先輩の綺麗な手が、俺のシャツのボタンを一つ一つ外していく。
ボタンを外す先輩の手に俺の心臓の音が伝わっていきそうですごく恥ずかしいのだけれど。これからもっと恥ずかしいことをするのだと思うと、身体の内側から熱くなってくる。
視界が涙で歪んだと同時に、先輩の手が止まった。俺の感覚では、ボタンはまだ一つ外れていないけど……。
「……怖いか?そんな怯えた顔をして」
……え、
「俺は友也に、怖い思いをさせたいわけではなかったんだが……」
……待って、
「今日はこれくらいにしよう」
……そんな、
「やはり今の俺達には早すぎた。こういうのはまた改めて……」
……そんなの、絶対。
「……嫌!!」
「…友也……っ」
今のは、俺の口から出たのか?
自分でも何をしたのか覚えておらず、視界が開けて初めて見たのは、先輩のビックリした顔だった。
俺は一呼吸おいて、まっすぐ先輩を見る。
「ここまでしておいて、やめるなんて言わないでください……」
「友也、」
やばい、
「こういうことをされてもいいくらい、できるなら最後までしたいくらい、俺は先輩のことが好きなのに」
思ってることと涙がどんどん溢れて、
「先輩こそ、こういうことするの、嫌になったんですか……?」
どうにかなってしまいそう。
「おい、友也……」
「俺とえっちするのは、嫌です、か……んっ……?!」
全部言い切る前に、先輩に唇を塞がれてすぐに舌を差し出される。何度も角度を変えながら舌を口の中で追いかけ回され、捕まるとねっとりと絡め取られる。逃げようとしても、先輩に後頭部を押さえられて身動きが取れず、俺は先輩の濃ゆいキスを受け取るしかなかった。
しばらくして唇が離れる。伸びた銀色の糸がぷつりと切れた。
「……嫌だったらはじめから友也をここに連れてこない」
俺は友也を、抱きたい。友也に、触れたい。
先輩の真っ直ぐ過ぎる言葉と頭を撫でる手の優しさで、限界まで目に溜まっていた涙がぽろぽろと零れたが、先輩がすぐに拭ってくれた。
「……できるだけ、優しくする」
先輩の手が俺の頬を包んだ。冷え性だという先輩の手のひらのつめたさが気持ちよくて、思わず眉が下がる。
先輩は俺と唇を重ねながら、まだ外していない最後のボタンに手を伸ばした。