僕は状況を把握するためにKKと共にアジトにいた。
《KKなのか?》
「久しぶりだな」
予想外の来客にエドはボイスレコーダーを片手に駆け寄ってきた。
「暁人の右手について聞きたいんだが」
《彼の手に何か進展があったのか?》
「はい、右手が動かなくなったことについては前に話しましたが、最近祟り屋に遭遇して」
「祟り屋!?おい何かされなかったか!?」
「話すの忘れてただけだから!」
少し取り乱し、僕の人の肩をつかんだKKは僕の言葉を聞いてホッと息をつく。
「そうだったのか・・・それで?」
「それが右腕だけあの世に持っていかれてるって言われて、僕がKKに会いたいなんて思ったからなの知れないって。あくまで仮説だけど」
エドは深く考え込んだあと、顔を上げて別のボイスレコーダーを再生した。
《もしかすると、君の腕は『門』の役割を担っていて、その腕を使ってKKがこちらに来ることができたんじゃないかと考えているんだけどね》
「つまり、この世界とあちらの世界をつなぐ道標として暁人の手が必要ってことか。てかこれも録音していたのかよ」
《いざというときにね》
三角巾で吊るした腕を見る。肘は動くのだが、そこから先の感覚はない。動かすこともできずただそこにあるだけ。
「じゃあ、また来ます」
《わかった。気を付けて帰るんだ》
「はい。お邪魔しました」
エドさんの部屋を出て、そのまま帰ろうとすると、KKが声をかける。
「暁人、これからどうするんだ?」
「・・・わからない」
正直、何一つ思い浮かぶことはない。
「でも、なるようにしかならないと思う。だから今はやるべきことをやるしかないかな」
「俺にできることがあれば言ってくれ」
「ありがとう。助かるよ」
KKの身体が影の中に沈み始める。時間だ。
「また何かあったら呼べよな」
「うん」
「ああ、それじゃあな」
別れの挨拶を交わし、KKは影の中へと消えていった。家に帰ると、机の上に置いてある写真立てを手に取る。そこには笑顔の家族の写真が入っていた。父と母と妹の四人で撮った唯一の家族写真だ。残っている写真がこれしか無いのだ。妹が生きていたころの思い出は本当にこれくらいしかない。そして今となってはこれだけが僕の心の支えとなっている。
(父さん、母さん、麻里)
両親への想いを強く胸に刻みつけるように写真を握りしめ、僕はベッドの上に横になった。