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    zuzuko0817

    典ソハ小説

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    zuzuko0817

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    欲望のまま書いた
    低空飛行で淡々とした軽いシリアス

    #典ソハ
    formerSovietUnion

    どこかの未来でソが三池派ではない説が台頭してしまった時の典ソの話※どこかの未来でソが三池派ではない説が台頭してしまった時の典ソの話


    夜も更けた頃である。ソハヤは布団の中で目を覚ました。玄関先で霊力がざわざわしている。それは遠く離れた三池部屋まで届いていた。
    遠征帰りの兄弟のものだろう。
    なるべく他の刀を、審神者を傷つけないように内に留めているのが嫌でもわかる。
    最近の兄弟は酷く不安定だ。理由はソハヤが一番良く分かっている。

    大典太が一歩、また一歩と部屋に近づいてくるたびに肌が痛い。ソハヤは急いで引き出しの中に入れていたお守りを首からかけて寝巻きの下に隠した。

    「……ッ」

    大典太が部屋の戸を開ける。それだけで大典太の霊力がソハヤを傷つける。気付かれるわけにはいかないので声を噛み殺した。

    「おかえり、兄弟」
    「……ソハヤッ!」

    ソハヤの顔を見た瞬間、大典太の無表情がいきなりわかりやすく眉を下げた。次の瞬間、大典太は駆け寄って、布団の上で座ったままのソハヤを掻き抱いた。ぎゅうっと、まるで幼子のように。全身で表す不安を和らげてやりたくてソハヤは大典太の背中を撫でる。強く抱きしめられることはソハヤにとってありがたい。歯を食いしばって耐え忍ぶ顔を見せずに済む。

    「ソハヤッ……!ソハヤ!」
    「大丈夫だ、俺はここにいる」

    名を呼ぶ度に、体を掻き抱く腕に力が籠る。比例するように大典太の霊力も増した。

    ーーー痛い、

    叫びそうになる声を必死に抑える。息を吐くことすら、慎重に。声を震わせてはいけなかった。耐えて、耐えて。その間ひたすら大典太の背中を摩る。大丈夫、問題ないと甘やかすのだ。

    「落ち着いたか」
    「……ああ」

    やがて大典太が体を離す。最後にソハヤの顔に触れ、安心したように声を漏らした。

    「大丈夫だ、俺は兄弟の霊力じゃ傷つかない。な、そうだろ」
    「ああ、でも、人間たちが」
    「大丈夫だって、俺は三池だ」
    「……そうだな」
    「安心したか?じゃあほら、風呂行ってこいよ」

    汗も返り血も流さなきゃいけねぇだろ?そう伝えれば大典太は素直に従って立ち上がる。すぐ戻る、と言って出て行った刀が戸を閉めて少し離れたことを確認してからソハヤは布団のに倒れ込んだ。

    「ッ、ふ……、………」

    体を丸めて今まで浴びていた霊力の痛みに声を漏らす。震える手で首から取り出したお守りはズタズタに切り裂かれていた。審神者が刀に分け与えるものとは違う、ソハヤが独自で作った身代わりのようなお守りだ。一度使えば効能は切れる。また作り直さなきゃな、とぼんやりと思う。

    この身代わり守りは大典太の霊力を肩代わりするものであった。ソハヤノツルキは三池派の刀として顕現した。しかし顕現して随分と時間がたったある日突然人間たちの間で三池派ではないという"諸説"が台頭し始めたのだ。今までも少しばかりあった説であったが存在に影響するものではなかった。ただ現在、人間たちの間でソハヤの説は随分と大きくなり、強い力を持ってしまった。

    特にこの本丸のソハヤノツルキは自身の物語に寛容な刀であった。家康の守り刀であること以外の物語は写しであろうがなんだろうが頓着なく、人の望む物語のままに顕現していた。だからこそ今、三池派ではないという人間たちの諸説が肉体に影響を与えてしまっていた。

    顕著なのは同じ三池の刀であるからこそ、受けなかったはずの大典太の霊力が今やソハヤの体を傷つけることであった。

    「俺が鳥になるわけにはいかねぇんだよ……」

    大典太はソハヤが同派でなくなることを酷く恐れる。"諸説"が世間的には強くなったことを知ってからなるべく離れたがらないし、少しでも離れるとソハヤの存在を確認するかのようにああして自身の霊力を浴びせてソハヤが無事であることを再確認するのだ。

    身代わりを作っている時点でソハヤの体はもう大典太の霊力に耐えきれていない。

    それでもあの寂しがり屋で臆病な刀を悲しませたくなくてソハヤは1人強がり続けるのであった。
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