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    冷や酒🍶

    @hiyazakeumai

    カヲシンとか書いてる

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    冷や酒🍶

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    眠くなっちゃう🐰シンジ君の話です

    #🐺🐰

    🐺🐰カヲシンの話①最近、シンジ君の様子がおかしい。
    いつも早起きして美味しい朝食を用意してくれているシンジ君が最近は良く寝坊するようになった。
    食事は自分が用意すれば良いし、毎晩疲れているだろうシンジ君をゆっくり休ませてあげなくてはと考えていたのでよく眠ることは良い事だと思う。
    小さな身体さらに小さく丸めて眠る姿は庇護欲を掻き立てる。小さ過ぎて腕の中にすっぽりと収まってしまう愛らしい番はまだ夢の中にいるようだ。
    美しい紺碧の瞳は瞼の奥に隠れているが、時々ぴくぴく動く耳に優しくキスをして柔らかな頬を無でる。それだけで心が満たされる気がした。
    「……ん…………カヲル、くん……?」
    「やぁ、お目覚めかい」
    「……おはよう、カヲルくん。……ぼく、また寝坊しちゃった……?」
    寝顔が可愛くて触りすぎてしまった。瞼が震え、深青に染まった瞳が目の前に姿を現す。起き上がりながら眠そうに瞼を擦るシンジ君の肩を支えて、その顔を覗き込んだ。
    「まだ寝ていていいんだよ」
    「ううん、大丈夫。……ごめんね。最近……寝坊してばかりで」
    「平気だよ。こうやって君とゆっくり出来る朝なら大歓迎さ」
    とは言え、シンジ君の眠気は朝だけでなく日中も続いているようだ。家事をしながら転寝をしてしまったと真面目な彼に何度か謝られた。
    昼寝くらい好きなだけすればいい。家事だって無理にする必要はないと言っても「僕はカヲル君の奥さんだから」と言われてしまうと止めさせることは出来なかった。
    自分の縄張りは肉食種の領地の中にある。シンジ君が暮らすには危険が多く、僕が外で仕事をしている間、彼はずっと家の中に閉じこもっている。家事をすることはその退屈さを紛らわす為でもあった。
    「ご飯、作るね」
    ベッドから起き上がった彼を追いかけるようにして立ち上がる。ふらついているのは腰が立たないからだろう。やはり僕のせいなのか。
    「シンジ君。朝食なら僕が作るよ」
    「……え? でも」
    倒れてしまいそうで見ていられなかった。台所へ向かうシンジ君を背後から抱きかかえて、ベッドに逆戻りする。ベッドの上にそっと下ろすと、シンジ君が不満そうな顔で僕を見ていた。しかし、こればかりは譲れなかった。
    「カヲルくん……」
    「今日は僕が作るから、休んでいて。もしかしたら風邪をひいているからかもしれないし、無理をして酷くなると良くない」
    「でも、食欲だってあるし。……眠たい以外は何ともないよ」
    確かに風邪の症状は今現在はなさそうだ。けれど、いくらウサギ族が頑丈だと言っても身体は小さい。オオカミ族が基準の自分とは頑丈さのレベルも異なるだろう。
    「それでも、眠りを欲するということは何らかの変化があったはずなんだと思う。良い子だから、今日は素直に甘えて欲しいな」
    「……心配しすぎだと思うけどなぁ」
    頭を撫でると言葉とは裏腹に嬉しそうに目を細めた。どうやら説得に成功したようで、シンジ君が布団に潜り込むのを確認して僕は台所へと向かう。
    シンジ君と出会うまで一人暮らしだったので料理の腕はそれなりだと自負している。起きたばかりなので胃に優しい物を作ろう。 ミルク粥とかどうだろう、とシンジ君に確認しようと振り返ったが、彼は布団にくるまってすやすやと寝息を立てていた。
    やはり無理をしていたのだろう。もう一度起きるまで寝かせてあげた方が良さそうだ。空腹になれば自然と目を覚ますだろうから。再度ベッドに戻り、寝顔を見つめてみた。
    ただ眠っているだけのように見える。肌のツヤも、血色も良いし、焦げ茶色の毛並みも綺麗だ。冬が近づくと睡眠時間が増加する傾向にあるが、ウサギ族は冬眠はしないし寒さにも強いと言っていたのを思い出す。ならばなぜ、シンジ君は眠ってしまうのだろう。一度医者に診せた方がいいのかもしれない。
    「僕が、必ず守るからね」
    生涯一人だけの番を守れるのは自分だけだ。何があっても、どんなことをしても、必ず守ってみせる。





