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    短い話を放り込んでおくところ。
    SSページメーカーでtwitterに投稿したものの文字版が多いです。
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    ちょっとした秘密のお話。
    800文字チャレンジ73日目。

    #PSYCHO-PASS
    ##800文字チャレンジ

    君には秘密(秘密なんて) お互いに持つ秘密を知った時、初めて好きという感情を知れた気がした。とはいえ秘密と言っても簡単なもので、本当はコーヒーに砂糖を二杯入れていることとか、そんなくらいだ。狡噛の方は少しだけ不穏で、減らしたと言っていた煙草が全然減らせてなかったことだった。どうして嘘をついたんだ、秘密を作ったんだって二人で笑って、馬鹿らしいなと抱き合った。どうしてだろう? 全部知ったつもりになっていたのに、そうじゃなかっなんて、少しプライドが傷つくな。それは彼も同じかも知れないけれど。
     
    「ギノが甘党だったとはな。ブラック飲んでるようにしか見えなかったよ」
    「いいだろう別に。それよりお前は煙草を減らす努力をしろ」
     散々笑い合って、セックスをして、着替えながらぶつくさ言う。何もかもが日常になって、やっぱり秘密なんて全くないような気がした。俺の秘密なんて砂糖の数だけだった。狡噛も同じくらいだ。でも、お互い口にしないでも、任務に関して、放浪中の出来事に関して、永遠にしゃべらないことがあると思ってはいた。二人とも。
    「そんなにキスが不味いか?」
    「美味くはないな」
     でも嫌いじゃない。そうは言わないけれど、また一つ秘密が出来る。多分、秘密というものはともに生活していると少しずつできていくものなのだろう。良いものでも悪いものでも、些細なことでも大きなことでも。狡噛は学生時代から秘密が多い男だったし、俺は秘密に頼らざるをえない潜在犯の息子だった。秘密なんてなければいいのにと思う。秘密なんてなければ、本当に一つになれるのに。
    「でも嫌いじゃないんだろう? ほら、こっちに来いよ」
     狡噛が俺の腕を引く。思っていたことを当てられて、秘密が一つ消えて、俺はなんと言っていいのか分からなくなった。狡噛のことが好きだ。愛している。お前が墓まで持って行く秘密ごと愛している。俺の馬鹿らしい秘密をお前が愛せなくても、お前の秘密を愛すると誓うよ。俺はそんなことを思って、狡噛の腕の中に隠れ、そのままじっと子どものようにまぶたを閉じたのだった。
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    TRAININGお題:「昔話」「リラックス」「見惚れる」
    盗賊団の伝説を思い出すネロが、ブラッドリーとの初めてのキスを思い出すお話です。軽いキス描写があります。
    かつての瞳 ブラッドは酔うと時折、本当に時折昔話をする。
     普段はそんな様子など見せないくせに、高慢ちきな貴族さまから後妻を奪った話だとか(彼女はただ可哀想な女ではなく女傑だったようで、しばらく死の盗賊団の女神になり、北の国の芸術家のミューズになった)、これもやはり領民のことを考えない領主から土地を奪い、追いやった後等しく土地を分配したことなど、今でも死の盗賊団の伝説のうちでも語り草になっている話を、ブラッドは酒を飲みながらした。俺はそれを聞きながら、昔の話をするなんて老いている証拠かなんて思ったりして、けれど自分も同じように貴族から奪った後妻に作ってやった料理の話(彼女は貧しい村の出で、豆のスープが結局は一番うまいと言っていた)や、やっと手に入れた土地をどう扱っていいのか分からない領民に、豆の撒き方を教えてやった話などを思い出していたのだから、同じようなものなのだろう。そしてそういう話の後には、決まって初めて俺とブラッドがキスをした時の話になる。それは決まりきったルーティーンみたいなものだった。
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    TRAININGお題:「花火」「熱帯夜」「一途」
    ムルたちが花火を楽しむ横で、賢者の未来について語ろうとするブラッドリーとそれを止めるネロのお話です。
    優しいあなた 夏の夜、魔法舎に大きな花火が上がった。俺はそれを偶然厨房の窓から見ていて、相変わらずよくやるものだと、寸胴鍋を洗う手を止めてため息をついた。食堂から歓声が聞こえたから、多分そこにあのきらきらと消えてゆく炎を作った者(きっとムルだ)と賢者や、素直な西と南の魔法使いたちがいるのだろう。
     俺はそんなことを考えて、汗を拭いながらまた洗い物に戻った。魔法をかければ一瞬の出来事なのだが、そうはしたくないのが料理人として出来てしまったルーティーンというものだ。東の国では人間として振る舞っていたから、その癖が抜けないのもある。
     しかし暑い。北の国とも、東の国とも違う中央の暑さは体力を奪い、俺は鍋を洗い終える頃には汗だくになっていた。賢者がいた世界では、これを熱帯夜というのだという。賢者がいた世界に四季があるのは中央の国と一緒だが、涼しい顔をしたあの人は、ニホンよりずっと楽ですよとどこか訳知り顔で俺に告げたのだった。——しかし暑い。賢者がいた世界ではこの暑さは程度が知れているのかもしれないが、北の国生まれの俺には酷だった。夕食どきに汲んできた井戸水もぬるくなっているし、これのどこが楽なんだろう。信じられない。
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