもしれない。でも、ミチルがいてくれるなら心配ない。リケとミチルに寄り添われて、二人とも俺のために悲しんでくれて。こんなに穏やかで満ち足りた最期を迎えるなんて、想像すらしなかった。やり残したことも、思い残すこともない。
     もう2人の声も聞こえなくなって、なんだか急に、懐かしい記憶ばかりが脳裏に浮かぶ。盗賊団での暮らし、魔法舎に来てからのこと、賢者さん……。思えばあの頃から、俺の人生は大きく変わった気がする。なんだっけ、やっぱり何か忘れて……
     そうだ、礼だ。俺は誰かに、礼を言わなきゃいけないんじゃないか。友だちになってくれて、誠実に付き合ってくれて、ありがとう、と。瞼の裏に浮かぶのは、紫水晶の瞳の色。ついさっき聞いたはずの、よく知っているはずの名前が、出てこない。ああ、言い残したこと、あったじゃないか。やっぱり百点満点とはいかないのが、俺の人生らしい。未練と言うには、あまりにささやかだけれど。
     俺は苦笑し、そして、意識を手放す。


    とある料理店のフォークとナイフの会話
    『近頃来ないねえ、あいつ』
    『どいつのこと?』
    『ほら、黒いたっぷりの布に包まれた、いつも茶色のガラスで目を隠している』
    『ああ、そいつのテーブルには何度か当たったことがある。俺を扱う手つきはなかなか悪くなかった』
    『アンタは酒の席には非番がちだから知らないんだねえ。あいつはアタシのことしょっちゅう落とすよ。まったく酒が入ると途端にこれだから、“大きい生き物”ってやつはさあ』
    『お呼びでなくて悪かったな。じゃあ、そんな奴が来なくなってせいせいしたって、そういう話か?』
    『アタシはそれでいいんだけど、ご主人がねえ』
    『どうかしたのか』
    『いや、ご主人があんなに屈託なく楽しそうにしてるのって、奴と酒盛りしてるときくらいだからさあ。それこそ、アタシが床に落っことされてるってのに、それ見て笑い転げてるくらいなんだから』
    『確かによ、俺はテーブルから背中を眺めてるだけだが、カウンターで飲んでるご主人は上機嫌だよな』
    『まさに“フォークが転げても可笑しい”ってわけさ。あいつが来るようになって、ひとりで晩酌するのもほとんどやめちゃったみたいだし』
    『そう言やあ、ここ最近はそうだ』
    『床に落とされたって構わないから、また来ないもんかねえ』
    『あいつ、もしかして融けたのかな』
    『そうかもしれないねえ。ご主人も、なんだか元気がないようだし』
    『ご主人ほど俺たちのことを大切にしてくれるかたはそういないぜ。まめに磨いてくれるし、なんたって長生きだ。あの黒い布の奴も、長生きに見えたんだけどな』
    『案外ひょっこり来たりして。今晩あたりにでも……』
    『おっと、おしゃべりはここまでだ。ご主人に聞かれちまう』
    『はいはい。店が開いたらお行儀よくしますよって。ちなみにアタシは今日から百日以内に来る方に賭けるね。アンタは?』
    『俺たちが客の噂話ばっかりしてることが知れたら、きっと仕舞い込まれちまうぜ。そんな退屈なことはねえだろ。……じゃあ俺は三十日だ』
    『やれやれ、これじゃ賭けになりゃしないよ!』


