Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    UsaUsa_mitumaki

    @UsaUsa_mitumaki

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 14

    UsaUsa_mitumaki

    ☆quiet follow

    心理学関係者同士、話してほしいなって思ったけれど迷子になったやつ

    no titles「ノックノック。お邪魔するよ」

    テーブルを片付けていると、チャラけた様な声が聞こえる。アレンはテーブルを拭く手を止め、目線を向けると肌を白塗りにした派手なメイクの男が立っていた。

    「ちょっと待ってろ。今片付ける。」
    「いやいや、ちょっと耳を貸してもらえるだけでいいよ。キミに挨拶に来ただけたからね。アレン・デファンスくん」
    「……挨拶?」

    挨拶をされるようなポジションではないアレンが疑問に思っていると、目の前の男は仰々しくお辞儀をしてみせた。

    「はじめまして。今日付けでカウンセラー兼マスターとして配属された、アルプトラウム・ホルムアルデヒドだ。アルフと呼んでくれ。よろしく頼むよ。」

    そう言って手袋をつけた手を差し出される。作業の手を止め、アルフに握手を返す。

    「あぁ、あんたが本当のカウンセラーか。アレン・デファンスだ。引き継ぎする間だか、よろしく頼む」
    「ん?所長からはキミと二人でやって、と言われたが?」
    「……チッあの所長、適当な人員配置しやがって」

    アルフの言葉に思わず舌打ちが漏れる。アレンのそんな様子を見て、アルフは軽く肩をすくめた。

    「まあ、仕方ないさ。こんな閉鎖的空間じゃ、皆気が滅入るってものだからね。ケアできる人はたくさんいた方がいい」
    「………まぁ、立ち話もなんだ。何かだそう。コーヒーと紅茶、どちらがいい?」
    「おや、いいんかい?それならコーヒーをお願いしよう。」
    「わかった。といっても、ここにはインスタントしかないけどな。座って待ってろ」

    そう言ってアレンは大きなソファを指差す。アルフは一言礼を言って、キョロキョロと部屋の中を見ながらソファまで歩く。
    その部屋は人一人が寝転がっても平気なくらいのソファ、その前にテーブル。小さなカウンター、そして本棚と机。全体的に木のぬくもりが感じられる部屋だ。まるで誰の実家でもないのに、皆が知っているような場所、絵本や物語で描かれる田舎の家の書斎といった印象だ。

    「ここが『サボりたいときに来る場所』かぁ……。確かに落ち着く場所だ。この家具の配置は何か心理学的な意味でもあるのかい?」

    アルフは一通り部屋を見てソファに座ると、丁度良くアレンが2つのマグカップを持って戻ってきた。

    「いや、残念ながらそういうのはないな」
    「おや?そうなのかい?心理学者の期待のホープが?」

    その言葉にアレンはピクリと反応する。一瞬表情が強張ったのに気がついたが、アルフは気にせず話しを進める。

    「キミの論文読んだよ。確か『人の性質と環境について』だっけ?在り来りなテーマだが、少々魔術の要素が垣間見えて驚いたよ。しかもそれで20歳の若さで博士号を取るから、すごいもんだ。心理学の天才が現れたって、大騒ぎだったからね。だから、キミに会うのは少し楽しみだったんだ」
    「……そうか、それは残念だったな」

    アルフにコーヒーを渡して、アレンも対面になるように座る。?マークを出しているアルフに、アレンは一口コーヒーを飲んで答えた。

    「その天才アレン・デファンスは、その数日後に大火事に巻き込まれて重症を負い、記憶喪失になったからな。今の俺は心理学もカウンセリングも全く知らない別の誰かってわけだ。悪いな」
    「おや、それはそれは……。では、心理学者と名乗っているのは嘘だと?」
    「残念ながら。まあ、一応リハビリと称して大学で助手として働いていた期間もあったし、記憶を戻そうと必死に勉強したからな。全く理解不能ってわけじゃない。が、それも所詮付け焼き刃だな。」

    アレンはアルフを見て自嘲気味に笑う。アルフはその笑顔から目をそらすようにコーヒーを一口飲んだ。アレンはそのまま続ける。

    「まあ、ここに来たのは、本来ここに来るはずだったじじ……先生の代理ってところだ。だから、あんたが来てくれて嬉しいよ。今までは無い知識なりにセッティングしたり、話しを聞くことしかできなかったからな」
    「なるほど、まあ、頑張らせて頂くよ」

    アルフがそう告げた時に、一瞬アレンの眼鏡の向こう側で瞳が緑色に変化したように見えた。しかし、すぐにアレンは顔を隠すように手で自身の目元を覆う。

    「俺は業務時間中はこの部屋にいる。誰でもサボれる場所だからな。いつでも入ってこれるような状態にしている。もしカウンセリングで使いたい場合は事前に申請をしてくれ。まあ、空いている時間も早々ないと思うが。」

    アルフの事前の調べによると、アレンは積極的に相手と関わろうとはしないらしい。部屋に入れば受け入れ、相談せず出ていっても引き止めない。話をすれば身体を向けて話しを聞き、何も求めなければ資料まとめといった仕事をしているだけだと。それが逆に心地がいい、と利用者達は口を揃えて言う。しかし、少し前までは怖くなるくらい相手のことを知ろうとしていて、苦手だったとも言われている。

    「うーーん、何かの心境の変化かなぁ?」
    「……突然どうした」
    「いや〜少し前までは怖いって言われてたらしいから」
    「………あぁ。緊張してたとはいえ、悪いことしたなって反省してるんだよ」
    「ふーーん」
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works