ワレラ ラーメン タベル「というわけでラーメンを作るよ」
「いえーーい」
イヌタデと山賊の娘の前にあるのは、蓋付きのラーメンどんぶり、熱々のお湯が入ったヤカン、卵、そして鶏の味が染み込んだインスタントラーメンの袋だ。明日は特に任務もない、雑務もしなくていいという休みをもらった二人は、今日の業務が終わった帰りに購買部へ寄り、自室にて夜中ラーメンというのを試していた。
ことのきっかけは、イヌタデがカルデア職員達の夜中ラーメンを目撃し、口封じで一口ラーメンをもらったことだった。
「ほんとにいいんかい?正直身体に悪そうな雰囲気がプンプンだよ」
「いいんです。悪いことをするのは成長過程の1つですから」
「アンタの育ての親が泣くよ」
山賊の娘にそう言われ、一瞬たじろぐイヌタデ。しかし、育ての親ポジションであるホタルハの泣き顔が思い浮かばないのと己の食べたい欲のが勝るので、決行する。
「では、んんっ……簡単ラーメンの作り方〜」
「んグフッアンタその顔でどこからそんな声が……ふふっ……」
イヌタデの少し高めの声に山賊の娘の笑いのツボが刺激されるが、イヌタデは構わずレシピを言い始める。
「まず、ラーメンの面をどんぶりにいれます。その次に卵を真ん中のくぼみにin。お湯を注いで3分間経ったら完成です」
山賊の娘が必死に笑いをこらえながらラーメンを二人分用意していく。最後にイヌタデがお湯を注ぎ、蓋をして、3分間ユラユラしながら待つ。
「もういいですか…?」
「まだ1分も経ってないよ。あたしより気が早いんじゃないかい……全く……」
ラーメンどんぶりの前でソワソワするイヌタデに、水を用意する山賊の娘。ジャンキーな香りが部屋中に満たされていく。山賊の娘も少しワクワクしているのか、チラチラとラーメンの方を確認する。
しばらくして、3分経ったことを使い魔の鳥が教えてくれたので、二人は手を合わせる。
「いただきます」
「いただきます。と、長い3分間だったよ」
そう言って蓋を開けると、湯気がぶわっと二人を襲う。麺をフォークでツンツンと弄ってみる。真ん中の卵を崩し、麺と絡めフーフーと息をかけ、やっぱり待てないとばかりに熱々の麺を口に入れる。熱いながらも麺を噛み、ゴクンと飲み込むと二人は顔を見合わた。
「美味しい!すごいねぇ、こんな美味しいのがあるんか!」
山賊の娘が目を輝かせて言うと、イヌタデもコクコクと頷きラーメンを食べる。
「これ、ネギとかハムとかつけても美味しいかもしれないです」
「それだ。冷蔵庫を確認するよ」
そう言って二人でイソイソと自室の冷蔵庫へ向かう。冷蔵庫を物色している間に、イヌタデの通信端末がブブッと震えた。イヌタデはなんだろうと、通信端末を確認する。
「あっ」
「あ?……アンタの保護者には筒抜けだったみたいだねぇ」
通信端末の画面にはホタルハからの短いメッセージがあり、こう書いてあった。
『野菜も食べろ』
二人は冷蔵庫からハム、ネギ、漬物のキュウリとたくあん、切り干し大根を持ってラーメンのあるテーブルへと戻った。