    「話って何よ」
    まずは情報収集を兼ねてネコ族のアスカに話を聞いてみることにした。彼女とマリはウサギ族とも親しく何らかの情報を期待出来る。
    「最近シンジ君の様子が変なんだ」
    「はぁ? 変って何よ、浮気でもされたの?」
    「何を言っているんだ君は」
    心底意味がわからない。シンジ君に限ってそれは有り得ないし、もし万が一そんなことがあったとしても僕が気付かないはずがない。シンジ君に纒わり付く異物を嗅ぎ取ることなど造作もないのだ。
    「……冗談に決まってるでしょうが。怖いわよ、顔が」
    「僕は真剣に心配しているんだ」
    「わかった! わかったから! さっさと話しなさいよ」
    実は……と、最近のシンジ君の様子について詳しく説明する。眠る時間が極端に増えたが、食欲はあるし、健康体であることも。こうして話している間にも彼が一人で眠っているかと思うと心配だった。戸締りは確認したが。
    「あいつが寝坊助なだけじゃなくて?」
    「少し前まではこんなことはなかったはずだ。一度医者に診せた方が良いと思うんだけれど」
    「ふーん。なら、ウサギはウサギ族の医者に診せるべきね。肉食種とは造りが違うんだから」
    「そうだね」
    シンジ君のことを思えば当然そのような結論になった。ただ、ここからウサギ族の領地まではかなり距離がある。だが、シンジ君に長旅をさせるのは気が進まない。彼と番になってから、出来る限り自分のテリトリーからシンジ君を出したくないと思うようになった。
    閉じ込めようという考えはないはずだが、どうしても彼を巣から出したくない。だとすると、医者の方に出向いてもらうしかないか。
    「あんたが何考えてんのか、何となくわかるけど。シンジをあんまり動かさない方がいいのは確かね」
    「何か思い当たることでも?」
    「……あんた本当に気づいてなかったの!?」
    「何をだい?」
    ウサギ族の病についての知識は残念ながらほぼない。これを機に大切なシンジ君のことをもっと理解しなくては。と、考えていると、大袈裟な溜息を吐いたアスカに睨まれた。
    「私も確証があるわけじゃないけど……」
    睡眠時間の増加、食欲はあって、身体は健康体。その答えをアスカは知っているようだ。
    「寝不足じゃないなら。どう考えても妊娠してるでしょ。……あんたら夫婦なんだから、それくらい気付きなさいよね」
    「妊……娠……?」
    聞き間違い、ではないようだ。睡眠時間の増加が妊娠の兆候だという知識はあった。知識はあった、が。僕らにはまだまだ先のことだと思い込んでいた。
    種族が異なれば妊娠する確率は下がる。それに僕と番になったことで、シンジ君の身に性転換が起こったが、彼の身体が女性体として安定してからそれ程経っていなかった。
    「あとは体温が高くなったり、胸が張って痛くなったり、情緒不安定になったりとかだっけ。まあ、医者に診せるのが一番だけど」
    言われてみると思い当たる節はある。最近のシンジ君はいつもぽかぽかしていたし、ふっくらと膨らんできた胸に触ると痛がった。急に泣き出すこともしばしばあり、泣いている本人も原因が分からずに戸惑ったこともある。
    「妊娠、していたのか」
    「多分だけどね」
    「僕、帰るよ。ありがとう」
    「ハイハイ、じゃあね」
    さっさと帰れ、と顔に書いてあったがその声は明るかった。





