狭いから仕方がない 目の前で監督生が腕を突っ張って自重を支えているが、なにか夜のなんたらが始まろうとしているわけではないし、そもそもイデアと監督生は付き合っていない。
先程までディスクトップを見ていたイデアは、目をしぱしぱとさせて現状把握に数十秒かけていた。
突飛な展開に頭が追いつかない。
「え……っと、巻き込んでしまってすみません」
ローディング中のイデアがぽかんとした顔で反芻すると、監督生は仮説として自分自身が何らかのトラブルに見舞われ、なぜかイデアを巻き込んだのではないかと言い出した。イデアはふむと斜め上を見つめ、視線の先がすぐそばであると理解するなり手を伸ばして天井に触れる。
ついでに片足も上げてコンコンと天井と床も叩いて音の広がりも確認した。その作業をしつつ「巻き込まれたのは君の方かもしれないじゃん」とフォローのつもりで口にしたりとはできるのに、状況打破の糸口模索に気を取られ過ぎていて、イデアは監督生の腕がずいぶん前から限界だということに気がつけないでいた。
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