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    hydroxidestar

    @ReinesReines

    ツバサ(紅)です。好き勝手に書いてます。よしなに

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    hydroxidestar

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    パライソを見ての、松井と鶴丸の話。(CP的にはぶぜまつ)
    松井が月を見てひとりお茶会をしているとそこへ鶴丸国永が現れた。二人は月を見ながら、話をすることにした。強さとは、弱さとは。

    #ぶぜまつ
    japaneseClethra
    #パライソ
    paraiso.

    Navigatoria「よう。隣いいかい?」
    「鶴丸国永……どうぞ。僕でよければだけど」
    「松井と話がしたかったんだよ」

    まんまるい月が浮かぶ夜。部屋から外をのぞいてお茶をしていた松井の隣に、鶴丸はどっこいしょ……と言って腰を下ろした。鶴丸の腕の中にはこぼれそうなほどの茶菓子が乗っていた。あとで燭台切と歌仙に怒られないだろうか、と松井はすこし心配になる。

    「……月がきれいだなあ」
    「うん…ほんとに。僕らの存在なんて、ちっぽけだと言わんばかりなくらい」
    「……荒療治なことをして済まなかったな」
    「鶴丸国永、謝らないでいいよ。僕はあのとき、まだ未熟だったんだ。今なら、主の気持ちも貴方の考えも理解できる。鬼役大変だったんだろう?……三日月さんとは会えたのかい?」
    「いーや。まったくだ」

    しょうがねえヤツだぜ。鶴丸は茶菓子の包装をベリベリッと外して口に放り込んだ。いろいろ葛藤があったのだと予想できた。
    浦島からあの編成をしたのは鶴丸だと聞いたときは驚いた。顕現したばかりの松井と、やさしい浦島虎徹。刀剣男士としての責任を持てという意味だと松井は理解した。

    正直、いまでも人を斬るのはこわい。刀としての身のときにたくさんの血を吸ったのに、また血を吸わなければならない現実は酷だとも思った。
    この両手は既に真っ赤に染まってしまっている。どんなに洗い流しても消えることはない――。江は、業でもあるから。

    ここにいる仲間たちは、己と向き合って強くなっている。まだ飲み込むには時間はかかるかもしれないが、豊前を守れるくらいに強くなりたいと松井は願っていた。

    そう思えるようになったのは、島原の任務に行ったからだ。行った当初は心臓が痛かったけれど、今なら行って良かったと思えている。

    鶴丸国永は強い――それは弱さもあるからだ。そのことを知ることができたのは、成長できたんじゃないかと思う。
    あとで聞いたことだが、豊前が鶴丸に怒り、そして感謝を述べていたそうだ。ほんとうに豊前は僕に甘いなあと松井は思った。

    「鶴丸国永は強いね」
    「俺か?俺にも弱い部分はいーっぱいあるぜ!いいんだよ、弱い部分があったって。受け止めてくれるヤツがいるんだから、甘えるときは甘えりゃいいんだ。ほれ、どうだ一杯」
    「いだたくよ」

    鶴丸は袂から小瓶を取り出し松井へ投げた。松井は両手で受け取ると、をすぐに開けて乾杯をした。

    「へえ、呑みやすいね」
    「だろう?三日月の部屋からぶん取ってきたから旨いはずだぜ!」
    「え、それは大丈夫なの?」
    「俺たちにたいへんなことをさせてんだ。それくらいは許してもらんと割りに合わねえだろうが」
    「ふふふ」
    「なんだ?なにがおかしい?」
    「いえ。鶴丸国永は三日月宗近が好きなんだねと思って」
    「好きと言うか、腐れ縁みたいなもんだぜ?」
    「それだけ絆があるってことだよ」
    「そうかねえ」

