果たされなかった約束「そういえば、読み終わったの?」
静寂に満ちた空間に青髪のナホビノの呟きが響く。
ツクヨミの膝の上に上半身を乗せ、先日入手したばかりの新刊に視線を向けたままで青き神は問いかけた。
「……読み終わってはなかったようだな」
「やっぱり、興味なかった?」
「序章は読み終えていた。ただ、時間が足りなかっただけだろう」
「足りなかった、ねぇ」
ぱらりとページを捲りつつ文字を眼で追いながら、改めて青髪のナホビノは独りごちる。
「……まぁ、仕方ないか」
暫し時間を置いた後、吐き出そうとした不平不満を飲み込んで青髪のナホビノは本を閉じる。それから、ツクヨミの足下に顔を伏せるのであった。
「アイツは真面目だったから」
「そうだな」
ツクヨミに優しく頭を撫でられ、青髪のナホビノは眼を伏せる。
――アイツの手は、もっと小さかったな。
そんなことを思い出しながら。