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    57アドベント企画に寄せたものです。
    五の誕生日にまつわるお話。

    #五七
    Gonana

    12月7日のアナタへ 最初の12月7日は2006年のことだ。
     五条さんはまだ呪術高専の二年生だったけれど、既に呪術師として幾つもの重大な任務に就いていて、その日も誕生日だというのにずいぶん遠くの案件を入れられていた。ぶうぶう文句を言いながら出かけていって、仕方ないから帰ってきたら皆でお祝いでもしてやろうか、と夏油さんや家入さんと話していたのを覚えている。
     五条さんは皆が寝静まった深夜に帰ってきて、偶然私と顔を合わせた。
     雨が降っていた。
     私は一人でコンビニに行ってきたところで、学生共有の冷蔵庫に買ってきたアイスを山ほど突っ込んでいた。五条さんは食堂にふらりと現れて、少し機嫌が悪そうにしていたけれど、私を視界にいれるとすうっと目元を緩ませた。
    「五条さん、おかえりなさい」
    「腹減った〜何かない?」
    「お菓子しかないです」
     私はぱんぱんに膨らんだコンビニ袋を掲げた。
    「なにそれオマエ一人で食うつもり?」
    「そんなわけないでしょう。明日、みんなで五条さんの誕生会をやるっていうから、私が買い出し係で買ってきたんです」
     私は袋の中に詰まったお菓子を広げて見せた。
    「他に、なんか欲しいものありますか?」
     好きなの買ってきてあげますよ、誕生日だし、と言うつもりだった。
     すると五条さんは私の前にずいっと歩み出ると、
    「何でもいいの」
     と尋ねた。
    「え、まあ、可能なものなら」
     そして五条さんはさらに私に顔を寄せて、
    「オマエ」
     と小さく呟いた。
    「そのギャグ、全然面白くないですよ」
     呆れた私が身体を翻して去ろうとすると、五条さんは強く腕を掴んで
    「待って、七海」
     と、静かな甘い声で私の名前を呼んだ。
     五条さんに、そんな風に呼ばれたことは一度もなかったので、私の身体はぞくりと震えた。名前がまったく違った響きを持って、彼の声と一緒に夜に滲んでいくのがわかった。
    「俺のものになってよ」
    「何を言ってるんです」 
     五条さんと特に仲が良いことはなかったし(むしろ悪かったといってもいい)、二人きりになったことすらない。でも、たぶん私は最初からあの人のことが好きだった。
     いや、好きだったという生やさしいものじゃなく、それはもっと避けがたい強烈なものだった。
     雨で濡れたような青い瞳と滑らかな銀髪、敵を捉えた瞬間の、少し不遜に端が上がった唇。この、世にも美しい男に、気付いたら私は罠にかかった獲物みたいに釘づけになっていた。
     彼の唇が私の唇にかさなり、歯がぶつかる。
     待ってください、とかやめてください、とかいう私の口を、五条さんはまるで獣みたいな獰猛さで塞いだ。彼の六眼はちっとも私が嫌ではないことを見抜いていて、いとも容易く私を捕らえた。
     長く荒々しい口づけが終わって身体を離すと、私たちは二人とも、しばらく黙ったまま互いを見つめていた。
    「……五条さん、人間はどうあっても、他人のものにはなりませんよ」
     私が悔し紛れのようにそう言うと、五条さんは少し困った顔をした。
    「そうなの?」
    「たぶん……」
     この人は本当に俗世と離れた場所にいすぎたせいで、世事の色々なことがわからないのだ。恋愛とか、人間関係の機微とか。
    「じゃあ、それに一番近い状態はなに?」
    「え、私もわかんないですけど……なんだろう、結婚とかじゃないですか……?」
    「それなら結婚して」
    「はあ……? いや、あの、そもそも高校生は結婚できないと思いますけど」
    「じゃあ大人になったら結婚して」
    「……」
     なんだか私は居たたまれなくなって、コンビニの袋からがさがさとチョコレートの大袋を取り出して、五条さんに押しつけた。
    「とにかく、お誕生日おめでとうございました」
    「うん、ありがと?」
     そしておそらくこれ以上ないくらい顔を上気させながら、私は廊下を部屋に向かって歩き出し、コンビニの袋から、一つだけいちごの飴を取り出して、食べた。
     それが十一年前の話だ。

