「落ち着いたか?」
「まあ・・・」
KKに介抱されて落ち着きを取り戻す。
「警察の方は?」
「全力を尽くしてる」
「そう・・・」
「暁人、無理にとは言わない。麻人を探すのを手伝ってくれ」
「いいの?」
「ああ」
KKが手を差し出す。僕はそれを無言で握り返した。
「無理だけはするなよ」
「分かってる」
僕は立ち上がると机の引き出しから1枚の紙を取り出す。その紙に麻人のことを思い浮かべながら念じる。
「念写か?」
「見せたことなかったね」
紙にシミが広がり段々と絵になっていく。
「これは」
紙に写し出されたのは黒い服を着て顔を布で隠し、傘を被った3人組だった。
「祟り屋か?」
「祟り屋?」
「ああ、金銭を受け取って人に呪いを掛ける奴らだ・・・暁人?」
写真を持つ手が震える。
「こいつらが・・・こいつらが僕の大切な麻人を!」
「落ち着け」
KKが僕の肩を掴む。
「そいつらの居場所は?」
「分からない・・・」
「だったら探しようがないだろ。1度戻れ、あいつらに話すぞ」
「・・・分かった」
僕は渋々KKの言葉に従う。悔しさと怒りでおかしくなりそうだった。
****
「お兄ちゃん大丈夫?」
「・・・」
麻里の言葉に暁人は首を横に振る。
「犯人は分かったが場所が分からねぇとな」
「犯人は?」
「祟り屋」
「なんですかそれ?」
「金の代わりに人を呪う奴ら」
麻里に簡単な説明を終えると暁人の方を向く。
「麻人、麻人、僕の麻人。大切な麻人、お願い早く帰ってきてお願い」
暁人の精神が限界に来ているのが分かる。これは時間の問題だ。麻人が見つかるのが先かそれとも───。不意に家電の着信音が鳴り響く。
「俺が出る」
受話器を手に取り、着信音が消える。恐る恐る受話器を近づけ
《おとーさん、おとーさん》
「麻人!?」
俺は声を上げる。暁人俺の方を見ると、静かに首を縦に振った。
《おとーさん?》
「今どこにいるんだ!」
《縺翫→繝シ縺輔s縺ッ繧¥縺阪※縺◆縺縺◆縺>縺溘>縺◆縺≠縺溘∪縺◆縺o繧後k繧上l繧九o繧九♀縺九縺輔s縺翫°繝シ縺輔s縺ゥ縺薙←縺薙繧¥縺阪※縺◆縺>縺溘>縺。縺後〒縺ヲ繧九■縺後∪縺」縺九↑縺。縺後〒縺ヲ繧九%繧上>縺薙o縺%繧上>縺ゅ>縺ォ縺阪※》
「っ!!」
耳をつんざくような音が聞こえる。俺は受話器を耳から遠ざけるがそれでも耳が痛い。
「麻人の声だ・・・麻人!!今会いにいくから!!」
暁人は部屋を飛び出す。それを急いで追いかけるが、あいつも相当キテるな・・・。玄関で靴もはかずに裸足のまま駆け出す。
「暁人!分かるのか!!」
「分かるよKK!!!だって僕と麻人は『繋がって』いるから!!」
顔も完全に緩みきっている。俺は必死に暁人の背中を追いかけた。道中、祟り屋の1人を血祭りにしていたが、オーバーキルにも程がある。
****
麻人、麻人、大切な麻人。僕の大好きな麻人、大切な僕の子供。
「麻人は今どこにいるの?」
「・・・っ、お、ま」
「何処にいるのって聞いてるの!!」
祟り屋の1人を血祭りに上げる。こいつらのせいで、こいつらのせいで、麻人は、麻人は!
「お前らが麻人を・・・僕の大切な麻人を!!」
祟り屋の1人の頭を殴りつける。何度も何度も殴りつける。でも足りない、全然足りない。もっともっと苦しめないと。
「麻人を返して!!」
「暁人!これ以上したら!!」
「KKは黙ってて!!」
KKに言われて一旦殴るのをやめる。KKは僕の肩を掴むと首を横に振る。
「暁人、気持ちは分かるが落ち着け」
「でも!こいつらが麻人を!!」
「分かってる。だからこいつらから聞き出すんだ」
KKの言葉に僕は頭を冷ます。そうだ、こいつらから聞き出してやる。
「お前、麻人を何処にやった?」
「し、しらな」
祟り屋の1人が否定する。僕はそいつのお腹を蹴ると踏みつける。
「麻人を!!僕の大切な麻人!!返して、返して、返して!!」
何度も何度も踏みつける。怒りで頭が沸騰しそうだ。
「おい・・・やめろ」
KKに体を止められる。僕は振り返ると睨みつけた。その気迫にKKは後ずさりをする。
「・・・わ、わかっ、た・・・お、おしえ」
「最初からそうしろよ」
祟り屋の1人から場所を聞くと、僕はKKと一緒にその場所に向かった。
「ここだな」
KKと共に麻人が居る場所にたどり着くと、扉を開け放つと同時に祟り屋の1人を投げ飛ばす。
「麻人!!」
中には手足を縛られた麻人の姿があった。が、服を剥ぎ取られ、身体中を傷だらけにされ、口には布を噛まされれれれれああああ麻人麻人麻人僕の麻人そそそそそそそんなそんなそそそそんなうううう嘘だ嘘だ嘘だこんなああ麻人麻人最愛の子こんなこんなこんなこんなあああああああ!!!