     ネロが死んだという。お見舞いに行ってきますと言って飛び立ったリケが、しばらく戻らなかったことから、ファウストにはなんとなく察しがついていた。数週間かけてネロを看取ったあとは、しばらく南の国でミチルやルチルたちと過ごしたらしい。中央に帰還した彼は、すっかり元気とは流石にいかないものの、もうかなり落ち着いた様子だった。
    「報告が遅くなってしまって、すみません」
    「いや、いいよ。そんなことだろうと思っていた」
     きみに看取ってもらえるなんて、彼は果報者だな。そう言い加えたときだけ、気丈に振る舞っていたリケの両目に薄い膜が張ったのを思い出す。
     彼から聞かされたネロの死に様は、穏やかなものだった。遺言があったわけではないが、リケたちはブラッドリーに石を渡したらしい。妥当だと思う。あの男にはそれを受け止める度量も、義務もある。果たして彼がその石を食べるのか、ファウストには見当もつかない。だが、ブラッドリーならばきっと「正解」を引き当てるだろう。
     ネロと最後に会ったときのことを思い出す。昼間に街へ行く用があった日に、彼の店に立ち寄ってガレットだかキッシュだかを食べた。そのとき何を頼んだか正確に思い出せないことが、いまは無性に口惜しいことに思える。その日は忙しそうにしていたんで、ろくに話らしい話もせず店を後にした。美味しかった、また来る、とだけ。まさか最後になるとは思わなかった。まだ嵐の谷に暮らしていた頃のことだ。あの頃はそこそこ頻繁に顔を出していた。
     東の国を離れてからは、すっかり足が遠のいてしまっていた。元々、魔法舎に滞在する間だけの付き合いのはずだったのだ。それなのに、賢者の魔法使いの任を解かれてからもわざわざ店を訪れていたのは、ひとえに彼の料理の美味しさと、彼の作り出す空間の居心地の良さの賜物だった。むしろ、あの頃あんなに出向いていたことの方が、ファウストにとって驚くべきことだ。わざわざ手紙を出すほどの用事もないので、連絡を取り合うこともない。リケはたまに店を訪れていたようだから、彼から聞く話で元気にしているらしいことは分かっていた。本格的な窯を導入して、新メニューを考案中だとか、希少なハーブの自家栽培を始めたけど、うまく育たず苦戦しているとか。ああ、良いなあ、近いうちに行こう、来月こそは……と思っているうちに、結局随分と時間が経ってしまった。
     嵐の谷を離れたのは、中央の国で制度改革の手伝いをするようになったからだ。とは言ってもファウストはこの国で、何の役職にも就いていない。ただ、アーサーやリケが懸命に世界を変えようとしている姿を目の当たりにして、つい手を貸してやりたくなってしまったのだ。依然アレクのことは許していないし、呪い屋をやめたつもりもない。あくまで一時休業中という扱いにしている。ただ、アレクと彼らは別人だと、そう思えるだけの時間を積み重ねてきただけだ。かつて命を賭してでも成し遂げたかったことが、違う形でではあるが少しずつ実現しているのを眺めているのは、事実、快いものだった。それで、嵐の谷へ帰るのをずるずると先延ばしにして、今に至る。
     中央の宿舎に寝起きするようになって、もうかなり経つ。それに気付いて愕然としたのは、つい昨日のこと。文書管理官が代替わりしていた。ついこの間まで白髪混じりの背の低い男がいたはずの事務机に、若い女性が着座していたのだ。男に何処か似た面影を持つその女性に、前任者についてそれとなく訊ねると、その男は自分の父で、とっくに亡くなっていると告げられた。
    「あなたがファウストさんでしたか。父がよく話していました」
     まだ前任者が現役だった頃、ファウストは一時期、この文書館に連日通い詰めていたことがある。新しい法制案を作るために、現行の法制に至るまでの経緯を辿り直す必要があったのだ。あの時期は皆必死だった。彼女の父にも何かと手伝ってもらったのを覚えている。ちょっと待て、ということは、あれから30年、いやもっと経っているというのか。教団の解体がXXX年だから、ええと……
    「あははっ」
     ファウストがうんうん唸っていると、不意に彼女が噴き出した。一人で何をぶつぶつ言っているのかと可笑しく思ったのかもしれない。視線を向けると、現管理官殿はすみません、とさほど悪びれもせず言った。
    「いや、父から聞いていた通りだなって。ファウスト様の集中力はすごいんだ、文字通り時間を忘れてしまわれるんだぞって。ふふ、相変わらずお忙しくされてるんですね」