    「シンジ君、起きているかい?」
    自宅に戻りシンジ君の姿を探す。出掛けたのは一時間くらいなのでまだベッドにいるだろう。そう考えて寝室に向かったが、ベッドの上にシンジ君の姿はなかった。そこにあるのは綺麗に整えられたシーツと布団と枕だけ。今日は起きれたのだろうか。
    「シンジ君、一体どこに……」
    耳を澄ませてみるが、何の音もしない。起きて活動していれば物音の一つくらい聞こえてくるものなのに。もしかして外に出たのかも、と一瞬考えるが草食種で基本的に怖がりの彼が一人で外出するなんて考えられなかった。
    「シンジ君」
    彼はきっと家の中にいる。家の中が安全だと知っていても、その姿が見えないのは不安だ。返事がないから、どこかで転寝している可能性が高いとは思う。
    名前を呼びながら思い当たる場所を一つ一つ探していくと、あっさりとシンジ君を見つけることが出来た。彼は浴室横の脱衣所でタオルやシーツに包まって寝ていた。
    「良かった、ここにいたんだね」
    多分洗濯をするつもりだったのだろう。洗い物を仕分ける途中で眠くなったようで、その手は僕のシャツを握り締めてた。
    「シンジ君、こんな所で寝るのは身体に良くないよ」
    起こすのが忍びないくらいにとても気持ちよさそうに寝ていたけれど、柔らかい頬に触れて声をかけた。ふさふさの耳をぴくんと跳ねさせてシンジ君が薄らと目を開く。
    「ん……あれ……カヲル君? あれ? 僕、洗濯するつもりで……また寝てた?」
    「そうみたいだね」
    眠り込んでしまう理由がわかれば、不安に思うことは無い。ただ床で寝るのはお腹に良くないので、今後注意が必要になるだろう。シンジ君は自分の身体の変化にまだ気付いていない。つい最近まで男性体として暮らしていたから当然だ。僕が説明しないままだと、自分を病気だと思い込み落ち込む姿が目に浮かぶ。それだけは駄目だ。
    「シンジ君、話があるんだ。聞いてくれるかい?」
    大切な話を床に座ったまますることは出来ない。シーツの海からシンジ君を抱き上げるとひらりと何か揺れた。視界に捉えさそれを注視すると、彼の手に握られていたシャツだとわかった。
    「そのシャツがどうかしたのかい?」
    ギュッとシワが出来るくらいの力で握り締めていたことに気づいていなかったらしい。自分の手を見てシンジ君が頬を赤く染めた。
    「あっ……これは、洗濯物分けてたらカヲル君の匂いがして……嗅いでたら安心して、寝ちゃった……みたい……」
    「…………っ」
    突然の告白に息を飲む。目の前にある顔を見つめると、シンジ君の耳が恥ずかしそうに垂れていった。番の匂いを好むというのは理解出来るが、実際にそれをされるとは思わなかった。彼がいつもシーツに包まって眠っていたのは僕の匂いに包まれていたかったからだったのか。これは、破壊力があり過ぎる。可愛すぎて今すぐ食べてしまいたい。いや、待て、それは駄目だ。深呼吸をして落ち着こう。
    「……か、カヲル君……?」
    「……何でもないよ、シンジ君。リビングで話をしようか」
    「うん」
    衝動を抑えながら笑いかけると、シンジ君が安心したように微笑み返してくれる。シャツを握ったままだったけれど、奪い取るという選択肢はなかった。本物がいるのにシャツを手放さないことに、少し妬いてしまいそうだけれども。
    そこは冷静になって、僕はシンジ君を抱えてリビングに移動した。抱いたままソファーに腰掛ける。膝に乗せたシンジ君はとても軽くて、こんな身体で本当に子供を産めるのかと心配になってしまう。
    「カヲル君、話ってなに? ……もしかして…………僕が寝てばかりだから、嫌いになっちゃった……?」
    「何を言ってるんだい。そんなわけないだろう」
    「だって、怖い顔してるし……」
    そう言えば、考え事をすると真顔になってしまう癖があった。シンジ君にはそれが恐ろしく感じるらしいと知ってからは、なるべく笑顔でいるように心掛けていたのに。
    「……ちゃんと家事できなくて、ごめんね……」
    「謝らなくていいんだ」
    「でも……」
    僕の腕の中で、しょんぼりと表情を曇らせた。そんな顔をする必要なんてないと言うのに。もしシンジ君の体調の変化が妊娠のせいでなかったとしても、別に構わない。病気だとしたら一刻も早く治療しなければならないが、家事に支障が出ているからと言って彼を責めるつもりはなかった。一生懸命に尽くしてくれることは、とても嬉しく思う。
    けれど僕はシンジ君にそんな役割など求めてはいなかった。彼が傍にいて、言葉を交わし触れ合えるならそれでいい。何もしなくても、何も出来なくても、問題ないのだ。これを言うと家事にやり甲斐を見出している彼がショックを受けてしまうかもしれないので、黙っているつもりだった。
