『誕生日』「「ハッピーバースデー!!」」
一斉にクラッカーを鳴らされ、パーン、と紙吹雪が舞う。今日は僕の誕生日なのだ。
「お誕生日おめでとう、お兄ちゃん!」
麻里が抱きついてくる。僕は照れつつも、麻里の頭をなでる。
「ありがとう、麻里」
「暁人さーん!おめでとう!」
「暁人くん、おめでとう!」
《お誕生日おめでとう》
「おめでとう」
みんなが口々にお祝いの言葉をかけてくれる。僕は本当に幸せ者だ。
「暁人、一ついいか?」
「何か?」
「その格好は何だ?」
KKが僕の服装に疑問を呈する。
「この衣装は絵梨佳ちゃんのお父さんが用意してくれたよ?しかもオーダーメイド」
「おい、何してんだお前」
「私からのプレゼントだが?」
僕が今着ているのは、黒いタキシードだ。赤い襟で、白いブラウスには黄色の蝶ネクタイを着けて、白いスカーフを肩に掛けているだけ。
「今の気分はスター・オブ・ザ・スターズ・オブ・ザ・スターズさ!」
「なんだその肩書き」
「麻人が見ていた仮面ライダーに出てくる主人公の肩書き」
「スター多くないか?」
「僕もそう思う」
「けーきたべよ!」
「はいはい今切ってあげるからいい子で待っててね~」
麻人が食べたいとせがむので、ケーキを切ってあげる。
「おっきい!」
「これ麻人が全部食べていいからね」
「お兄ちゃん!」
「暁人さん!」
「はいはい今切ってあげるから」
麻里や絵梨佳ちゃんにも切り分ける。
「じゃあ、いただきまーす」
ケーキを一口食べる。うん、美味しい。麻里や絵梨佳ちゃんも目を輝かせながら食べている。ふと、KKの方を見ると、彼はお茶しか飲んでいなかった。
「KKも食べなよー」
「年取ってくると甘いもんがキツくなんだよ」
「パパ、ケーキたべよーよ!」
「いや、いいって・・・」
「あーんしてあげるから!」
「・・・じゃあ頼むわ」
麻人がフォークで一口大に切り分けたケーキをKKに食べさせてあげてる。あー可愛い
「どう?」
「甘い」
「もっといる?」
「いや、一口でもういい」
KKって麻人に弱いなと思って見てると、KKが僕を睨んでくる。
「なんだよ」
「いや、別に?麻人が可愛すぎてKKもメロメロだなって思って」
「・・・まあ、そうだな。麻人はいい子だからなー」
「えへへー!ぼくいいこでしょ?」
麻人を膝の上に乗っけてぐりぐりするKK。尊い・・・。
「暁人さん、顔が凄いことになってますよ!」
「麻人マジ天使」
「・・・」
「アキ、さっきから浮かない顔してどうしたの」
狐から人の状態になったアキに聞く。
「ああ、その、誕生日ってこんなものなのかって・・・」
「なんだそんなことか。いいってそんなの」
「いや、その、なんていうか」
「ケーキたべよ!」
アキが申し訳なさそうな顔をしていたので、麻人が声をあげる。
「アキの分までちゃんと分けたから別に気にしなくていいよ。みんなも、誕生日だからって気負わなくてもいいからね」
「はい、ありがとうございます!」
絵梨佳ちゃんが返事をしてくる。
「アキがこういう場が苦手なのは分かるけど、僕達はもう家族みたいなものだって思ってるし、遠慮しなくていいんだよ?」
「そうは言っても・・・」
「あーもう、いいからとりあえず食え!せっかく暁人作ったんだから!」
「はい・・・」
KKに促され、ケーキを食べるアキ。
「・・・おいしい」
「でしょ!!だって僕が丹精込めて作ったんだから!」
「・・・うん」
アキが微笑む。ああ、尊い・・・
「あ、そういや麻人が渡したいものがあるって」
「渡したいもの?」
そう言うと麻人がやって来る。
「ママこれ!」
ラッピングされた箱を渡される。
「パパとえらんだ!!」
「え、泣いてもいい?僕泣いてもいい?」
「お兄ちゃん親バカ」
「麻人くんに対して本当に子煩悩になるわね」
「彼はどこまで行くんだが」
《いろんな意味で凄い》
「え、ちょっと今失礼なこと言われた気がする」
「ママうれし?」
「嬉しいに決まってるよぉ~!」
号泣しながら麻人を抱きしめる。ああ、うちの子可愛い・・・
「開けてみてよ」
「うん!」
ラッピングを解くと、中からは銀色のネックレスが出てきた。
「それとね!」
麻人が見せたのは画用紙に描かれた僕の似顔絵だった。普段はおぞましい絵ばっか描いているのだが、それはとても綺麗な、優しい絵だった。
「ママにあげる!」
「・・・」
麻人は満面の笑みで僕を見ている。僕は麻人を抱きしめて言った。
「・・・ありがとう、大切にするよ」
「うん!」
「ああ僕の子マジで天使・・・」
感無量である。そうして、楽しい誕生日パーティーが過ぎていくのであった。