       ★

     2017年の12月7日も、五条さんは任務を入れられて、地方の出張からやっと帰ってきたところだった。
     また別の日に改めてお祝いするというのに、「絶対に一緒にケーキだけは食べる!」と五条さんは頑として譲らず、深夜に私の部屋に飛んできた(文字通り飛んできた)。
    「七海ぃ〜会いたかったぁ〜」
     抱きついて玄関に私を押し倒そうとするのをどうにか宥めて、テーブルに座らせ、彼のお気に入りのパティスリーに頼んでおいたケーキを切り分ける。
    「カシスのと、チョコレートの、二つ頼みましたよ」
    「わぁい! 七海だいすき!」
    「五条さん、出張中ちゃんと食事をしましたか」
    「え、したけど?」
    「一応聞きますけど、何を?」
    「ハーゲンダッツのクッキー&クリームのやつと、ポッキー冬限定の」
    「……」
     クソデカい溜息をついてから、砂糖と牛乳をたっぷり入れたカフェオレも淹れてあげた。
    「明日は肉と野菜を食べましょう」
    「はぁい」
     それからお祝いということで私はシャンパンを開けて、私たちは当たり障りのない会話をしながらケーキを楽しんだ。五条さんの様子から、地方の呪霊の様子も芳しくないのが感じられたからだ。最高に美味しいケーキを食べながら、あまり辛気くさい話もしたくない。
    「七海は子供のころ冬好きだった?」
    「寒いのはあまり得意じゃなかったですね。でもクリスマスや綺麗なイルミネーションは好きでしたよ」
    「デンマークって寒くないの」
    「だいたい東京より5度くらい低いです」
    「僕も冬あんまり好きじゃなかったな〜。なんかね、澄んだ空気の中では、呪いの臭いが濃くなるし」
     それから、あーなんかぱーーっとしたことないかなぁー、と五条さんは大きくて形の良い口にケーキを運んだ。
    「ねえ七海、僕と結婚しない?」
     あまりに唐突なその申し出に、私は思わず笑い出した。
    「アナタ、毎年言ってますよねそれ」
     五条さんは十一年前のあの日から、誕生日のたびに私にプロポーズしている。ご飯を食べながら、一緒に赴いた任務中に、セックスの最中に、あるいは前後に。そのたびに私が断り続け、これはもう恒例の冗談みたいになってしまっている。
    「僕は最初からずっと本気だよ。誕生日だから、どさくさに紛れてオーケーしてくれないかなって毎回思ってる」
    「しませんよ」
    「そろそろいいんじゃない? 僕らがすごい馬鹿みたいなでっかい結婚式したら面白そうじゃん。呪術界ぜんぶ巻き込んで」
    「アナタの実家、面倒そうだから嫌です」
     なんでえ〜僕は優しくて甲斐性ある夫になるよ〜、と五条さんはケーキを刺しているフォークを踊らせる。
    「そんでさ、海辺の街とかで暮らすの。二人とも爺さんになって戦えなくなったら隠居して、毎日こういうケーキとか南国のフルーツとか食って暮らすの」
    「結婚はともかく、それはとても良いですね」
     私はシャンパンのグラスを煽る。
     するとつけっぱなしにしていたテレビから、ネイチャー系のドキュメンタリーが流れはじめた。
     私はあまり見ないけれど、五条さんが割と好きなので、うちには60インチのテレビが置いてあって、彼はよく密林に住む動物の生態や、マヤ文明の秘宝についての番組など見ている。今日のは地球の未来、というテーマだった。
    『——地球の未来の推定は、地球内部の冷却、太陽系の重力作用、増加する太陽高度などから予測されますが——』
     ふぅーん、とさも適当な相づちをうちながら、五条さんは惑星がぐるぐる回っている映像を眺めていた。
     五条さんが結婚しようと言うたびに、私は呪術師でいる限り、独り身でいようと決意したことを思い出す。
     遅かれ早かれ悲劇的な結末を迎えるであろうこの身で、未来の約束をしてしまうことが恐ろしかった。それは相手が最強の男でも例外ではない。
     こんなにずぶずぶに彼を愛してしまったことだけでも少し後悔しているのに、あの人をいつか一人にしてしまうことの罪悪感を思うと、身が千切れるような思いがする。
    「……そうだ。五条さん、プレゼントがありますよ」
     私は立ち上がり、椅子の上で体育座りをしている大きな男の首にそっと触れた。
     五条さんは、えっと声をあげて、驚いたように顔を上げる。
    「なに? 七海のえっちな下着?」
    「そうですよ」
    「えっ……!?」
    「冗談です。それが良かったですか?」
     それから、クローゼットの中に置いておいた紙袋から、布張りの小さな箱を取り出して差し出した。五条さんはクリスマスの朝の子供みたいなキラキラした顔で、私から箱を受け取ると、待ちきれない様子でリボンを解いた。
     中には、特注で作って貰ったアイマスクが入っていた。
    「わぁ〜すごい、なにこれ!」
    「スーツを仕立てて貰っているテーラーに作ってもらいました。アナタ、サングラスも包帯も煩わしいでしょう」
     テーラーの主人が、あの、たまに一緒に来るきみの彼氏、包帯はどうかと思うよ、と言ってたことは秘密にしておいた。用途を説明して相談したら、こういうのが良いんじゃないかな、と特別上等なシルクウールでアイマスクを作ってくれたのだ。
     五条さんは嬉々として立ち上がり、さっそく装着すると鏡の前でポーズをとっている。
    「ちょっと〜、僕って何でも似合いすぎない?」
    「……喜んでもらえて良かったです。お店に持っていけば、細かい調整をしてくれますので」
     五条さんはしばらく楽しそうにくるくる回っていたが、ふと動きを止めると、こめかみのあたりに手を添えて、
    「これ、七海の呪力をかんじるね?」
     と呟いた。
    「ええ、私の呪力を込めました。お守りみたいなものです。最強には必要ないとは思いましたが」
     ありがとう、ずっと七海と一緒にいられるみたいで嬉しいな、大事にするね、と五条さんは私を抱きしめて、頬にキスをした。
     その唇が移動して耳朶を食み、やがて首筋を這っていく。
     私たちはもうじゅうぶんに大人になった男なので、お互いの身体を知り、心地よくゆきとどいた愛撫を加えることができる。十年かけて、そうなった。
     五条さんが私のシャツのボタンを外していくその間、テレビでは、地球の未来を予言するナレーションが流れ続けている。
    『——一番大きな可能性として考えられるのは、最終的に太陽が膨張しつづける現象です』
    「そんなの、四六時中まぶしくて仕方ないでしょうね」
     私がそう言うと、露わになった肌をなぞりながら、五条さんは答える。
    「でも闇がなくなるなら、呪霊もいなくなるかもね」
    「それはいいですね。私たちは食いっぱぐれてしまいますが」
    「どうにかなるんじゃない?」
     と、五条さんは笑う。
    「暇すぎて、いくらでも海辺でフルーツを食べられますね」
     そう呟くと、五条さんは嬉しそうに顔を上げた。
    「その時はプロポーズ受けてくれる?」
    「ええ、いいですよ」
     約束だよ、と五条さんは甘いケーキの香りを漂わせながら、また私に口づけた。
     いつか闇のない世界がくるんですって、五条さん。そうしたらあなたは、自由になれるんでしょうか。
     本当は、アイマスクに呪力を込めた理由は別にある。
     人が死んでも呪いは残るから、私がいなくなっても、私の呪力の残穢は残るだろう。つまり、そういうことだ。
    「五条さん」
     私は愛した男の名前を呼びかける。
     彼の瞼にそっと手を添え、そして、心の中で呟く。

