お題『無駄な抵抗』「ああいうの、KKもやったことあるの?」
明かりを最小限に絞ったリビングで、暁人がぽつりと呟いた。
彼の視線の先には24型液晶テレビ。映っているのは、大量のパトカーと重装備の機動隊に包囲された古いビルディングだ。
カメラはそこからビルの上階へとズームされ、ブラインドの隙間から外の様子をうかがう、猟銃を携えた男の目元にフォーカスされる。すぐに場面は転換し、今度は、拡声器を持った一人の私服警官が大写しになった。くたびれた瑠璃色のロングコートに、ルーズに結ばれた藍色のネクタイ。驚くほど無防備なその私服警官は、防護盾に身を隠す機動隊を尻目にビルの真ん前で仁王立ちすると、覚悟を決めた男の顔つきで、拡声器を口元に添えた。
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