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    bosscco

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    夢のなかで <オス→→アキ子供化夢オチ>

    #おすあき60min
    osuaki60min

    「あわわわわ、だだ、だれかいませんか!? 大変! 大変なんです!」
     常日頃から穏やかなウィルのただ事ではない声を耳にした俺とブラッド様は、思わず顔を見合わせた。二人してあわてて共有スペースに出ると、そこには何とも言い難い光景が広がっていた。
    「……オスカー、俺は幻を見ているのか?」
     眉間をつまみながらの絞り出すようなその質問に、俺は間を置いて首を振った。
    「俺もそう思いたいですが、残念ながら……」
     ありのまま言えば、こうだ。
    『鳳アキラの容姿に酷似した子供が、サウスセクターの共有スペース内を走りまわっている』
     この己の幻覚を疑いたい状況に対してただただ呆然としている俺たち二人の姿に気付いたウィルは、心底安堵した顔でこちらに寄って来た。
    「よかった、二人とも――こらアキラ! もう! 暴れたらだめだってば!」
     ウィルに捕まえられたアキラと呼ばれた子供は「んぎゃ! ウィルにくせに!」と声を上げた。
    「ウィル、まさか」
    「……はい、アキラなんです。この子」
     この冬に短パン半袖姿のわんぱく少年ことアキラ(小)は両手で抱えられたまま目を険しくしていた。機嫌が悪いときのアキラ(大)にそっくりだ。
     ウィルによると、どうもパトロール中に発見した珍しいサブスタンスの影響で、身体が小さくなってしまったらしい。中身も子供になってしまったので、慌てて連れ帰ってきたようだ。
     ようやく落ち着きを取り戻された様子のブラッド様は、大きくため息をついた。
    「あまりこの姿のアキラを外に出すのはまずいな……一時的なものだと思うが、研究部の人間に話をしてこよう。ウィル、サブスタンス発掘時の状況説明のために付いて来てくれるか」
    「はい! ……あの、オスカーさん、すぐ戻りますので、ちょっとだけアキラをお願いしますね」
    「……わかった」
     小さいアキラは未だに事態を把握していないのか、きょとんとしたままウィルの背を見送った。
    「なあ、ウィル、どこ行ったんだ?」
     子供になったアキラは俺のことを覚えていないようだ。心細そうに質問した。
    「……ウィルは、今日自分が見たことを説明しにいったんだ。心配するな。すぐ戻ってくる」
    「……ふうん? わかった!」
     あまり理解はしていない様子ながらも、少し元気を取り戻したのか、アキラはキッチンのほうへペタペタペタペタ裸足で走っていった。追いかけると、つま先立ちで冷蔵庫を開けて頭を突っ込んでいる。
    「……腹が減ったのか?」
    「のどかわいた! ……お腹は、今は”ちゅうぐらい”減ってる!」
    「……そうか」
     とりあえずコーラかオレンジジュースの二択を提示したら、アキラは少し迷ってコーラが選んだ。
     持ちやすい軽めのマグカップに注いで渡すと「さんきゅな!」と礼を言われた。
     コーラが入ったマグを持ったアキラは、そのまま共有スペースに向かって歩いていった。ソファに腰を下ろし、リモコンでテレビの電源を入れた。床につかない足を、ぶらんぶらんとさせている。
    「……いやに落ち着いてるな」
     思わず出た独り言に反応したのか、アキラはテレビからこちらに視線を向けた。
    「? だってこれ『夢』だろ?」
    「……夢?」
    「だって夢でもなきゃ、おっきいウィルなんているわけないだろ」
    「……」
    「夢だから、晩ご飯前だけどシュワシュワするやつ飲むし」
     なるほど。小さいアキラはこの現状を夢の中の出来事だと思っているようだ。無理もない。俺だって最初はブラッド様と二人して幻覚を疑ったほどだ。周りを頼りにする子供にとって、今いた世界がひっくり返るような信じがたいことだろう。
    『今は真実を突き付けるべきでないだろうな……どうすればいいだろうか』
     クリスマスに子どもたちと話をしていたときのことを懸命に思い出していたそのとき――己の耳に何かが割れる音が飛び込んできた。
    「! どうした!?」
    「……」
     俺は思わず息を吞んだ。床に飛び散ったカップの破片の前に、アキラがうずくまっているのだ。
     アキラは、ぽかんとしながら、指先から零れ落ちる己の血を見ていた。
    「大丈夫か! ……痛かったろう」
     アキラの唇は震えていた。
     自分の痛みが「本物」であること――即ち、これは「夢」ではないことを自覚したのだろう。
     緊張の糸がぷつりと切れてしまったアキラは、俺に抱き着いて、わんわんと大声で泣きはじめた。
     ……俺は狼狽した。
     子供に泣かれてしまい戸惑う気持ちよりも、この子供の体温に離れがたい柔らかなぬくもりを感じてしまっている。そんな自分が怖かった。およそ泣き叫ぶ子供を抱き上げて感じる気持ちでは決してない。
    『こんなにも、可哀想な子供に――』
     