    『五条さんが、幸せでありますように』

     これは呪いだろうか?
     わからない。でも彼の生ある限り届いて欲しい。私の祈りに似た何かが。
     いつか、光だけの世界が来るなら、その日まで。
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    MAIKING五七ですが、特殊設定です。七がショタ。平行世界のどこかです。五七
    七がちょっとだけ人外で見た目ショタ


    五条悟は呪術界の誰もが認める最強である。
    しかし、そんな彼にはとある噂がある。
    曰く「小学生男児を囲っている」と。


    「いくら五条先生とはいえさすがに……」
    「でも有名な噂なのよね~。」
    「俺も聞いたことあるな。」

    虎杖が釘崎と伏黒から呪術界のことを聞いていたときに、ふとした拍子に五条への愚痴に変わった流れから出た噂話であった。
    「五条悟は小さい男の子を囲っている」と。
    しかし、実際にその様子を見た者はいないらしく、また五条がそのような素振りを見せたことも無かった。

    「伏黒って五条先生との付き合い長いんだろ?なんか知らないの?」
    「全く知らん。」
    「実はあんたのことだったり?」
    「だとしたら現在進行形なのおかしいだろ。」
    「「たしかに…!」」

    伏黒も「俺のことか?」と怪しみ調べたことがあるらしいが、そもそも伏黒と五条は一緒には住んでおらず、また伏黒と五条の関係は一部では知られたものなのであのような噂になるはずもなかった。
    では五条の噂はどこから出たのか。
    3人は噂話をしたことすら忘れた頃に知ることとなった。



