夕暮れ時。二人で帰った道も、ここで途切れてしまう。繋いでいる手を離したくないのは、先輩も一緒だったりするのかな?
「ありがとうございました。ここまで送ってくれて……」
「いや、いいんだ。恋人なんだからこれくらいさせてくれ」
恋人。先輩からそう言われる度に口が緩む。俺が北斗先輩の恋人だなんて、まだ慣れないな……。
「じゃあ、」
しっかり握ってた先輩の手が離れてっちゃう。
俺は、まだ……
「気をつけて帰るんだぞ」
先輩の握る力が弱くなった途端、俺は強く握ぎって自分に引き寄せ、先輩にキスをした。
「……」
ふにっとした柔らかい感触はすぐに消えた。間近で見た北斗先輩は凄く綺麗で見とれてしまう。
同時に俺は我に返り、ぱっと手を離した。夕日を背にした先輩は驚きを隠せないでいた。
「す、すいません……!嫌、でした?」
冷や汗が背中に流れる。穴があったら入りたいとはまさにこの事。この場から逃げたくて一、二歩下がったら、離したはずの手は繋がれていた。
「嫌なわけないだろう」
そう言われた後、俺の唇に先輩のそれが重なった。
本当は普通の帰り道になるはずだった。
柔らかい感触を二回感じられた今日を、忘れることはできない。