Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    時緒🍴自家通販実施中

    短い話を放り込んでおくところ。
    SSページメーカーでtwitterに投稿したものの文字版が多いです。
    無断転載禁止。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😻
    POIPOI 192

    探し物をする狡噛さんのお話。
    800文字チャレンジ76日目。

    #PSYCHO-PASS
    ##800文字チャレンジ

    探しもの(ラブレター) 狡噛の様子が昨日からおかしい。おかしいと一言で言ってしまうのが難しいくらいおかしい。そわそわして落ち着かず、俺を見る目もどこかいびつだ。けれど彼は秘密を作るのが上手かったから、俺が尋ねたところで教えてもらえるはずもなかった。と言うわけで、俺は彼と距離をとっていつものように暮らしているのだが、存外に早くその秘密を知ることになる。
     
     朝出勤すると、狡噛は自分のデスクを漁っていた。一体何を探しているのかと俺は彼に隠れ、様子を伺った。探すものなんて俺たちにあっただろうか? それとも、俺に隠れて探したいものなのだろうか? 例えば浮気の証拠だとか? そこまで考えて俺は頭を振り、馬鹿らしいと切り捨てた。狡噛は浮気をするような男じゃない。でも、だとしたら何を探しているのだろう。
     狡噛が引き出しから書類を取り出す。それはデスクの上で山になり、崩れそうになりながらどうにか持ちこたえる。俺は喉まで「手伝おうか」の一言が出そうになって、けれど俺よりも早く出勤した彼の意思を尊重したくてやめておいた。探し物を邪魔するのはマナーになっていない。大切なものならなおさらだ。
    「あれ、どうしたんですか? 狡噛さん。何か探し物ですか?」
     その時、人畜無害な顔をした須郷がやって来た。須郷は善意から狡噛を助けようとする。しかし、それも彼は断ってしまった。こんなふうに言って。「大したものじゃないんだ、ただないと困るのは確かだな」それって一体なんなんだ? 俺はますます頭をひねる。でも聞いているうちに、それは形を伴って俺の耳に入って来た。彼はこの時代で、あるアナログなものを探していたのだ。
    「手紙を探してるんだがどこかに挟んで忘れちまってな。書き直してもいいんだが、ああいうのって恥ずかしいだろう? 夜の勢いってさ」
     須郷は座ってそうですねぇ、と頷いている。そういえばそろそろ俺の誕生日だった。もしかして、狡噛はそれを? 俺は胸が苦しくなって、答えを知りたくなって、けれど何も出来ずに誕生日までの日にちをカウントした。まだ一週間以上ある。狡噛は無事手紙を見つけて俺にそれをくれるのだろうか? それとも恥ずかしいと言わしめた手紙を書き直してくれるのだろうか? どっちにしたっていい、俺は彼の可愛らしいところを見つけた気がして、喜ばずにはいられなくなったのだった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    時緒🍴自家通販実施中

    TRAININGお題:「昔話」「リラックス」「見惚れる」
    盗賊団の伝説を思い出すネロが、ブラッドリーとの初めてのキスを思い出すお話です。軽いキス描写があります。
    かつての瞳 ブラッドは酔うと時折、本当に時折昔話をする。
     普段はそんな様子など見せないくせに、高慢ちきな貴族さまから後妻を奪った話だとか(彼女はただ可哀想な女ではなく女傑だったようで、しばらく死の盗賊団の女神になり、北の国の芸術家のミューズになった)、これもやはり領民のことを考えない領主から土地を奪い、追いやった後等しく土地を分配したことなど、今でも死の盗賊団の伝説のうちでも語り草になっている話を、ブラッドは酒を飲みながらした。俺はそれを聞きながら、昔の話をするなんて老いている証拠かなんて思ったりして、けれど自分も同じように貴族から奪った後妻に作ってやった料理の話(彼女は貧しい村の出で、豆のスープが結局は一番うまいと言っていた)や、やっと手に入れた土地をどう扱っていいのか分からない領民に、豆の撒き方を教えてやった話などを思い出していたのだから、同じようなものなのだろう。そしてそういう話の後には、決まって初めて俺とブラッドがキスをした時の話になる。それは決まりきったルーティーンみたいなものだった。
    1852

    時緒🍴自家通販実施中

    TRAININGお題:「花火」「熱帯夜」「一途」
    ムルたちが花火を楽しむ横で、賢者の未来について語ろうとするブラッドリーとそれを止めるネロのお話です。
    優しいあなた 夏の夜、魔法舎に大きな花火が上がった。俺はそれを偶然厨房の窓から見ていて、相変わらずよくやるものだと、寸胴鍋を洗う手を止めてため息をついた。食堂から歓声が聞こえたから、多分そこにあのきらきらと消えてゆく炎を作った者(きっとムルだ)と賢者や、素直な西と南の魔法使いたちがいるのだろう。
     俺はそんなことを考えて、汗を拭いながらまた洗い物に戻った。魔法をかければ一瞬の出来事なのだが、そうはしたくないのが料理人として出来てしまったルーティーンというものだ。東の国では人間として振る舞っていたから、その癖が抜けないのもある。
     しかし暑い。北の国とも、東の国とも違う中央の暑さは体力を奪い、俺は鍋を洗い終える頃には汗だくになっていた。賢者がいた世界では、これを熱帯夜というのだという。賢者がいた世界に四季があるのは中央の国と一緒だが、涼しい顔をしたあの人は、ニホンよりずっと楽ですよとどこか訳知り顔で俺に告げたのだった。——しかし暑い。賢者がいた世界ではこの暑さは程度が知れているのかもしれないが、北の国生まれの俺には酷だった。夕食どきに汲んできた井戸水もぬるくなっているし、これのどこが楽なんだろう。信じられない。
    3531

    related works

    recommended works