某日の夜。友也はとても気分が良かった。
明日は同棲している北斗と揃ってオフということで、二人きりで夕方から飲んでいたのだ。友也にとっては長年の夢だったらしく、ウキウキしながら食料やお酒を調達していた。北斗も友也に付き合う形でおつまみを作ったりして一緒に準備を進めていった。
十八時から始まった二人飲みは凄く盛り上がった。ユニット内や事務所であった出来事、家族の事など話は尽きない。何より大好きな北斗と一緒に飲んでいることが嬉しくて、友也はついつい酒が進んでしまっていた。
「ん〜……」
あれから二時間ほど経った。
テーブルの上には北斗が作ったおつまみと空っぽになった缶ビールの数々。
北斗に色んな話をしていた友也はすっかり出来上がっていた。背骨を抜かれたのではないかというほどぐにゃぐにゃになった友也を北斗の肩が受け止める。友也はそのまま肩に頭を預けると「……ふふ」と口角を上げた。
「ほくとせんぱ〜い」
「……なんだ」
「な〜んで〜もな〜いで〜〜す!」
「……そうかぁ」
北斗は自分にもたれる友也の肩に腕をまわした。そんな北斗もしっかり出来上がっていて、頬を赤く染めながら船を漕いでいた。友也は普段見られない酔った北斗の顔を眺めていた。
「せんぱい、酔ってますかぁ〜?」
「……酔っとらん」
「え〜?酔ってないんですかぁ?」
「酔っとらん!」
「じゃあもっと飲みましょうよぉ〜」
どうぞどうぞ〜と友也はまだ残っている缶ビールを手繰り寄せ、北斗のグラスに注いだ。シュワシュワとグラスの中で白い泡が弾ける。
「友也も飲むか?」
「はい!飲みたいです!」
「わかった、ん……」
そう言うと北斗はビールを口に含んだ。てっきり注いでくれると思っていた友也が不思議そうに見つめていると、肩にまわっていた手が友也の頬を包み、ぐっと引き寄せたかと思うと唇を塞いだ。
「んっ……」
友也の口が少し開いたところにビールが流し込まれるが、ほとんどが友也の口に入らずに顎を伝ってズボンの上にだらだらと落ちた。
「あぁ……駄目だぞ、上手に飲まないと」
「えへへ〜」
「次はちゃんと飲むんだぞ」
「は〜いっ」
北斗はもう一度ビールを口に含む。元気良く手を上げた友也の唇を再び奪い、ビールを流し込んだ。友也の喉が鳴ったところで唇が離れる。
「ん〜……っ」
「……!」
しかし今度は友也が唇を奪った。北斗の頬を両手で包んで引き寄せ、唇を押し付ける。ぴちゃぴちゃとわざとらしく水音をたて、混ざった唾液が二人の口の端から零れ落ちた。北斗は友也の腰を抱き、いつになく積極的な友也を受け入れた。
しばらくして唇を離すと、銀色の糸が伸びてすぐに切れた。友也は北斗の首に腕をまわし、しかめっ面をして見せる。
「……先輩のちゅ〜、苦いです」
「じゃあ甘くなるまでするか?」
「……うん」
友也は頷いて、首にまわした腕をそのままに北斗の膝の上に跨った。自分の脚の間で固い何かを感じたが、それが何なのかを考えられるほど酔いは覚めていなかった。
北斗も友也の腰に手をまわし、くっと自分に寄せた。愛おしそうに見つめる視線は、まさしく恋人のそれだった。
「……もう飲まないのか」
「もういらない。先輩だけでいい」
そう言って二人は角度を変えながらゆっくりと唇を合わせる。
置き去りにされたビールやおつまみ達は何を思うだろう。ただただテーブルに居座り、友也の背中を眺めるしか術はなかった。