「KK、子供いたの?」
久しぶりに再開して聞いた一声がまさかのそれだった。俺は麻人を抱えて散歩していたところ、久々に亮太と出会ったのだ。
「再婚相手のな」
「えーじゃあ何?KKってバツイチ?」
「何度も言われるとなんか傷つくぞ・・・」
「へぇ〜」
「それと、あの時は悪かった」
「え?何が?」
あの時は緊急事態だったため直ぐ様家に帰るように忠告していた。
「交通事故を見かけたお前にあんな忠告して悪かった」
「え?いいよ別に。あの後家に帰ってから変な声が聞こえてきたし、多分ドア開けたら大変なことになってたと思う」
「それならいいが・・・」
「その子、名前は?」
「麻人って名前だ。ほら、挨拶しろ」
俺は麻人を降ろして、挨拶するように促す。
「僕、亮太って言うんだ。よろしくね、麻人くん」
「・・・」
すると麻人は近づくと無言で亮太の股間を蹴り上げた。
「はっ・・・!?」
「おいなにやってんだ!?」
痛みに悶絶する亮太、そして俺は麻人を叱りつける。
「大丈夫か!?」
蹴られた部分を手で押さえてうずくまる亮太に俺は天を仰いだ。
「痛ってて・・・」
「おい麻人!何故蹴ったんだ!」
「・・・」
麻人はそっぽを向いて答えない。
「あーもうなんでお前は男に対して金的をするんだ・・・?」
「あ、あはは・・・」
亮太の口から出たのは乾いた笑いだった。
「ごめんな、こいつ男に対して態度悪くて」
俺が頭を下げて詫びるが、偶然ある人物が通りかかる。
「あらKK~麻人に手間取ってるの~?」
****
一人の女性がリードを引っ張った状態でKKに近づいてくる。リードの先には首に黒い毛を持った白い大型犬のような動物だった。もしかしてすると大型犬より大きいかもしれないと思う。女性は全身を黒で統一し、所々アクセントに白が入っている服装で何より大きな胸に目がいってしまう。歩く度に揺れる胸に思わず目が惹きつけられた。
「はぁ、またお前はその格好で出歩いて・・・」
呆れたように言うKKは犬と女性の間に手を入れる。すると女性はリードを手渡して、それを麻人くんに手渡した。
「あら?その子は?」
「ああ、暁・・・子には言ってなかったな。亮太って言うんだ。結構前に俺に依頼してきたんだ」
「初めまして、KKの妻の暁子で~す」
暁子という女性は、KKの肩を寄せて、その大きな胸で挟んでいる。
「ど、どうも」
僕は苦笑いして挨拶をする。あの様子を見るにKKはかなり溺愛されていそうな気がしてきた。
「あと暁子、麻人が亮太に金的してた」
「麻人、お家に帰ったらお仕置きよ」
指を鳴らしながら言う暁子さん。
「流石にあれはやめてくれよ・・・」
「だって亮太くんのモノを蹴ったんでしょ?子供とはいえ、他人に対してそれは駄目よ」
「そういう問題か?」
KKは呆れて言うが暁子さんは聞く耳を持っていないようだった。
「ごめんなさいね、この子たまに人に対して態度悪くなる時があるから」
「いや、別に気にしてませんけど・・・」
「ほら、ごめんなさいでしょ?謝らなきゃ」
暁子さんはKKから離れて麻人くんの前にしゃがみ、頭を撫でながら謝るように言う。しかし麻人は顔を背けてそっぽ向くだけだった。
「んー、これはなかなか強そうね~」
暁子さんは少し困ったように言う。
「とりあえず麻人には後でお仕置きしてから謝罪の言葉書かせるから」
「謝らせるだけじゃダメか?」
物騒な発言をする暁子さんにKKは思わず口を挟む。
「勿論よ~、ごめんなさいも言えないようじゃあ立派な大人になれないからね~?」
「そ、そうか・・・」
暁子さんの鬼のような発言に苦笑いを浮かべるKK。恐らく過去に何かあったのだろう。これ以上は聞かないことにした。
「じゃあそういうことでまたね、亮太くん」
そうして暁子さんはKKの腕を引いて、この場を後にした。後日、KKから渡された手紙には〈キンタマけってごめんなさい 麻人〉と書かれていた。
それより、暁子さんって何者?