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    卒業

    #北友
    northFriends

    付き合わない世界線の北斗と友也 卒業の季節が迫ってきた。
     この頃になると、夢ノ咲学院に存在する部活動のほとんどが、学院の外から後輩を見守っていく三年生と新たに部員をまとめる二年生の間で引き継ぎが行われる。遠征申請書や予算報告書などの書類の書き方や部費の管理の仕方など覚える事が山積みで、年度の変わり目は下級生にとっての踏ん張り時だ。
     演劇部もその一つに過ぎない。一年間部長を務めてきた北斗の卒業公演を終えた今は、新部長になる友也に仕事を引き継いでいる真っ最中。部員数は渉が卒業した時点で二人だけだったが、北斗と友也のアイドルとしての知名度も手伝ってか、役者だけでなく「裏方をやりたい」と言う生徒も入ってきた。後輩達は皆、演技力や表現力、演出技術を高めようと日々切磋琢磨し、時には雑談をして笑い合う仲の良い間柄だ。先輩である二人は、そんな下級生達を温かく迎え入れ、毎日演技のアドバイスをしたり、アイデアを出し合ったりしてサポートしてきた。
     北斗は今月末で、その役目を終えようとしている。
     北斗は部室にあるクローゼットを開け、衣装の整理をしていた。自分が着たことのある衣装を広げる度に北斗の先輩である渉からのダメ出しが今でも思い出される。「あの時の北斗くんは散々でしたねぇ〜!」などと今にでも天井から声が聞こえてきそうだ。
    「北斗先輩、本当に卒業してしまうんですね」
     一緒に備品の整理をしていた友也がぽつりと呟いた。北斗には背中を向いていて表情こそ見られないものの、その声は寂しそうだった。
    「変態仮面……、日々樹先輩の時もそうだったんですけど、卒業式前に衣装の整理をすると実感します」
    「……寂しいのか?」
     北斗の問いに、友也は勢いよく振り向いた。
    「そりゃあそうですよ!北斗先輩と定期公演できなくなるし、部室で二人きりになることもできないですもん!」
    「二人きり?」
     後輩が入った今こそ機会が少なくなったが、北斗と二人で部室にいた時は友也にとって幸せの時間だった。北斗の演技や歌声、衣装を試着している姿、北斗の笑顔を間近で見る事のできる最高のシチュエーションが、もう少しで無くなってしまうのだ。
    「俺、北斗先輩がいたから、変態仮面に何をされても演劇部を辞めずにいられたんです。北斗先輩は俺にとって尊敬する人で、憧れで、」
     大好きな人なんです……!
     頬を紅潮させながら必死に言葉を紡ぐ友也を見て、北斗はいても立ってもいられなかった。
     気が付けば、友也の手を取っていた。自分とは違う、成長途中の柔らかい手を握り、北斗の冷えた指先が温かくなっていく。
    「!北斗せんぱい……っ」
    「ここまで慕ってくれる後輩がいて、俺は幸せ者だな」
     俺も、友也が大好きだ。
     北斗はそう言って微笑んだ。宝石のように綺麗な青い瞳で真っ直ぐ見つめられ、憧れの人に「大好き」と直接言われた友也は心臓がバクバクして限界寸前だった。恥ずかしくてこの場から立ち去りたかったが、この手を離すと元には戻らないと察し、何もできなかった。
     握手会に来たファンの子のような反応をする友也が益々愛おしく思えて、北斗は続けた。
    「友也、ぎゅってしてもいいだろうか……?」
    「ぎゅっ……!?」
    「嫌だったらいいんだ」
    「……俺も!ぎゅってしたい、……です」
    「ふふ、よかった」
     北斗が手を握っていない方の腕を友也の背中に回すと、友也もおずおずと北斗の背中に手を回した。自分の頭を撫でる北斗の手が優しくて、友也は北斗の胸に顔を埋めた。
     北斗の卒業まで残り数週間。
     二人は一緒に活動できる少ない時間を大切にしようと心の中で誓うのだった。
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