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    短い話を放り込んでおくところ。
    SSページメーカーでtwitterに投稿したものの文字版が多いです。
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    POIPOI 192

    寝ずの番をする二人の話。
    800文字チャレンジ97日目。

    #PSYCHO-PASS
    ##800文字チャレンジ

    このまま夜明けまで(あなたと二人なら) 犯人と見られる人間がバーチャルの売春宿に入って数時間が過ぎた。俺とギノはパトカーをホロで隠してそれを伺っている。裏には二係がいる。今回は大規模な捜査で、失敗するわけにはいかなかった。だというのに、俺はギノとともに夜を過ごしていることを喜んでいた。彼が潜在犯とともに過ごすことを喜ぶかどうかは分からない。ただ恋人だった期間が長かった分、甘い雰囲気は流れた。また一緒にいたい。許されるなら一緒にいたい。でもその選択肢を捨てたのは俺だった。ギノは情が篤い男だから、潜在犯になっただけで俺を捨てはしない。彼が俺と距離をとっているのは、俺が佐々山を殺した犯人に、いもしない犯人に夢中になっているからだった。それに色相だってそんなに悪くはないんだ。もし矯正施設でプログラムを受ければ一般人に戻れるかもしれないくらいに。けれどそれを勧めるギノを拒否して、俺は彼とともに働いている。
    「こちら一係、動きはなし。扉も開かない」
    「こちら二係、同じく動きはなし。今日はバーチャルの風俗嬢と共寝かもね。どうする?」
    「このまま待つさ。気が緩んだところでアジトがわかるかもしれないしな」
     そんなやりとりをして、俺たちはまたピンク色のネオンが輝く風俗店を見た。バーチャルな、と言ったが、女の感触は本物とほとんど変わらない。より女らしさを求めて、こちらを選ぶユーザーがいるとも聞く。俺は本物じゃなきゃ嫌だけれど、ギノじゃなきゃ嫌だけれど、でも、ギノは気まぐれにしか抱かれてくれない。俺に褒美をやると仕事で功を挙げた時に服を脱ぐか、彼が性的に欲求不満になった時か、そのどちらかだった。昔はそうじゃなかった。ちょっと手が触れた瞬間に意識して、愛撫はコミニュケーションの延長だった。こんなふうに理由があってセックスをする仲じゃなかった。別にそれが不満なんじゃない。こうやって朝まで言葉も無しにいられるだけで、俺はそれだけでよかった。ギノは気づいていないかもしれないが、うつらうつらする時に俺の名前を呼ぶのだ。それだけで、俺は救われた気分になった。なぁ、ギノ。全てが終わったら、俺を連れてどこか遠いところに行こう。仕事を名目にして、どこか遠いところに行こう。そうして夜明け前まで、今度こそ語らっていよう。昔のように。俺はそう思って運転席のギノを見た。彼はじっと前を見つめ、決してそれをそらさなかった。
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    TRAININGお題:「昔話」「リラックス」「見惚れる」
    盗賊団の伝説を思い出すネロが、ブラッドリーとの初めてのキスを思い出すお話です。軽いキス描写があります。
    かつての瞳 ブラッドは酔うと時折、本当に時折昔話をする。
     普段はそんな様子など見せないくせに、高慢ちきな貴族さまから後妻を奪った話だとか(彼女はただ可哀想な女ではなく女傑だったようで、しばらく死の盗賊団の女神になり、北の国の芸術家のミューズになった)、これもやはり領民のことを考えない領主から土地を奪い、追いやった後等しく土地を分配したことなど、今でも死の盗賊団の伝説のうちでも語り草になっている話を、ブラッドは酒を飲みながらした。俺はそれを聞きながら、昔の話をするなんて老いている証拠かなんて思ったりして、けれど自分も同じように貴族から奪った後妻に作ってやった料理の話(彼女は貧しい村の出で、豆のスープが結局は一番うまいと言っていた)や、やっと手に入れた土地をどう扱っていいのか分からない領民に、豆の撒き方を教えてやった話などを思い出していたのだから、同じようなものなのだろう。そしてそういう話の後には、決まって初めて俺とブラッドがキスをした時の話になる。それは決まりきったルーティーンみたいなものだった。
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    TRAININGお題:「花火」「熱帯夜」「一途」
    ムルたちが花火を楽しむ横で、賢者の未来について語ろうとするブラッドリーとそれを止めるネロのお話です。
    優しいあなた 夏の夜、魔法舎に大きな花火が上がった。俺はそれを偶然厨房の窓から見ていて、相変わらずよくやるものだと、寸胴鍋を洗う手を止めてため息をついた。食堂から歓声が聞こえたから、多分そこにあのきらきらと消えてゆく炎を作った者(きっとムルだ)と賢者や、素直な西と南の魔法使いたちがいるのだろう。
