書き始め2022「……」
友也の前に立ちはだかる、大きく「小吉」と書かれたおみくじ。
「小、吉……!?」
大吉でもなければ凶でもない。絶妙に微妙な結果を前にして、友也はなんとも言えない気持ちになった。
後からおみくじを引いた北斗も後ろからやってきた。我らが王子様 北斗先輩は大吉のおみくじをもって颯爽とやって来るだろう。友也はそれを期待して振り向く。
「北斗先輩はどうでした?」
「末吉だ」
北斗はそう言って引いたおみくじの結果を友也に見せた。確かに赤く大きな字で「末吉」と書かれている。自分と同じくらい微妙な結果を見て、再びさっきの空気になったと同時に、北斗先輩もちゃんと人間なんだなと友也は思った。
「……なんか微妙ですね」
「そうだな」
二人で一緒におみくじ掛に結び付け、甘酒を買ってから踵を返す。紙コップから伝わる甘酒の温かさが手のひらから全身へと巡る。口をつけるとほんのりと酒粕の香りが鼻を抜けた。北斗は既に飲み終えて紙コップをゴミ箱に捨てに行ったが、友也は「あちっ」と言いながら一口ずつ甘酒を飲んでいた。どうやら熱いのは苦手らしい。
「今年も大吉引けると思ってたのに〜」
「それは残念だったな」
来年は引けるだろう、と慰める北斗に優しさを感じながら、友也ははっとした。
「あ!でも!今年は北斗先輩と一緒に来れたから気分は大吉ですっ」
「……っ!そうだな」
去年、生放送の仕事で一緒に来られなかったことを思い出し、鼻を赤くしながら笑う友也を見て、北斗の眉が下がる。北斗はこんなに可愛い事を言う友也が心底愛おしかった。
「……友也、寒いだろう。マフラーを貸してやる」
そう言って、北斗は自分の首に巻いていたマフラーを外し、友也の首に巻こうとする。
「?俺はもう巻いてますよ??」
既にマフラーを巻いている友也は訳が分からずキョトンとした。友也が理解するよりも前に、北斗はマフラーを結ぶ直前で顔を近づけ、そっと口付けた。
「…………!!?!?!」
北斗が唇を離すと、友也は甘酒を両手で持ったまま氷のように固まってしまった。目の前の北斗の顔も眩しすぎて直視出来ない。目を逸らしたくても、北斗に見つめられて逸らせなかった。
そんな友也が今言えることは二つ。
キスが甘かったことと、おみくじの結果が悪くても幸せだってこと。