無題「俺は、アオガミがいれば何も怖くないよ」
自身が負った傷を神霊水で癒やしつつ、ナホビノは微笑んだ。
『しかし』
「大きな悪魔だ!って先走ったのは俺なんだからさ、アオガミは気にしないで。怪我も自業自得。次からは気をつけるから」
『……君がそう言うならば』
己の卑下しかねない半身を制しつつ、ナホビノはこめかみに触れる指先に僅かに力を込める。
(アオガミがいれば、本当に何も怖くないよ)
見上げた視界に収まらない巨躯の悪魔も、差し向けられた男の凶刃も、神としての体を引き裂かれたことですら。
――ふたりならば何が起ころうとも、歩いて行ける。
そう、少年は信じるのであった。