    鶴丸は瓶に入っている酒を一気に飲み干した。酒のつまみになるかは分からないが、松井は昼間に作ったクッキーを差し出した。

    「鶴丸国永、この菓子を食べてみてくれないか?乱藤四郎と一緒に作ったんだ。現世で言うと、クッキーと言うらしい」
    「お、いいね!ありがたくご相伴にあずかるぜ!でも、旦那が食う前に俺がいただいていいのかい?」
    「だ、旦那って……っ!豊前はそんなんじゃ……!」
    「ははは。俺は豊前江とはひとことも言ってないんだがなあ」
    「もうっ!……三日月宗近は、前に豊前たち――江の仲間になにか指令を出していたそうなんだけど。貴方はなにも聞いていないのかい?」
    「ぜーんぜん。主に報告してるのかも分からねえしなあ。ほっっんと、あいつには困ったもんだぜ。一発殴らねえと俺の気が済まねえってもんさ」
    「呼んだか?」

    澄んだ声に二人は左側の通路を見る。そこには、三日月宗近が立っていた。顔をまじまじと見るのは初めてかもしれない。

    「げ、三日月……!」
    「げ、とはなんだ。つれないなあ」

    三日月の後ろには豊前がいて、顔の前で手を合わせていた。豊前は遠征から帰還したんだ。お迎えできなくて済まなかったね。豊前が出したカンペには「三日月さんは鶴さんと話があるってよ」と書いてあった。
    ああ、そういうことか。それなら僕はおいとましようか。

    「鶴丸国永、今夜はありがとう。今度、手合わせをお願いしたいな」
    「おう、よろしく頼むぜ!って、おいおい三日月。その笑顔はやめろっ。おい、こらあああ」
    「俺と話がしたいのであろう?それとも殴りたいんだったか?」

    松井は盆を手に取ると、豊前の方まで足早く向かう。

    「おかえり。出迎えられなくてごめんよ」
    「いいってことよ。鶴さんとは話できたのか?」
    「うん。彼はすごいなあ。……豊前、僕も強くなるね」
    「ああ。ゆっくりでいんだ。まつのペースで進んでいこうぜ」
    「ありがとう」
    「しかしなあ」
    「?」
    「松井が作ったクッキー、俺が最初に食べたかったぜ」
    「そ、それは……」
    「じゃあ、詳しくは部屋で聞こうか」
    「ちょ、ちょっと豊前!!」

    (ここからさきは見せられないんだ。ごめんね。僕は豊前と濃い時間を過ごすとするよ)
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    aiporonica

    DONEこれはまだ、俺が刀剣男士になれていなかった頃の話。

    本丸が出来て間もない頃、同じ平安刀のよしみで共に出陣を繰り返していた三日月宗近と鶴丸国永は島原の乱に出陣することになる。二人が向かった先はかつて山田右衛門作が暮らしていたという口之津村。その港口に潜んでいた歴史遡行軍と遭遇するが……
    酷薄のインフェるノ②「オロロン、オロロン、オロロン、バイ」
    「変わった歌だな」
     男は幼子を大切そうに抱えながらその歌を謡っていた。
     皺が寄った口元に、穏やかな表情を浮かべて。
    「この土地に伝わる子守歌です」
    「へぇ」
     物珍しそうに近寄れば、彼は眉尻を下げて何かを懐古しながら嬉しそうに微笑んだ。
    「私が謡うとすぐに寝付くものだから、子守歌を謡うのは私の役割だったんですよ」
    「なあ、俺にも教えてくれるかい?」
    「はい、もちろんです」

     ―――これはまだ、俺が刀剣男士になれていなかった頃の話。


         ◆

    「今回の任務もあなたたち二人にお願いします」
    「島原の乱か、……厳しい出陣になりそうだな」
    「なに、鶴丸と一緒ならば平気さ」
     本丸が出来て間もない頃、刀剣男士の数も少なく少数精鋭で歴史改変の阻止に赴かなければならない頃があった。二振りで出陣なんていうものはザラにある。中でも同じ平安刀であるよしみから、三日月宗近と鶴丸国永は中でもより難度が高いとされる地に出陣させられていた。顕現したばかりの刀剣男士はまだ感情が定まっておらず、出陣に支障を来すことが稀にある。特に、自分たちが辿ってきた歴史の地に出陣した時には自らの感情に飲み込まれてしまう者も少なくはなかった。
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