    「――そこで目を覚ましたと」
    「はい」
     昨晩見た俺の夢の話を黙って聞いたブラッド様は、眉間をつまみながら考え込み始めた。
    「なるほど。だからお前は今日アキラとまともに会話できていなかったのか……」
    「はい……その、何かの兆候でしょうか?」
     ブラッド様は長く間を置いたが「まあ、大丈夫だろう」と答えた。
     その言葉に本当に、心から安心した直後のことだ。
    「なー、指切ったんだけどそっちに絆創膏ねえか?」
     こちらの部屋をノックするアキラの声に、俺はブラッド様と顔を見合わせた。
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    DONE夢のなかで <オス→→アキ子供化夢オチ>「あわわわわ、だだ、だれかいませんか!? 大変! 大変なんです!」
     常日頃から穏やかなウィルのただ事ではない声を耳にした俺とブラッド様は、思わず顔を見合わせた。二人してあわてて共有スペースに出ると、そこには何とも言い難い光景が広がっていた。
    「……オスカー、俺は幻を見ているのか?」
     眉間をつまみながらの絞り出すようなその質問に、俺は間を置いて首を振った。
    「俺もそう思いたいですが、残念ながら……」
     ありのまま言えば、こうだ。
    『鳳アキラの容姿に酷似した子供が、サウスセクターの共有スペース内を走りまわっている』
     この己の幻覚を疑いたい状況に対してただただ呆然としている俺たち二人の姿に気付いたウィルは、心底安堵した顔でこちらに寄って来た。
    「よかった、二人とも――こらアキラ! もう! 暴れたらだめだってば!」
     ウィルに捕まえられたアキラと呼ばれた子供は「んぎゃ! ウィルにくせに!」と声を上げた。
    「ウィル、まさか」
    「……はい、アキラなんです。この子」
     この冬に短パン半袖姿のわんぱく少年ことアキラ(小)は両手で抱えられたまま目を険しくしていた。機嫌が悪いときのアキラ(大)にそっ 2172

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     常日頃から穏やかなウィルのただ事ではない声を耳にした俺とブラッド様は、思わず顔を見合わせた。二人してあわてて共有スペースに出ると、そこには何とも言い難い光景が広がっていた。
    「……オスカー、俺は幻を見ているのか?」
     眉間をつまみながらの絞り出すようなその質問に、俺は間を置いて首を振った。
    「俺もそう思いたいですが、残念ながら……」
     ありのまま言えば、こうだ。
    『鳳アキラの容姿に酷似した子供が、サウスセクターの共有スペース内を走りまわっている』
     この己の幻覚を疑いたい状況に対してただただ呆然としている俺たち二人の姿に気付いたウィルは、心底安堵した顔でこちらに寄って来た。
    「よかった、二人とも――こらアキラ! もう! 暴れたらだめだってば!」
     ウィルに捕まえられたアキラと呼ばれた子供は「んぎゃ! ウィルにくせに!」と声を上げた。
    「ウィル、まさか」
    「……はい、アキラなんです。この子」
     この冬に短パン半袖姿のわんぱく少年ことアキラ(小)は両手で抱えられたまま目を険しくしていた。機嫌が悪いときのアキラ(大)にそっ 2172

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    「……オスカー、俺は幻を見ているのか?」
     眉間をつまみながらの絞り出すようなその質問に、俺は間を置いて首を振った。
    「俺もそう思いたいですが、残念ながら……」
     ありのまま言えば、こうだ。
    『鳳アキラの容姿に酷似した子供が、サウスセクターの共有スペース内を走りまわっている』
     この己の幻覚を疑いたい状況に対してただただ呆然としている俺たち二人の姿に気付いたウィルは、心底安堵した顔でこちらに寄って来た。
    「よかった、二人とも――こらアキラ! もう! 暴れたらだめだってば!」
     ウィルに捕まえられたアキラと呼ばれた子供は「んぎゃ! ウィルにくせに!」と声を上げた。
    「ウィル、まさか」
    「……はい、アキラなんです。この子」
     この冬に短パン半袖姿のわんぱく少年ことアキラ(小)は両手で抱えられたまま目を険しくしていた。機嫌が悪いときのアキラ(大)にそっ 2172