日曜日。
最寄り駅からほど近いデパ地下で、友也はショーケースとにらめっこをしていた。
「う〜ん……」
友也が見つめていたのは、チョコレート。バレンタインを明日に控えた今、どれを渡そうか色々見てまわりながら悩んでいた。
送る相手は、ただ一人。
ショコラフェスでファンに渡すためのチョコレートを学校の調理室でせっせと作ったのは記憶に新しいが、友也はその時よりも真剣な顔をしていた。
ブラウニー、トリュフ、ギモーブ、テリーヌ……。
様々なチョコレートのお菓子がフロア一体に陳列されていて、見れば見るほど迷ってしまう。
これ美味しそう……!でもあの人の苦手な物だったらどうしよう?……あ、これなら食べられそう。だけど値段が……。
頭の中で呟きながら、ぐるぐると考えていた。
「あ、」
ふと、ある商品が目に留まる。小ぶりで、あの人にぴったりの色であしらったラッピング。中身もシンプルで自分の目で見る限り、あの人に送りたい物として申し分はない。
「……これだ」
友也はすかさずそれを手に取ってレジへ向かう。この時から、友也の心臓は大きく鳴りっぱなしだった。