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    はなむら

    @bond_bmb

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    はなむら

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    初期ル×ル出逢い編。気が向けば続くかもしれません。

    「……ニンジャジャン、好きなんですか?」

    ニンジャジャンのヒーローショー観劇で隣になったのは、お揃いの髪と瞳の配色を持ち、ジャケットをきっちりと着こなす男性。
    子供やその親が並ぶ中、お一人様の男性客というだけでも珍しいのに──自分の事は棚に上げておくが──隣に座る兄弟のような彼が気になり終演後に声をかけてみる。

    「ん?年は同じようなもん……かな。面倒だから、敬語はナシでいいかい?」

    こちらを一見する目は鋭いもので、探偵や同業者、もしくはマやヤのつく自由業のような匂いを感じ取る。直感的な警戒を出さないよう気をつけながら頷けば、彼は続きを話し始めた。

    「僕はヒーローものの作品が好きなんだ。ニンジャジャンは今回が初めてだったけど、とても楽しめたよ」

    元から気になっていたんだ、と軽く笑む姿に、同世代の同じ趣味を持つ仲間が出来たようで嬉しくなる。

    「僕もヒーローものが好きで、少し話をしてみたいと思ったんだ」

    「お誘いは嬉しいんだが、時間がなくてね。また今度でもいいかい?」

    頷けば、彼はジャケットの胸ポケットから名刺を取り出す。受け取り見れば名前とアドレスだけの簡素なもの。

    「……ルーク・ウィリアムズ!?」

    「何をそんなに驚いているんだ?どこにでもいる平凡な名前だが……」

    「僕も、ルーク……ルーク・ウィリアムズっていう名前なんだ!」

    いつでも携帯している身分証を見せると、彼……同じ名を持つルークも緑の瞳を見開き驚いている。

    「髪色も瞳の色も……名前も一緒なんて、とても他人とは思えないな。これで年まで一緒なんて言ったら……」

    ここまでいけば、答え合わせをしたくなる。

    「「25」歳」

    ピタリ賞。全僕がスタンディングオベーションだ。

    「ここは抱きしめて喜び合うところなのかもしれないが、時間が押してる。連絡待ってるよ、″ルーク″」

    もう一人の″ルーク″は名残惜しむように名を呼びながら立ち去る。
    こんな形で、彼と僕は出会った。
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    emotokei

    DONE #チェズルク版ワンドロワンライ
    第8回お題「海」お借りしました。
     ――潮騒の音が聴こえる。

     ミカグラは島だから、四方を海に囲まれている。
     それはもちろん知っていたのだけれど、夏場と違って肌寒さを感じる時期しか知らなかったから、あまり実感はないままでいた。DISCARD事件の捜査の合間、海へ足を向ける事はついぞなかったし、労いにとナデシコさんが用意してくれた保養地は温泉で、長い時間を過ごしたマイカの里は山あいだ。
     海沿いの街をそぞろ歩くことはあっても、潮の香りが届く場所には縁がないままこの土地を離れた。
     だからこうやって、潮騒が耳に届く庭先でぼんやりと涼む時間を過ごすことは初めてだ。僕はと言えば、休暇中の穏やかな時間を存分に楽しんでいた。
     久しぶりに訪れたミカグラは、ますますマイカの影響を受けているように見える。朱塗りの電柱にはびっくりした。小さな島で異彩を放つ高層建築が立ち並ぶ中、平屋や二階建ての慎ましやかな家が新たにいくつも軒を連ねていた。事件の直後には、ほとんど木造の家なんてなかったけれど、マイカの里のひとたちが少しでも穏やかな気持ちで暮らせるようにと、ブロッサムの人たちが心を砕いた結果なのだと、コズエさんが嬉しそうに話していたことを思い出す。
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    emotokei

    PROGRESS第9回お題「野菜」お借りしました。
    #チェズルク版ワンドロワンライ
     分厚い紙の束を取り出すと、つやつやとした様々な色合いが目に飛び込んでくる。
     グリーン、ホワイト、パープル、レッド、イエロー……派手な色が多い割に、目に優しいと思えるのは、きっとそれらが自然と調和していた色だから、なんだろうな。
     大ぶりの葉野菜に手をのばして、またよくわからない植物が入っているな、と首を傾げる。
     世界中をひっちゃかめっちゃかにかき回し続けている「ピアノの先生」から送られてくる荷物は、半分が彼の綴るうつくしい筆致の手紙で、もう半分は野菜で埋め尽くされていることがほとんどだ。時折、隙間には僕の仕事に役立ちそうなので、等と書いたメモや資料が入っていることもある。惜しげもなく呈されたそれらに目を通すと、何故か自分が追っている真っ最中、外部に漏らしているはずのない隠匿された事件にかかわりのある証拠や証言が記載されていたりする。助かる……と手放しで喜べるような状況じゃないよな、と思いながらも、見なかったフリをするには整いすぎたそれらの内容を無視するわけにもいかず、結局善意の第三者からの情報提供として処理をすることにしている。とてもありがたい反面、ちょっと困るんだよなあ。
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