朝も、昼も、夜も、チェズレイのメイクは崩れない。
例えば世の女性は、化粧は毎日落とさないとすぐに肌が荒れてしまうなんて言っていたけれど、彼にそういう懸念はないんだろうか。
「チェズレイの目元のそれって、メイク……だったよな?」
「ええ、よろしければ、触れてみますか?」
「え、いいのか?」
「他でもないあなたですから……触れてみたいなら、どうぞお好きに」
思わせぶりな嘯きにどきりとしたけれど、チェズレイに他意がないことはわかっている。
潔癖症のきらいがあるということは、本人からも聞いていたし、モクマさんからも言われていた。けれど、彼は僕に対しては、どれだけでも障壁を取り除く気持ちでいてくれるらしい。
許しを得た誘惑に抗えず、おそるおそる手を伸ばす。
897