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    短い話を放り込んでおくところ。
    SSページメーカーでtwitterに投稿したものの文字版が多いです。
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    POIPOI 192

    結婚式に着ていく服を見繕ってもらってそれからのお話。
    800文字チャレンジ86日目。

    #PSYCHO-PASS
    ##800文字チャレンジ

    ドレスアップ(キス) 海外調整局で繋がりがある職員が結婚した。ので、俺たち行動課はまとめて呼ばれることになったのだが、残念ながら、俺たちは祝祭の日に着る服を持っていなかった。以前はスーツで通していたが、それも格闘が増えてからは安っぽいものに変わったし、それではあまりにも二人に義理立てできない。というわけで我らが課長に見繕ってもらったのだが、それはそれはゴージャスなもので、ただ一度きりの結婚式のためにはもったいないほどだった。そう、例えば記念日にはこれを着て、それなりのレストランで祝うくらいしなくてはもったいないほどに。それくらい、ゴージャスな彼に俺はやられていた。
    「忘れていたけど、お前ってなかなか見栄えがするんだな」
     そう言うと、狡噛は笑ってコーヒーを飲んだ。スーツはもうクローゼットにしまってある。大切に、大切に。
    「お前は結構見た目を気にする男だったからな。そりゃあ見てくれで好きになってもらえるならなんでもやったさ。覚えてないのか? 公安局に入る前日にスーツを着てホテルに行ったの。お前はぽーっとなって……」
    「ああ、ああ分かったからいい! もういいから!」
     狡噛が言ったのは、公安局に入る前日に、訓練所を退所してしばらくしてお祝いに行ったホテルのことだ。執行官たちに馬鹿にされないようにするにはどうするかってテーマで服を着て、彼が身につけたスリーピースのスーツはとても美しかった。ちゃんと愛されて選ばれた服って感じだった。俺はただブランドもののスーツを着ただけで、着られただけで、あまり様になってはいなかったのだけれども。
    「お前はがりがりでさ、スーツに着られてたよな。それがこんなに育って」
     狡噛が俺の肩をさする。そりゃあ執行官になってから身体を鍛えたからそれなりにはなっただろう。それでも、過去の彼には勝てないだろうが。
    「なんだかいやらしいな」
    「お前がスーツに興奮するように、俺は肉体に興奮するんでね」
     狡噛が笑う。俺はもうどうしていいのか分からなくなって、彼の頭を叩いて無理やりキスをした。記念日にまたあのスーツが見たいと思ったのを見通されてる。もうキスで誤魔化すしかない、そう思って、俺はいつもよりしつこく彼の舌を吸ったのだった。
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    TRAININGお題:「昔話」「リラックス」「見惚れる」
    盗賊団の伝説を思い出すネロが、ブラッドリーとの初めてのキスを思い出すお話です。軽いキス描写があります。
    かつての瞳 ブラッドは酔うと時折、本当に時折昔話をする。
     普段はそんな様子など見せないくせに、高慢ちきな貴族さまから後妻を奪った話だとか(彼女はただ可哀想な女ではなく女傑だったようで、しばらく死の盗賊団の女神になり、北の国の芸術家のミューズになった)、これもやはり領民のことを考えない領主から土地を奪い、追いやった後等しく土地を分配したことなど、今でも死の盗賊団の伝説のうちでも語り草になっている話を、ブラッドは酒を飲みながらした。俺はそれを聞きながら、昔の話をするなんて老いている証拠かなんて思ったりして、けれど自分も同じように貴族から奪った後妻に作ってやった料理の話(彼女は貧しい村の出で、豆のスープが結局は一番うまいと言っていた)や、やっと手に入れた土地をどう扱っていいのか分からない領民に、豆の撒き方を教えてやった話などを思い出していたのだから、同じようなものなのだろう。そしてそういう話の後には、決まって初めて俺とブラッドがキスをした時の話になる。それは決まりきったルーティーンみたいなものだった。
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    TRAININGお題:「花火」「熱帯夜」「一途」
    ムルたちが花火を楽しむ横で、賢者の未来について語ろうとするブラッドリーとそれを止めるネロのお話です。
    優しいあなた 夏の夜、魔法舎に大きな花火が上がった。俺はそれを偶然厨房の窓から見ていて、相変わらずよくやるものだと、寸胴鍋を洗う手を止めてため息をついた。食堂から歓声が聞こえたから、多分そこにあのきらきらと消えてゆく炎を作った者(きっとムルだ)と賢者や、素直な西と南の魔法使いたちがいるのだろう。
     俺はそんなことを考えて、汗を拭いながらまた洗い物に戻った。魔法をかければ一瞬の出来事なのだが、そうはしたくないのが料理人として出来てしまったルーティーンというものだ。東の国では人間として振る舞っていたから、その癖が抜けないのもある。
     しかし暑い。北の国とも、東の国とも違う中央の暑さは体力を奪い、俺は鍋を洗い終える頃には汗だくになっていた。賢者がいた世界では、これを熱帯夜というのだという。賢者がいた世界に四季があるのは中央の国と一緒だが、涼しい顔をしたあの人は、ニホンよりずっと楽ですよとどこか訳知り顔で俺に告げたのだった。——しかし暑い。賢者がいた世界ではこの暑さは程度が知れているのかもしれないが、北の国生まれの俺には酷だった。夕食どきに汲んできた井戸水もぬるくなっているし、これのどこが楽なんだろう。信じられない。
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