「いぃやぁぁあぁあぁああぁぁああああぁぁぁああ!!」
「暁人!落ち着け!!冷静になれ!!」
その場にへたりこんで啼き叫ぶ。KKの言葉も僕の耳には届かない。麻人にされたことを想像したくない。麻人麻人麻人僕の最愛の子麻人麻人なんでなんでなんでこんな目に遭うの!!麻人麻人ああぁぁ・・・僕の大切な麻人・・・!!
****
「麻人!!麻人!!なんで!」
へたりこんで泣き喚く暁人。麻人の身に起きたことを想像し、暁人は発狂した。
「久しぶりだな、祓い屋」
「今はそれどころじゃねえだろ、なんで麻人を拐った?」
「それをお前が知る必要はない」
「チッ・・・」
「・・・お前ら」
ゆらりと暁人が立ち上がると、祟り屋にゆっくりと近づいていく。
「僕・・・私の」
暁人の声が女の声になっていく。
「私の麻人を・・・」
暁人の目が完全に据わっている。髪も段々と伸びて肩幅がどんどん狭くなる。
「よくも汚して・・・」
筋肉質な骨格から緩やかな骨格に変わり、胸が膨らみ、腰回りが細くなっていく。
「穢して・・・」
胸回りが窮屈になったのか、シャツのボタンを外し、はだけさせた。
「ああああぁああぁぁぁあぁぁぁあ!!」
暁人の体が黒く染まっていく。それに合わせて壁や床、天井にもにも穢れが広がり血が滲み出ていく。
「私の麻人を穢したなぁぁあぁあぁあ!!よくも!よくもよくもよくもぉぉおぉぉおぉ!!」
身体から腕を生やし、それを全て祟り屋に伸ばす。俺はこの光景を正気を保とうとしながら見ている。何度見ても慣れねぇな・・・この光景は。
****
祓い屋と彼の子供を連れ去り、生態を調べていた所に連れ戻しに二人が来た。だが、彼は一体何者なんだ?一瞬にして周りの景色を変え、地獄とも思わせる程の禍々しい景色に早変わりだ。赤い空が広がり、川が流れ、水面には黒い睡蓮が咲き誇っている。
「・・・まぁ・・・まぁ」
すると子供が一人、足にすり寄って来る。それを引き剥がすが、子供は諦めもせずにすり寄ってくる。
「うぁ・・・あ」
「・・・なぁ」
「あ、あ・・・」
子供が川の中から這い上がってくる。川はそれほど深くないはずだが、どこから湧き出ているのか?何も纏わずにいる身体に血や穢れがべっとりと付いている。
「まぁー」
「あー」
「うぁあー」
這い上がってきた子供が我々に蛇のように絡み付いてくる。振り払おうとするが、子供とは思えない力でしがみつく。
「うっ・・・」
「ねぇ」
女の声が聞こえると同時に後ろから多数の腕で身体を絞めつけてくる。
「聞こえるでしょう?この子達の寂しさが」
甘ったるい声が耳の辺りで囁いてくる。
「ずっと『愛』をもとめているのよ。私の麻人に手を出したもの、この子達に『愛』を与えてくれるのよねぇ?」
ぬらぬらと身体を這う手が、子供が、どんどん近づいてくる。
「私の子供達は寂しがり屋だからたくさん愛してあげてねぇ?」
子供達の隙間から見えたのは
「アイシテヨ」
鮗サ莠コ鮗サ莠コ蜒輔�鮗サ莠コ蜒輔�螟ァ蛻�↑鮗サ莠コ蜒輔�蜿ッ諢帙>蟄舌%繧薙↑縺ォ繧ょー上&縺上※蜿ッ諢帙¥縺ヲ諢帙i縺励¥縺ヲ閼�¥縺ヲ迢ゅ>縺昴≧縺ァ諱舌m縺励¥縺ヲ諤悶>蟄�諤悶°縺」縺溘%繧上°縺」縺溘h縺ュ螟ァ荳亥、ォ繝槭�縺後>繧九°繧牙、ァ荳亥、ォ螳牙ソ�@縺ヲ諤悶>繧ゅ�縺ッ逧�賜髯、縺励◆縺九i螳牙ソ�@縺ヲ鮗サ莠コ縺ッ繝槭�縺ョ閭ク縺ョ荳ュ縺ァ縺翫�繧薙�縺励※逕倥∴縺ヲ縺ヲ縺�>繧薙□繧�
「麻人!!ごめんね!!ごめんね!!」
何も身に付けていない暁人が麻人を抱き締める。部屋中血塗れた状態だが今はそれどころではなかった。暁人は涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら麻人に謝り続ける。麻人は目をぱちくりとさせ、泣きじゃくる暁人をじっと見つめる。傷だらけになった小さな手を精一杯伸ばし、暁人の頰に触れた。