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    POIPOI 290

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    やっと完結したヨダカ暁人。K暁
    前回→https://poipiku.com/2688419/7088729.html

    俺は凛子からの連絡を受けてやって来た、あの黒い泥が見つかったと。その場所に案内されると、そこには、あの時見た泥の翼を持った一羽の醜い夜鷹がいた。
    「KK、これって・・・」
    「ああ、暁人だ」
    あの時の光景を思い出す、黒い泥の涙を流して自分の感情を暴露して泥に呑み込まれて夜鷹と化したアイツの姿。その表情を思い出しただけで胸の奥がきゅっと痛くなる。暁人は今も苦しんでいるのだろうか?
    「KKさん」
    「お前も来ていたのか、麻里」
    後ろからやってきたアイツの妹である麻里にも声をかける。今は適合者の一人で、今は凛子の家で絵梨佳と共に暮らしている。
    「お兄ちゃん、どうして?」
    変わり果てた兄の姿にショックを受けていた。
    「アイツに何かされたって訳ではないのは確かだ。あの時の反応を見る限り予想外だったんだろうな」
    すると夜鷹は翼を広げると俺を叩こうとしてきたが、それをかわすが泥が飛び散って服につく。
    「おいおい勘弁してくれよ、汚れちまったじゃねえか!」
    そんなことを言っている間に夜鷹は再び攻撃を仕掛けてくる。今度は翼をバネのようにして跳ね上がり、そのまま落下してくる。
    「くそっ、こんな狭い場所で飛ぶんじゃねーよ!!」
    そう言いながら避けていると、またもや泥が飛び散る。そして、それが運悪く、麻里の方へと飛んで行った。
    「きゃあぁぁぁ!!!」
    「しまった!?」
    麻里は泥をモロに受けてしまいその重みで地面に倒れ込む。そして夜鷹はそのまま再び攻撃しようとしてくるが、俺は咄嵯の判断でショットを放つ。当たった所が抉れるがすぐに再生してしまう。
    「お兄ちゃん止めてぇ!!」
    だが、夜鷹は止まらない。そのまま突進してきて俺を突き飛ばそうとするが絵梨佳がお札を投げつける。麻痺札が運良く命中したようで動きを止めることが出来た。
    「今のうちに!」
    札を貼り付けて印を結ぶ。
    「これで戻ってくれ」
    すると、夜鷹に変化が現れた。泥が溶け出して形が崩れてゆき、やがて泥の中から暁人の姿が露になった。意識を失っているようだ。
    「暁人!!!」
    「お兄ちゃん!」
    「暁人さん!」
    俺達は急いで駆け寄った。
    ****
    ベッドに寝かせた暁人の方を見る。医者には診てもらったが、ただ眠っているだけとのことなので大丈夫だろうということだ。だが、なぜか目を覚まさない。何度呼びかけても起きる気配が無いのだ。
    「お兄ちゃん・・・起きないね」
    「うん・・・心配だよ」
    麻里と絵梨佳が不安げに言う。俺も同じ気持ちだった。早く目覚めて欲しい。暁人の気持ちを知るために霊視をしてみることにする。
    (ズット逃ゲテイタイ。全テニオイテ何モカモカラ目ヲ逸ラシテ、誰ニモ見ツカラナイヨウ隠レテ生キテイタイ。モウイッソドロドロニ溶ケテ混ザリ合ッテシマッテモイイ。ドウセ僕ハ夜鷹ナノダカラ。醜イ泥ノ翼ヲハタメカセ、光ヲ求メテ彷徨ウ憐レナ鳥ナンダ。アア、ナンテ僕ハ惨メデ滑稽ナンダロウ。 ドウセナラバコノママ闇ヘト沈ンデシマエバイイノニ。ソレデモ僕ハマタ羽撃クト思ワレル。ドウシテオ前達ガソウ思ワセルノカ?何故僕ガ飛ビ立トウトスルコトヲ望ムノカ?コレマデイッタイナンダッタンダロウ?今更悔ヤンデモ遅インダ。モウ手遅レナンダ)
    そこで途切れてしまった。おそらくこれが暁人が抱えていた本当の想いなのかもしれない。だが、まだ断片的な情報しか得られていないので、もっと詳しく調べる必要があるな。
    (僕ハイツモ一人ボッチデ泣イテイル。孤独ニ震エテイル。デモ優シクサレルノハ嫌イダ。甘ヤカスノナラ僕ノ喉笛ヲ掻ッ切ッテクレト願イタイ。ソウスレバ僕ノ魂ハ安息ヲ得ルハズナンダ。ダケレドモ皆期待シテ待チ続ケル。マタ会エル日ガ来ルト信ジテ疑ワナク、ソノ時ヲ夢ミテルンダ。アア、何トイウ愚カナ事デアロウ、 僕ハ僕自身ヲ殺シタッテイイワケナンダ。ダッテ僕ノ存在自体ガ罪ナンダモノ。憐レデ醜イ自分ナンテ要ラナイ。アア、ドウシテ僕ハコンナニ醜インダロウ。 ソンナ僕ニ同情スルナンテ、オマエ達ハホントウニ馬鹿ダ。僕ヲ可哀想ニ思ウクライナラ、サッサト死ネバイイッテイウノニ!)
