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    Hakuaisan(GWT)

    @Hakuaisan

    二次創作てんこ盛り野郎

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    それらしいことは何一つしていない893パロ
    オリキャラバンバン増やす予定

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    「お兄ちゃん、入るよ」
    ノックをしてドアを開ける。部屋では兄が一人で机に向かって事務作業をしている。パソコンの画面を覗き込むと、どうやらメールで送られてきた資料に目を通している。周りには領収書や請求書といった紙類も散らばっている。兄の横顔を見る。長いまつげは伏せられ、真剣な眼差しだ。こうして見ると、やっぱり端正な顔をしていると思う。私は兄のこの表情が好きだったりする。しばらくすると兄が顔を上げてこちらを見た。
    「麻里、入ってくるならノックして」
    「したよ」
    「集中して気づかなかった、ごめん」
    申し訳なさそうに謝る兄を見て、なんだか可笑しくなった。信じられる?これでも組長だよ?まあヤクザって名ばかりの会社だけどね。そんなことを思いながら、私はソファの上に腰掛ける。ギシッという音とともに私の体重を受け止めるクッションが沈み込んだ。
    「ねえ、お兄ちゃん」
    「ん?」
    「今の仕事って楽しい?」
    「なんで?」
    「いや、ちょっと聞いてみたくて」
    「そうだな、楽しいかどうかはわからないけど、充実はしてるかもな。父さんがなくなってから組織のあり方を帰るのには少し苦労したけどね。今は名ばかりの会社だし僕と麻里だって名ばかりの地位だし」
    兄は自嘲気味に笑う。
    「そっか・・・」
    兄が大変な思いをしていたことはよく知っている。若くして組を継いだ兄は父の代からの組員を守るために奔走していたのだ。ヤクザという組織は組長の指示は絶対であり逆らっては行けない存在。兄は合法的な仕事以外には手を付けない決まりを作り、信用を得た。組が舐められると文句を言ってくる人もいたけど、兄は制裁が全員制裁した。「文句あるなら無傷で出ていけばいいのに」とぼやきながら椅子に縛り付けていたのは良く覚えている。今は警備やボディーガード、面倒事の処理を主に請け負って生活している。兄曰く、「うちみたいな弱小は地道にやるしかないんだよ」ということらしい。私も手伝いたいと言ったことがあるけれど、やんわり断られた。まだ高校生である私を巻き込みたくないと思っているようだった。
    「麻里は進路決めたのか?」
    不意に兄が質問してきた。私はうーんと考えるふりをする。本当は決まっているんだけどね。
    「一応進学するつもりかな」
    「大学に行くのか?」
    「うん、できれば行きたいと思ってる」
    これは本当。別に勉強が好きとかそういうわけではないけれど、せっかく兄が頑張って仕事をしているものだがらいつか役に立ちたいと思ったのだ。
    「そうか、じゃあ頑張らないとな」
    「うん!」
    そう言って笑顔を見せる兄は本当に優しい。その優しさで今まで何人もの人を救ってきたんだろうなと思う。
    「それじゃあ僕はもう少し仕事があるから、何か困ったことがあるなら舎弟達に頼むといいよ」
    「わかった!ありがとうお兄ちゃん!」
    私は立ち上がって部屋を出た。ドアの前で振り返り手を振ってみる。兄も軽く手を振り返してくれた。それだけで嬉しくなって口元が緩んだ。
    ****
    「若いっていいよな・・・」
    「組長だってまだ22歳じゃないですか、私なんてもう五十路なんですから」
    「もう目と腰がちょっと・・・」
    「事務作業してるからじゃないですか」
    「そうだけどさ・・・」
    事務作業をしながら舎弟の一人である月山さんに愚痴をこぼす。彼は昔から僕の世話係で、父が生きているころからよく面倒を見てくれた。今は組の経理を担当していて、帳簿の管理や経費の計算などを手伝ってくれている。パソコンの扱いにも慣れており、書類作成なども任せられる貴重な人材だ。
    「暁人さんが組長になってからすっかりここも変わりましたね」
    「昭和時代の商売やってもダメになるし、非合法なシノギしてりゃいつか検挙されるのがオチ。警備やボディーガードとかなら警察も見て見ぬ振りしてくれるし」
    「まあ、法に触れるギリギリを攻めてるって感じですよね」
    「そうなんだよなあ」
    「そう言えばここってどれくらいになってるんですか?お父様の頃は相当な人数がいたのは覚えているとですが、何しろ暁人さんが組長になってから私達とで相当粛清させたので」
    「基本的にここにいるのは僕と月山さん含めて大体10くらいで、仕事を請け負っている人を含めると100は越えるよ」
    「じゃあここの人員が少ないのは」
    「そういうこと」
    Enterキーをタンッと押しながら答える。
    「ちなみに事務所は?」
    「それは維持できてる。っていうか、こっちの方が重要だからね。やり始めはガタガタだけど今は右肩上がりだし」
    「確かに」
    笑い声が部屋に響く。その時スマホが震えた。確認すると舎弟の一人からだった。
    「はい、もしもし」
    《あ、あの組長》
    「どうしたの?」
    《じ、実は妻の妊娠が発覚して・・・》
    「へぇ、後で妊娠祝い送らないとねぇ。何ヵ月?」
    《もうじき3ヶ月で》
    「・・・チッ」
    《ひ、ひぃ!》
    「今からお前に産休と育休をやる、しっかりと奥さんのそばにいてあげろ。それと子供が生まれたら顔見せに来いよ。みんな喜ぶだろうから」
    《は、はい!ありがとうございます!!》
    「あと、子供が産まれるまで事務所に来るんじゃないぞ。もし来たら・・・わかってるよな?」
    《は、はいいいいいい!!!!!!!》
    電話越しでもわかる悲鳴を聞いて通話を切る。
    「全く・・・」
    「相変わらず組長は本当に家族を優先しますよね」
    「だって僕には母親もいなければ父親もいない、今の家族は麻里と舎弟らだけだし。父親が積み上げたものを崩したくない一心でここまでやってきたんだ。それを蔑ろにしたら僕はただのクズ野郎だよ」
    「別にそこまでは思ってませんけど、もっと肩の力抜いてもいいと思いますよ」
    「まあね」
    「それにしても、お嬢様ももうじき高校三年生ですか。時が過ぎるのは早いですね」
    「麻里のことはお嬢様呼びしないで、嫌がってるから」
    「失礼、麻里様の進路とかは?」
    「大学には行きたいって言ってるけど」
    「それなら麻里様の進路を応援しないとですね」
    「そうだね」
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