    (忙しい、と、文書官の彼女はそう言っていたか。)
     窓枠にゆったりと肘をついたファウストは、白み始めた空をぼんやり眺め、昨日のやりとりを思い出す。
     アーサーには是非城に、と請われたが、流石にグランヴェルの城に寝起きする気にはなれず、少し離れた場所にある官吏たちの宿舎の一室に仮住まいしていた。たまたま空いていたこの部屋は四階で、東向きの窓から夜明けの空がよく見える。こんなふうに夜明け前に目覚めてしまった日には、徐々に空が明るみ、活気ある中央の国が目覚めてゆくのを眺めて物思いに耽ることが多い。だが今日はとりわけ、嵐の谷で迎える夜明けが恋しかった。生まれ育った中央の、希望に満ちた強い朝の光はたしかに輝かしい。だが、東の国の夜明け前の、生きとし生けるもの皆が思わず息をひそめてしまうような静謐な美しさが、ファウストは好きだった。
     悪夢に苛まれがちな自分にとって、夜明け前が美しいと思える土地に暮らしていたことは幸運だったと思う。憂鬱な夜は、耐え忍べばいつか終わると頭で分かっていても辛いものだ。そんな終わりの見えない闇にも、いつしか澄んだ青が混じり始める。美しい谷の自然の輪郭が徐々に顕になってゆく。その時間がやってくると、ふっと凪いだ気持ちになり、だんだんと体に力が戻り始めるのだ。
    (もちろん、それでもダメな日というのはあるものだけれど。)
     そんなときでも、最後の最後でファウストを保たせてきたのは、自分はなんだかんだ生きる力が強いという確信だった。悪夢から目覚めぐっしょりと汗に濡れた体を抱え、いつまでこんなことが続くのだろうと吐き捨てたくなるとき、ふと声が聞こえるのだ。おまえは生きる力が強いのだから、だから大丈夫だと。その声は、知っている誰の声でもなかった。だが、そういえば、それを最初に言ってくれたのはネロだった。もう随分昔のことなので詳細には覚えていない。彼はそれを、何てことのない褒め言葉として発したようだった。当時は変わった評価軸を持った男だとしか思わなかったその言葉は、思いがけずお守りのように効果を発揮した。
     厄災の傷が癒えてからも、寝付きが劇的に良くなったわけではない。だが、ただ憂鬱なだけの時間を、呪うような、祈るような必死さでやり過ごすことは、徐々に減っていった。
     そのことを、ネロは、永遠に知ることはない。僕は彼に、何かを返せたのだろうか。嵐の谷でひとりで迎えるあの夜明けのような、静かに、当たり前みたいにそこにいて、他人のための一皿を作り続ける男。だけど、本当はそれが特別で稀有なことだと、僕らは皆知っていた。
     死者に直接何かを返すことはできないと、ファウストはよく知っている。それが善意であれ、悪意であれ。今の僕にできるのは、目の前でもがく若者たちが作ろうとしている未来を信じてやることだけだ。だけど、それでいいんだ、とあの男なら言うような気がした。礼なんか改ってされると、かえって照れ臭いしさ、と。それならファウストも、貰いっぱなしのそのお守りを、これからも堂々と持っていていいのだろう。
    (ああ、でもやっぱりもう一回だけでいいから、あのガレットが食べたいな)
     窓の外では、中央の空に日が昇り始めていた。思わず苦笑してしまうほど、眩しい朝日だ。そう遠くない未来に、自分はあの谷に戻るような気がする。だがそれは今ではない。
    「ファウスト様!」
     何か起こったらしい、遠くからの呼び声とともに階段をバタバタと駆け登ってくる音が聞こえる。少しづつ羽化していく最中のようなこの国は、こんな街外れの宿舎までもが活気に満ちている。ノックに応えて扉を開けると、馴染みの若い役人が肩で息をしていた。こんな早朝にすみません、と謝られるのを手で制する。
    「いいよ、起きていたから。僕に何か手伝えそうなこと?」
     いつも通りの一日が始まる。ガウンを羽織って、部屋を後にした。

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    かも@ねふぁ

    DONE*もちふた2展示*
    パス外しました。人生初のサークル参加だったのですが、とても楽しかったです。来てくださった方々、主催者様、ありがとうございました。

    現パロ、バウムクーヘンエンドのネファ。全年齢です。

    電気が点かない部屋のエピソードは友人の実体験です(許可得てます)。Gさん素敵なネタをありがとう。
    ウェディング・ベルは彼を知らない


    プロローグ

    「もしもし、ネロか?」
     耳にしっくりと馴染むその声を聞くのは、かなり久しぶりだ。「僕だ。ファウストだ」と簡潔だけど礼儀正しく名乗るのを聞く前から、もちろん電話主が誰かなんて分かっている。
     ファウストが電話をくれるなんて、珍しいことだった。彼が向こうへ移ってからもときどき葉書が送られてきていたので、連絡自体が途絶えていたわけではなかったけれど。こないだのは何だったか、たしか暑中見舞いの時季に届いたグリーティングカードか。いつも通りの彼らしく趣味の良い絵葉書に、二言三言メッセージが添えられているものだった。ときどき送られてくるそれらはしみじみと嬉しいもので、ネロは毎度欠かさずに返事を返す。といっても、洒落た絵葉書なんかどこで買えばいいのかも分からないし飲食業の身ゆえ時間もないので、短いメールでの返事だが。ともかく、声を聞くのは久しぶりのことだ。
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