    今度はかなり長く感じたが、ようやく終わったようだ。
    「暁人・・・お前」
    俺は衝撃を受けた。暁人は自分を憎み続けていた。自分の弱さ、愚かしさを責め、自責の念に駆られて逃げたいと感じていた。そして、その感情はいつしか怒りと憎しみに変わり、負の感情に囚われて夜鷹、つまりマレビトと化してしまった。
    「ごめんな暁人、俺が気付いていればこんなことにはならなかったはずなのに」
    俺が謝ると、麻里も同じように頭を下げた。
    「お兄ちゃんがこんな辛い思いをしていたなんて。私、何も分かってあげられなかった」
    麻里の目は涙ぐんでいた。俺も胸が苦しくなる。そして、麻里は泣きながら暁人に抱きついた途端、麻里の意識は遠退いた。
    ****
    「あれ、ここどこ?」
    意識を取り戻した麻里は辺りを見渡すとそこは満点の星空が輝く夜の世界だった。
    「なんで、なんでここにいるの?」
    声のする方を向くとそこには暁人がいた。
    「お兄ちゃん!?もしかしてここはお兄ちゃんの意識の中なの?でもどうして私が入れたんだろう?」
    「麻里!どうして!?どうして僕の世界にいるの!?」
    暁人は涙目で叫ぶように言う。
    「えっ!?私にもわからないよ!」
    「そんなことはいいからとっとと出ていって!!お願いだから!誰とも関わりたくないの!!」
    黒い涙を流しながら必死に訴えかける。
    「いやだよ!私はもう二度と失いたくないんだもん!」
    「何を言ってるんだよ!僕なんかどうなったっていいだろ!?お前だけでも幸せになってくれよぉ!」
    「そんなことない!私にとってはたった一人の家族なんだもの!絶対に離れないからね!」
    「頼むよ・・・これ以上僕を惨めにしないでくれよぉ・・・」
    そう言い残して暁人は黒い泥に包まれて、夜鷹へと姿を変えていく。泥の翼を広げて地面に叩きつける。そして飛び立とうとする夜鷹の前に立ち塞がり両手を広げる。
    「行かないで!お兄ちゃんはずっと私のそばにいてよ!」
    振り下ろした翼を紙一重でかわす。
    「ドウセ僕ハ逃ゲルダケノ存在ダカラ。オ前達ニ迷惑ヲカケル訳ニハイカナインダ」
    再び飛び立つために羽ばたこうとする夜鷹に向かって駆け出す。
    「違うよ!お兄ちゃんは私の大切な人だから!だから迷惑なんて思わないよ!」
    「ソレデモ僕ト一緒ニイラレルハズガナインダヨォ!」
    泣き叫びながら飛び上がる夜鷹の背中にしがみつく。
    「それでも一緒にいたいの!だって私にはお兄ちゃんしかいないから!だからどこにもいかないで!」
    「ソウ言ッテクレルノハトテモ嬉シイ、ケド駄目ナンダ」
    夜鷹は急転直下し地面へ急降下していく。その勢いで麻里は振り落とされそうになる。
    「待って!嫌ぁー!!」
    不意に麻里の身体にワイヤーのようなものが巻き付いて引っ張られる。
    「なに先走ってんだよ。ったく急にお前が倒れるからアイツらが軽くパニクってんぞ」
    そこにはKKが立っていた。
    「お前だけで背負おうとするんじゃねえよ。俺らにできることがあれば協力させてくれよ」
    夜鷹はこちらに向かって突っ込んでくる。
    「危ない!」
    間一髪のところで回避した二人だったが夜鷹はそのまま落下していった。
    「大丈夫か?」
    「はい、なんとか」
    KKはお札を貼り付けて動けない夜鷹に近づく。頭部に手を触れると、ズブッと音を立てて手が沈み込む。そのままゆっくりと手を動かすと柔らかい何かに触れる。
    「暁人、俺の手が分かるか?今、お前に触ってるぞ」
    反応がないが確かにそこにいることがわかる。夜鷹は離れようとじたばたするが、拘束されているため動けない。
    「ごめんな、もっと早く気づいてやれなくて。辛かったよな」
