北友の夏。線香花火編 俺たちは、ふっ……と黙り込んだ。
「せーの」で蝋燭の火に線香花火の先を翳し、オレンジ色の球が出来たら、あとは動かず、その先をじっと見つめる。
「先輩と花火がしたい」と言ったのはつい数日前。俺はすぐ買いに行ったのを覚えている。好きな人の為ならなんでもしてやりたい。当然のことだろう?約束の日、花火の詰め合わせセットを見て喜ぶ友也はすごく可愛かった。
線香花火が先に消えた方が負けという勝負を持ちかけたのは友也だった。隣り合ってしゃがみこみ、二人で集中している為、自然と静かな時間が流れる。
ふと、線香花火から目を逸らし、友也を見る。「こっちを見てくれ」なんて言う隙を見せないほど真剣な顔も心底愛おしく思えて、口元が綻んだ。
すると手元が乱れ、俺の花火はアスファルトに音もなく落ちてしまった。
「……あ、」
友也のを見るとパチ、パチ……と音を立てながら小さな火花を次々と散らした後、すぐに消えた。
「……俺の勝ち、ですねっ」
そう言って友也は俺を見て、笑った。
そんな夏を過ごすことができたら、どんなに幸せだろうか。
この思い出は、俺の作り物に過ぎない。
なぜなら、本来居るはずの場所に、
お前は。