ブルーマンデーみたいな 休み明けのウィルは、まだどこか夢見心地な気分でパトロールの支度をしている。
昨日と一昨日。連休はずっとシャムスの部屋で過ごした。恋人同士になって四ヶ月目。ふたりの休みが重なって、二日間まるごと一緒にいられたのは初めてのことだった。ソファとベッドを行ったり来たりして、夢のようにふわふわした時間が過ぎていった。
その余韻を、いまも引きずっている。
気持ちを切り替えるため、ウィルは深呼吸する。
こんな状態でパトロールに出動するなんて、応援してくれている市民の皆さんに申し訳ない。
しっかりしろ、と自分に言い聞かせる。
椅子に座ったまま、いつものようにレッグホルスターを巻き付けた。太ももがベルトに圧迫される。
その圧迫感に、ウィルの身体がざわついた。
急に、夜のことを思い出してしまった。
(ちょうど、このベルト巻いてるところをシャムスくんの手が押し開いて、それから)
そこまでの記憶をたどって、ウィルは椅子の上で盛大に項垂れた。
まだ、手の感触も、互いの熱も鮮明に覚えている。
ふとした瞬間に思い出して、落ち着かない気分になる。
駄目だ駄目だ。
落ち着こう、冷静にならないと。
ウィルは火照った顔を両手で覆う。
あからさまにいつもと違う様子に、同室のアキラが声をかけてくる。
「どうしたんだよ、ウィル。風邪か?」
「風邪じゃない…大丈夫」
顔を両手で隠したままウィルは答える。
「つっても、耳まで赤くなってるけど」
「今日は、蒸し暑いから」
アキラは納得してない様子で、そうかぁ?と呟く。
「暑いんだったら、襟のところ緩めろよ。いつもに増してネクタイきっちり締めてねーか?」
「これは、いいんだ。念のためだから」
「何がだよ」
アキラの追及を笑って流して、アキラを促してウィルは部屋を出る。
パトロールは好きだし、ヒーローとして行動する日々もとても大切に思っている。
けれども、それと同時に、次のオフを心待ちにしているのもまた事実だった。
ウィルはタワーを出て空を見上げる。
空には想い人の名の由来である太陽が輝いていた。