    そう言うと突然涙を流す。
    「ナゼ僕二手ヲ差シ伸ベル? ドウシテ僕ヲ抱キシメル? ナゼ僕ヲ愛スルンダ!ワカラナイ!ワカラナイ!ドウシテ?ドウシテ僕ナンカニ関ワルンダ?」
    「そんなの決まってるだろ。俺はお前のことを大切な仲間だと思ってるからだ」
    「ナンデ!ドウシテ!コンナノ偽善者ダ!優シクサレナクテイイノニ!オ願イ、僕ヲ見ナイデクレ。僕ヲ放ッテオイテクレ」
    「放っておくことなんてできねぇよ、お前は俺たちの仲間だ。お前がいなければ俺たちはここまで来れなかった。命拾いしたことだってあるんだ。それにお前がいなかったらこの世界に来ることもできなかった。感謝してもしきれるもんじゃないんだっつうの」
    「ソンナコトナイ!僕ハイツモオ前ニ迷惑ヲ掛ケテイルンダ!僕ガイナイト何モデキナカッタクセニ!コノ恩人ガ!」
    「ああそうだな。あの時は頼りっぱなしで何も出来なかった。でも今は違うだろ。お前が居てくれたから今の俺がいるんだ。お前がいなきゃこんなに強くなれることはなかったんだぜ」
    「僕ハ強クハ無イ!本当ナラ弱虫ダッタンダ!デモオマエガ僕ヲ変エタ!オマエニ会ワナケレバ僕ハ変ワラナカッタッ!ダカラ僕ハココニイルンダ!」
    「だったらお前は一人じゃないな」
    「ソウダ、オマエノ温モリヲ知ッテシマッタ僕ハ、モウ一人デハ眠レナイノダカラ。モシ、傍ニイサセテモイイノナラ」
    泥が溶けて暁人の姿が露になる。頭は鳥の頭部に覆われ、背中からは巨大な翼が生え、腰の辺りからは尾羽が生えている。そして泥が全て溶けきっていく。
    「僕は、傍に居たい。ずっと一緒に。だからお願い、僕を救ってよ」
    「分かったよ、救ってやるさ」
    KKは暁人に手を差し伸べると暁人はその手を握り締めた。ずっと離さないようにしっかりと。
    「心配してくれてありがとう」
    暁人は一筋の涙をこぼしながら笑顔で言った。その涙は黒い泥ではなく透き通った綺麗な水だった。KKは泣き崩れている暁人の肩に手を置く。
    「これからもよろしく頼むぜ」
    空には星々の輝きと共に満月が浮かんでいた。
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    りんご

    DONEまじない、あるいは、のろい (ここまで読みがな)
    K暁デー「スーツ」
    お題的なこともあって結婚と葬送の話をどっちも書きたかっただけです。あっきーがバカ重い感じですが、その環境ゆえにうまく隠すことがうまかっただけで彼の本質はこうだろうなーとか思ったり。いつものごとく二人で喧嘩して、戦って、駆け抜ける話です。
    中の人本当にありがとうございました、お陰で細々と楽しくK暁を追いかけられました。
    呪い短くも長くもない人生を振り返るにあたり、その基準点は節目にある行事がほとんどだろう。かくいうKKも、自らのライフイベントがどうだったかを思い出しながら目の前の光景と類比させる。
    準備が整ったと思って、かつての自分は彼女に小さな箱を差し出した。元号さえ変わった今ではおとぎ話のようなものかもしれないが、それでもあの頃のKKは『給与三ヵ月分』の呪文を信じていたし、実際差し出した相手はうまく魔法にかかってくれたのだ。ここから始めていく。そのために、ここにいる隣の存在をずっと大事にしよう。そうして誓いまで交わして。
    まじないというのは古今東西、例外なく『有限』である。
    呪文の効力は時の流れに飲まれて薄れてゆき、魔法は解け、誓いは破られた。同じくしてまさか、まじないの根本に触れることになるだなんて思わなかった、ところまで回想していた意識を、誰かに強い力で引き戻される。
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