「KKおはよー!」
「誰だおめぇぇぇ!?」
俺は布団の上で下半身丸出しの状態で目覚めた上に、小学生くらいの角を生やした子供が跨がっているという不思議な光景に思わず叫んでしまった。
「お、お前アキトなのか!?」
「そうだよ!」
ニマッと笑うアキト。だが下は何も穿いていなかった。
「アキト、いいからズボン穿くぞ」
****
「凛子!絵梨佳!」
「子供の成長って早いわね」
「こいつの場合、早いどころじゃないけどな」
アジトで凛子と絵梨佳に懐くアキト。服は凛子の買ってきたパーカーのサイズが大きかった為、事足りた。
「なんなんだよ、朝起きたらズボン脱がされてるわ、いきなり成長してるわ、服が入らなくなるわ、パンツが行方不明になるわ、朝っぱらから勘弁してくれ。俺なんかしたか?」
「散々な目にあったんだね」
絵梨佳が同情の眼差しを向けながら、コップにお茶を注いで俺に手渡す。
「ありがとう」
俺はコップを受け取ると、口に運ぶ。
「KK、その絆創膏どうしたの?」
「これか?」
俺の左の薬指に巻き付けている絆創膏を指差す。
「朝起きたら、怪我してたから念のためだ」
「切ったの?」
「いや、刺された感じの痕」
「それよりズボン脱がされたってなにかしたの?」
凛子からの冷ややかな視線が刺さる。
「なにもしてないよ」
「なにも?」
「・・・ナニモシテマセン」
俺は凛子の視線から逃れるように、お茶を飲む。そんな俺をアキトがジーッと見ていた。
「な、なんだよ」
「KK、おねしょしたの?」
「ブーーーーッ!!」
思わずお茶を噴き出した。
「してねぇよ!!そもそも身に覚えがねぇんだよ!!」
「ひっ・・・ううっ」
俺の声にビクッと身体を震わせると、泣きそうになる。
「あ!泣かせた!!」
「子供を泣かすなんて最低ね」
「俺が悪いのかよ!?」
二人に責められているとき、アキトは俺を見てニマッと笑った。
****
「あー疲れた」
「KKご飯」
家に戻り、仰向けになる。あまり動いていないのに、妙に疲れていた。
「今日は適当に出前取るか」
広告を見ながら電話を掛ける。
「お待たせしましたー」
しばらくして出前が来た。たまたま釜飯の広告が入っていたので頼むことにした。
「はい、どうも」
出前を受け取ると、玄関に向かう。するとアキトが付いて来た。
「今食わせてやるから」
釜飯と出汁のポットをリビングに持っていく。回収用の袋がついているので、食べ終わったあとは袋に入れて玄関先に置いておけば回収しに来るシステムだ。
「KKこれなに?」
「釜飯だ、旨いぞ~」
「食べてみたい」
「釜飯食ったことねぇのか?」
アキトはコクリと頷く。そして釜の蓋を外す。蒸気があがり、匂いが部屋中に広がる。食欲をそそる香りだ。アキトは興味津々といった様子で眺めている。
「とりあえず食うか」
「うん!」
俺はアキトの分をよそって渡す。アキトはそれを受けとると、釜飯をまじまじと見ている。そしておもむろに匙を手に持つと、食べ始めた。
「旨いか?」
「美味しい!」
「そうか良かった」
アキトは美味しそうに釜飯を食べる。それを見て、俺も食べることにした。
「KKの分ちょうだい」
アキトが俺の釜飯を見て、そう言う。俺は釜飯をよそう。
「ほらよ」
「ありがとー」
アキトは受け取ると食べ始める。するととても幸せそうな顔をするのでこっちも嬉しくなる。しばらく食べ進めたところで出汁を注ぐ。お茶漬け風に食えてこれがまた旨い。
「なにこれ?」
「出汁っていう液体だ。それに漬けて食うんだ」
俺は説明しながら、アキトに出汁の入った容器を渡す。アキトは興味津々といった様子で容器を持つと、出汁を釜飯に注いだ。
「いい匂い」
「だろ」
「食べていい?」
「いいぞ」
アキトは釜飯に出汁を注ぐと、箸でかき混ぜて食べる。二人で食べると、あっという間に食べきってしまった。
「おいしかったー」
「そうだな」
半分以上をアキトに食べられてしまったが、うまそうに食べてる顔を見るとなんだかどうでも良くなってしまった。
「KK、KK」
「んー?」
身体を揺さぶられ、俺は目を覚ます。いつの間にか寝ていたらしい。確か昨日は釜飯を食べてそのまま・・・あれ?アキトは?
「アキトは?」
「目の前にいるじゃん」
俺が目を開けるとそこには高校生くらいの青年がいた。