     俺はそんなことを考えて、汗を拭いながらまた洗い物に戻った。魔法をかければ一瞬の出来事なのだが、そうはしたくないのが料理人として出来てしまったルーティーンというものだ。東の国では人間として振る舞っていたから、その癖が抜けないのもある。
     しかし暑い。北の国とも、東の国とも違う中央の暑さは体力を奪い、俺は鍋を洗い終える頃には汗だくになっていた。賢者がいた世界では、これを熱帯夜というのだという。賢者がいた世界に四季があるのは中央の国と一緒だが、涼しい顔をしたあの人は、ニホンよりずっと楽ですよとどこか訳知り顔で俺に告げたのだった。——しかし暑い。賢者がいた世界ではこの暑さは程度が知れているのかもしれないが、北の国生まれの俺には酷だった。夕食どきに汲んできた井戸水もぬるくなっているし、これのどこが楽なんだろう。信じられない。
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    TRAININGお母さんが亡くなった時、海に行った宜野座さんの話。思い出の全ては狡噛に支配されていて消えられない苦しさ。執監時代。
    800文字チャレンジ3日目。
    波打ち際(サマータイム) 恋人と行きたいデートスポットは? もちろん海です、夏の海はロマンチックだもの。俺はそんな若い女の感想を耳にしながら、やがて海を模したプールの宣伝に変わってゆくコマーシャルを一つ無人タクシーの中で見た。途中でナイアガラの滝が出てきた時は笑ってしまったが(あれは川だ)高濃度汚染水で満たされていると分かっていても、彼女らにとっては海は憧れの場所なのだろう。
     狡噛が読んでいた本にも海を賛美するものは多かった。詮索はしなかったけれど、事実彼は泳げもしない海を眺めに行っているようだった。誰かに影響されやすい、可愛らしい恋人。
     俺は今、母の遺体を引き取りに沖縄に来ていた。そして何かに導かれるように、全てを終わらせると海に行った。多分、学生時代に俺の母の出身が沖縄と聞いた狡噛が、きっと色なんて全然違うんだろうなななんて、そんな馬鹿げたことを言ったからだった。その頃は俺は監視官で狡噛は執行官だったから、俺は意固地になって言わなかったが、彼の言葉はいつだって俺の中にあった。
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    TRAINING怪我をした狡噛さんとそれ以来悪夢を見るようになった宜野座さんの話。
    一人で乗り越えられるけど一緒にいたいな〜という感じのお話です。
    800文字チャレンジ6日目。
    昨日見た夢(花の銃弾) 夢見が悪くなったのは、狡噛が俺を庇って怪我をした日からだった。怪我自体は大したものではなかった。ただの銃弾のかすり傷だ。だがその場所が問題だった。こめかみ、もう数ミリずれていたら、失明どころか命さえ危うかったところ。狡噛はこんなのは紛争地帯じゃ日常茶飯事だと笑っていた。しかしそんな場所を知らない俺にとっては、やはり恐怖でしかなかった。
     夢の内容は色々だ。狡噛が死んでしまうものが多いが、彼がそもそも俺の人生に存在しなかったものもあった。その世界では俺は無事に監視官を務め上げて厚生省の官僚となっていた。ただ父と和解することは最後までなく、彼は現場で死んでいたが。夢の話は狡噛には話さなかった。ただでさえ縁起が悪いし、それほどまでに弱っていると見られたくなかった。もちろん花城にも話していなかったのだが、彼女はどうしてか目の下にクマを作った俺を呼び出すと、よく眠れるサプリメントよと、私も使っているのと錠剤を渡してくれた。俺は眠るのが怖いんだ、と言った。花城はそれを聞いてこれは重症だといった顔をしたが、それ以上追及しなかった。狡噛と話し合え、ということなのだろう。
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    TRAINING美佳ちゃんが煙草の香りに思うこと。
    宜野座さんと狡噛さんはちょろっと出演で気持ち常霜です。
    800文字チャレンジ18日目。
    見かえしてやるんだわ(煙草の香り) 私が公安局に勤め出した時、歳は二十にもならなかった。桜霜学園の教育方針に半ばか逆らうようにして公安局入りした私を守ってくれる人などは誰もいなかった。伝説の事件を解決した先輩とはソリが合わず、かといって移動するわけにもいかず、私は自分が埋もれてゆく気がした。でもそれよりも私を揺さぶったのは、一人の男の存在だった。
     彼の名前は宜野座伸元という。以前は私と同じ監視官をして、先輩が解決した事件で執行官堕ちした人間。ずいぶん優秀だったのよ、とは二係の青柳監視官の言だが、彼女は宜野座さんと同期というから信用はならない。ただ、多くの猟犬を一人でコントロールして、一人も死なせなかったというのは、私の興味を引いた。私はその頃の宜野座伸元の日誌を読むことにした。別に先輩に言う話でもないし、宜野座さんに許可を取るものでもないから、無断で読んだ。そこにはいつもより厳しい、私の前でいつも笑っている彼とは違う、苛烈な男の人生が描かれていた。
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