    俯き加減で見えづらくなっていた顔に触れて、視線を合わせる。深い海のような紺碧の瞳は不安に揺れていた。少しは信用されていると思ってたが、まだまだ努力が足りないようだ。
    「悲観することはないんだ。シンジ君は家事をするよりも、もっと大切な仕事をしてくれているよ」
    「……仕事、って……なに?」
    滑らかな曲線を描く頬にキスをして、僕ははっきりと確信した。どうしてもっと早くに気付かなかったのだろう。シンジ君から香るフェロモンが妊娠前とは明らかに変化していた。
    「シンジ君は今、お腹の中で僕らの子を育ててくれているんだよ」
    「……本当に?」
    「気づくのが遅くなってしまってごめんね」
    完全には事態を飲み込めていないようで、シンジ君はキョトンとした顔で僕を見ていた。ただあまりにも反応がないので少し戸惑う。妊娠はとても喜ばしいことだし、シンジ君も「産みたい」と言ってくれていた。
    僕だってそうだ。シンジ君との子供なら、きっと可愛いし大切な存在になると思っている。けれど、急なことすぎて受け入れられないのかもしれない。
    妊娠が母体に与える影響は様々で、成体だとはいえ、まだ幼い彼には酷なことだったのかも。嫌だ、子供なんていらないと言われたらどうすればいい。今さら離れるなんて無理だ。彼は、僕のものだ。
    「カヲルくん? ……カヲルくん、ってば……」
    「……シンジ君」
    「どうしたの? 手が、ちょっと痛いよ」
    「あ……」
    無意識にシンジ君の腕を掴んでいた。慌てて力を緩めたが細い腕に赤い跡が残っている。傷つけてしまうなんて最低だ。
    「ごめん……ごめんよ」
    「平気だよ。ちょっと痛かっただけだから。……あの……カヲル君は嬉しくないの?」
    「……!? 何故だい?」
    嬉しくないわけがない。僕とシンジ君の子供なのに。どうしてそんなふうに思うんだ。驚愕と動揺でシンジ君を凝視してしまった。僕の顔を見て腕の中で彼が身を縮める。
    「だって……カヲル君、また怖い顔してるよ。……本当は僕に子供が出来るの、嫌だったのかなって……」
    「嬉しいに決まってるじゃないか」
    力いっぱい答えると、シンジ君がビクンと身を強ばらせた。しまった、耳の良いシンジ君に大きな声は良くない。怯えさせてどうする。
    妊娠という出来事に自分でも思った以上に動揺していたらしく、ハラハラしながらシンジ君の顔を見る。目の前でふさふさの耳が震えていた。泣き出してしまったらどうしよう。しかし予想に反して丸い大きな瞳に涙はなく、しっかりと見つめ合った。一瞬の沈黙の後にシンジ君が柔らかく微笑んだ。
    「そっか、よかったぁ」
    ふわっとした感触が僕の頬を撫でていく。長い耳がピンと跳ねさせるのはウサギ族特有の喜びの表現だ。手を伸ばしたシンジ君が僕の頬に触れ、鼻先にキスをした。啄むような可愛らしいキスは鼻から唇へと移り、互いの熱を分け与えてくれる。
    「僕が眠ってばかりなの、お腹に赤ちゃんがいたからなんだね。病気なのかも……ってちょっと不安になっちゃったよ」
    「病気でなくて良かったよ。でも妊娠が安定するまでは、安静にした方が良さそうだね」
    「どうして? 僕、家事出来るよ。途中で寝ちゃうけど……ダメかな」
    「気持ちはとても嬉しいよ。けれど、僕達は異種族なんだ。お腹の子がどんなふうに育つのかも分からないから心配なんだよ」
    肉食種と草食種が番になった例がない訳ではないが、妊娠となると極めて稀になる。特にシンジ君は身体も小さい。
    眠気に勝てないくらいに身体は胎児を育てることを優先しているのだから。目を離した隙に床で寝たりしていたら大変だ。二十四時間付きっきりで見守ることが出来ればいいのだけれど。
    ……いや、仕事を辞めればいいのか。オオカミ族の長なんて面倒事を押し付けられているだけなのだ。この際だから縁を切っておいた方が、シンジ君に危害が及ぶ心配もない。
    肉食種は草食種に惹かれる傾向があるのは実体験済みだ。あんな野蛮な連中とか弱いシンジ君を会わせたりしたらと思うと胸が張り裂けそうになる。
    「あの……僕、カヲル君の言う通りにするよ。赤ちゃんを育てるのが大事だもんね?」
    「そうしてくれると嬉しいよ」
    スリスリと頬を擦り付けてくるシンジ君の頭を撫でると、嬉しそうに笑ってくれた。この小さな番を大切に、大切に守っていこう。




    つづく。
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