後から追いつくと言った狐2人を置いて神主に着いていくと何処からか声が聞こえ立ち止まった
ーねぇ……また遊んでくれる…?……今度は…と一緒に…ー
なぜかその声は落ち着くような懐かしいような声でKKは謎の焦りを感じる。
「(何の声だ…?穢れにしてはおかしい声だ…)」
再び歩き出すも謎の声に気を取られていたからなのかいつの間にか穢れのせいで黒く澱む御神水の場に着いていた。
「こちらが御神水でございます」
「あぁ、ありがとさん。さて、さっさと祓っちまうか」
そう言うとKKは印を結び穢れを祓う。呆気ないほど早く穢れが祓えたことに本当にあいつはここの守り神か?と疑うもあの消えた尻尾を目の当たりにしていれば流石に信じざるを得ない。
そうこうしている内に暁人と麻里が追い付き、それに気付いたKKは2人に声をかける。
「穢れは祓ったが体調はどうだ?」
そう問うと暁人は少し身動ぎしKKに向き直る
「確かに穢れは祓われたようです。ただ、気になる事が…」
それを聞いてKKと絵梨佳は首を傾げた。
確かに御神水を冒す穢れは簡単に祓えたが霊視をしても穢れがあるようには見えないからだ。
すると暁人は徐に右目を隠す狐の面を取り麻里にその面を渡してるのを見てKKは驚いた。
それもその筈暁人の目は真っ赤に染まり、そう、血を思わせるような赤だったからだ。
「その目は…っ」
「静かに…今から気になる事を調べます。」
その目に関して説明を求めようとしたKKを遮り暁人は何かを見ていたがその瞬間走り出した。
「お兄ちゃん?!」
妹の麻里の声さえ気に掛けず暁人は慌てて走り去るのを尋常ではないと思いKK達も後を追う。その際神主はKKに「本殿を整えて参ります」と慌てて去っていった。つまりこう言うことはよくあることなのかも知れないが、やっとのこと暁人に追い付き息を整える。
暁人は何故か狐や仏像が沢山建てられた場所の真ん中に立っていた。
念のためとKKは霊視をするも何も見えず暁人は一体何を見ているのか不思議に思っていたら暁人はKKの方へ振り向き真剣な顔をして近づいてきた。
「KK、僕に力を貸して欲しい」
KKはまず名乗った記憶はないと思ったが暁人は間違えずKKと名を呼び力を貸して欲しいと言った。つまり暁人にしかできない事があるという事だ。
それに暁人の目は有無を言わさぬほど真剣な表情だった。
「乗りかかった船だ、最後まで付き合ってやるよ。で、何すりゃぁいいんだ?」
「エーテルを分けて欲しい。」
まさかエーテルを分けて欲しいと言い出すとは思わなかったのかKKは動揺した。
ここの穢れを祓えと言われるのかと思っていたからすぐに反応できずだが霊視をしてもどんな惨状なのか知る由もないKKは一呼吸置いて頷いた。
「……分かった。」
「右手を出して」
了承の返事を返すと共に暁人から指示がありその通りに右手を差し出すと暁人はその右手を両手で包むように握り額を充てる。
両手を包まれたKKは、あぁ、守り神でもこんなに暖かい手をしてるんだなとどこか懐かしさを感じ暁人から「そのままエーテルを送って」と言われ我に返り慌ててエーテルを送るイメージを頭に浮かべる。すると何かが吸われる感覚がしてそれがエーテルが暁人によって奪われてるのだと理解したが何故か恐怖は感じなかった。
目の前で暁人の尻尾は光の粒子に包まれ6本に増えこの僅かな時間でもここまで回復するのは異常だと思ったが見守ることにし、暁人は顔を上げると「ありがとう」と微笑み麻里に後の事を託した姿を見て胸騒ぎがした。
止めようとしたが既に暁人は同じ場所に向かいその場で蹲ると両手を重ねる。その瞬間、暁人が見た景色が現実世界と繋がる。その様を見てKKは何故御神水の穢れが簡単に祓えたのか理解した。
仏像達が穢れを暁人の代わりに防いでいたからだ。だが防ぎきれなかったものが御神水を穢しそしてまた暁人を穢したのだ。助けを求めて。
「気付いてあげれなくてごめんなさい…僕達を守ってくれて、ありがとう」
ー僕達を守ってくれて、ありがとう…どうか、幸せになってね…ー
暁人の呟きが聞こえた途端暁人の傍に彼をそのまま小さくして耳も尻尾もない人間の姿が見えた。だが、それも一瞬の事でKKは瞼を閉じることになる。それは暁人の体から眩い光が発せられたからだ。
光が収まるとKKは瞼を開き目の前に広がる光景に目を見開いた。
目の前では暁人が仰向けに倒れ麻里は倒れる暁人の上半身を起こさせ抱き締めていた。そして地蔵達は元通りになり穢れも祓われたのがわかる。
地蔵達の浄化に伴い元通りにするために使った力は尋常ではなく暁人の尻尾は一本になっていた。
守り神ましてや九尾の狐の力だけでこの浄化は出来ない。つまり暁人は九尾の中でも位の高い天狐なのだとKKは察する事ができた。
「この力…九尾の狐ができるもんじゃねぇ…天狐だろ」
KKは確信を持ちながら妹に伝えるも麻里は一瞬俯きながらも直ぐKKを見て「今はそんな話より兄を本殿に運びます!手伝ってください」と伝えた。