    「あ、五条先生!」 1531

    ケイト

    DONEキスの日に間に合わせるために無理矢理完成させた五が七に靴下を履かせるお話です。
    「五七キス二十二題企画」より11(胸)所有、21(足の甲)隷属で書かせていただきました。
    「ねーねーななみぃズボン脱いで♡」
    機嫌良い五条とは対照的に七海は面倒くさいのを隠そうともせずに大きなため息をついた。
    「はあ…本当にこんなの何が楽しいんですか。」
    「何って全部だよ!ぜんぶ♡ほら早くぅ!」
    ベッドの上に座る七海の足の間に陣取ってあぐらをかく五条は七海の靴下片手に満面の笑みを浮かべて呆れ顔の恋人を見上げている。

    呪術師としての五条しか知らないものが見たらおどろきでひっくり返るほどに、恋人としての五条はひどく七海の世話を焼きたがる。
    髪を乾かしたり爪を切ったりと挙げればキリがないが、特に五条がこだわるのは着替えだった。脱がせたがるし着せたがる。ただ忙しい朝に0から100まで着替えを任せるのはさすがにという理由でやめさせようとして、すったもんだの末靴下だけにするという妥協点で落ち着いた。そして靴下を履かせるにあたってスウェットのズボンは邪魔だからという五条の言い分によりスボンを脱ぐことになっている。七海はその必要はないだろうと反論したが、拒否するなら靴下だけで妥協することを拒否すると駄々をこねられて結局七海が折れた。本気を出した特級頑固に一級が勝てるはずもなかった。

    1668

    Zoo____ooS

    DONE『地を這う者に翼はいらぬ』の続編です。(書き終わらなくてすいません…)
    呪詛師の七海と特級呪術師五条の五七。呪詛師と言いつつ、七海はほぼ原作軸の性格(のつもり)です。
    某風俗業界の描写があります。具体的な行為等は書いてませんが、苦手な方はお気をつけください。
    祈れ呪うな 前編いつもは閑散としている東京呪術高専事務室のお昼時だが、その日は常ならぬ緊張感がエアコンの効いた室内に満ちていた。電話番で一人居残っていた補助監督の山嵜の視線は、どうしても事務所の一角に吸い寄せられてしまう。高専の事務室は、主に補助監督や呪術師の労務管理を行う事務職員の仕事場で、高専の職員室は別にあるのだが、昼食で留守にしている事務員の机の前に、やたら大きな男が陣取っているのだ。白い髪に黒い目隠し、そして山嵜とは30センチは違うその長身。山𥔎は一度も口をきいたことはなかったが、この東京呪術高専、いや、日本全国の呪術師の中でも一番の有名人が、パソコンで何やら調べ物をしているのだった。
     昼時、のんびりとネットサーフィンをしながらサンドイッチを齧っていた山嵜は、ノックもなく突然開いたドアからズカズカと挨拶もなく入り込んできた男の姿に、驚きのあまり思わず腰を浮かせた。
    14069

    ののと

    DONE五七。久しぶりに会えたのに邪魔される二人。短い。r18でも特殊でも全くないですが糖度と密着度高いのでそのためのワンクッションです。
    お互い仕事が終わって、何週間ぶりにやっと会えた日。七海の家で二人、なんでもない顔して食事をして、珈琲を入れてソファに座り、適当にテレビを流しながらここ数日の話をしていた。そうして、一瞬だけできた無言の時間。目が合ったと思ったら、どちらからともなくキスをしていた。
    重ね合わせていただけの唇、少し離したり、また押し付け合ったり。じゃれ合うようなそれがどんどん深くなって、お互いの舌が相手の口のなかへと入り込んで絡み合っていく。がっついてるな、お互い、そう思いながら。それでも勿論やめることなく。狭いソファの上で七海が五条の上に乗りあげる形で座り、その腰を五条がしっかりと抱え込んでいた。
    徐々に触れ合う箇所が増えていく。でも、もっと。久しぶりの逢瀬、一度こうなれば、当然次に考えることは二人とも同じで。普段は五条に流されがち、任せがちなここからの流れ、でも今日は七海も積極的で、五条のいつもの黒服の中に手を差し込んでいた。当然五条も同じようにしていて、さぁいよいよ脱がしてしまおう、といったところで、お約束の電話の音が鳴り響いた。五条の、携帯から。
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